役員の就任承諾書の書き方と登記での使い方
就任承諾書、取締役就任承諾書、監査役就任承諾書、代表取締役就任承諾書、役員承諾書 とも呼ばれます。
役員就任承諾書は、選任された人が役員就任を承諾した事実を示す私文書です。作成者は就任する本人で、成年被後見人が取締役や監査役に就くときは、成年後見人が本人の同意(後見監督人がいればその同意も)を得て代わって承諾します。就任による変更登記では、承諾を証する書面として添付されます(商業登記法54条1項)。
| 書面の要否 | 承諾自体に書面要件はありません |
|---|---|
| 登記添付 | 承諾を証する書面として使います |
| 変更期限 | 変更後2週間以内です |
| 過料 | 登記を怠ると取締役等に100万円以下の過料です |
| 住所 | 本人確認証明書と突合します |
最終確認日:
どんなときに必要か
取締役、監査役、代表取締役などを選任し、就任による変更登記を申請するときに使います。設立時役員の就任、任期満了後の重任、増員、辞任や死亡による欠員補充でも使います。会計参与や会計監査人では、添付書面の根拠が別に置かれます。
書面にする必要はあるか
就任承諾そのものに、法律上の書面要件はありません。役員と会社の関係には委任の規定が適用され、委任は委託と承諾で効力を生じます(民法643条)。登記では、就任を承諾したことを証する書面を添付します。
必ず入れる事項
会社の商号
どの株式会社からの役員就任を承諾したかを特定します。登記申請書の商号と表記をそろえます。
就任する役職名
登記される資格と、承諾した資格を対応させます。取締役、監査役、代表取締役、特別取締役を分けて書きます(商業登記法54条1項)。
承諾の意思表示
委任は、委託と承諾で効力を生じます(民法643条)。選任決議は会社側の委託を示すだけなので、本人がその役職への就任を承諾した文を入れます。
選任日または就任日
就任の効力が生じた日から2週間以内に変更登記をするため、期間管理の起点になります(会社法915条1項)。議事録の選任日と承諾の日の前後関係も見ます。
承諾者の氏名
登記される氏名と承諾書の氏名を合わせます。通称や略称だけでは、本人確認証明書との突合ができません。
承諾者の住所
本人確認証明書は、就任承諾書の氏名と住所に一致するものを添付します。住所がないと突合の対象が欠けます(商業登記規則61条7項)。
作成日
承諾した日を示します。申請書や添付書面の記載が、他の添付書面や登記簿と合わないことは却下事由です(商業登記法24条8号)。補正できる不備は、期間内に補正すれば却下されません。
署名または記名押印
本人作成の外形を示します。就任承諾書に押した印鑑の証明書は、取締役会を置かない会社では新任の取締役、設置会社では新任の代表取締役について添付します(商業登記規則61条4項・5項)。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
選任決議だけで本人の承諾書を省くと、添付書面の不足になります。必要な書面の不添付は却下事由です(商業登記法24条7号)。
設立登記に、既存会社の変更登記の条文だけを当てると、添付書面の範囲を読み違えます。設立時取締役などは別の根拠です(商業登記法47条2項10号)。
重任なら書面が何も要らないと扱うと、就任承諾を証する書面が欠けます。再任でも新たな任期の承諾を書面で示します(商業登記法54条1項)。
新任か再任かを見ないと、証明書を過不足なく添付できません。再任の取締役は就任承諾書の印鑑証明書が要らず、再任の取締役・監査役・執行役は本人確認証明書も要りません(商業登記規則61条4項・7項)。代表取締役の選定議事録等の印鑑証明書は、変更前の代表取締役(取締役を兼ねる者)の届出印を押した場合を除き、再任でも要ります。
就任承諾書から住所を落とすと、本人確認証明書との突合対象が欠けます。住民票の写しなどを出しても、承諾書に住所がなければ本人確認証明書として働きません。
議事録、登記申請書、就任承諾書で日付、氏名、役職がずれると、記載の不一致として却下事由になります(商業登記法24条8号)。補正できる不備なら、登記官が定めた期間内に補正すれば却下されません。
承諾書がそろわず登記を放置すると、登記懈怠になります。登記を怠ったときは100万円以下の過料の対象です。ただし刑を科すべき行為は除かれます(会社法976条)。
作成の流れ
- 1
選任を読む
株主総会議事録や取締役会議事録で、誰が、どの役職に、いつ選任されたかを見ます。代表取締役の住所など、登記事項と承諾書の対応も見ます(会社法911条3項13号・14号)。
- 2
添付先を分ける
設立登記か、既存会社の変更登記かを分けます。設立時会計参与や設立時会計監査人、既存会社の会計参与や会計監査人では、根拠条文が分かれます。
- 3
承諾文を作る
商号、役職名、選任日または就任日、承諾者の住所氏名、作成日を入れます。本人がその役職への就任を承諾する文を置きます。
- 4
証明書を分ける
取締役会設置会社かどうか、新任か再任かで、印鑑証明書と本人確認証明書の扱いを分けます。印鑑証明書を出す人には、本人確認証明書の例外があります(商業登記規則61条7項)。
- 5
整合を点検する
2週間の登記期間から逆算します(会社法915条1項)。登記申請書、議事録、定款、株主リストと、日付、氏名、住所、役職の表記を合わせます。
この書式だけでは足りない場面
商業登記の提出先は、本店所在地を管轄する法務局です。登記手続の案内も法務局が扱います。商業・法人登記の申請の代理を他人の依頼を受けて業として行えるのは、司法書士・司法書士法人と弁護士・弁護士法人に限られます。
よくある質問
- 役員就任承諾書は作らないといけませんか。
- 就任承諾自体は口頭でも成立します。登記では承諾を証する書面を添付します。
- 株主総会議事録だけで足りますか。
- 選任の記載だけでは承諾を示しません。席上で承諾した旨を記載した議事録を承諾書として援用する実務があり、押印と住所もそろえます。
- 重任でも就任承諾書は使いますか。
- 使います。再任でも、新たな任期について本人の承諾を示します。
- 住所は省略できますか。
- 省略すると、本人確認証明書との突合対象が欠けます。氏名と住所を対応させます。
- オンライン申請でも添付しますか。
- 添付情報として、就任を承諾したことを証する情報を付けます。
出典
最終確認日: 2026-09-26
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