株主総会委任状
株主総会 委任状、議決権行使 委任状、議決権代理行使 委任状、株主総会 代理人 委任状、株主総会委任状 書き方 とも呼ばれます。
株主総会委任状は、株主総会に出席できない株主が、代わりに出席して議決権を行使してもらう代理人を選ぶための書面です。会社法310条1項は代理人による議決権行使を認めたうえで、株主または代理人が「代理権を証明する書面」を会社に提出しなければならないと定めています。出席議決権数の集計に直結するため、記載の不備は決議そのものに影響しうる書面です。
最終確認日:
どんなときに必要か
定時・臨時の株主総会に、遠方の株主や高齢の株主など本人が出席できないときに使います。会社法309条1項の定足数(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主の出席)は「定款に別段の定めがある場合を除き」とされ、定款で排除・軽減された例もあるため、まず定款を確認します。書面投票(298条1項3号)や電磁的方法による議決権行使(同項4号)を採用していない会社では、欠席株主の議決権を反映する手段は代理人による行使が中心です。
書面にする必要はあるか
法定の書面が必要な類型です。会社法310条1項は「株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない」と定めています。ただし「委任状」という名称や様式が法定されているわけではなく、求められているのは代理権を証明できる書面の提出です。なお同条3項により、政令で定めるところにより会社の承諾を得て電磁的方法で提供したときは、書面を提出したものとみなされます。
必ず入れる事項
委任の対象となる株主総会の特定
会社法310条2項は代理権の授与を株主総会ごとにしなければならないと定めています。どの総会についての委任かを特定していないと、この要件を満たさないと判断される可能性があります。
委任者(株主)の氏名・名称と議決権数
会社は委任者を株主名簿と照合し、その議決権数を出席議決権数に算入します。委任者を特定できる氏名・名称(法人株主の場合は名称)の記載がないと、誰の授権かを書面から確認できず、受付での照合に時間がかかります。議決権数の記載は会社法が求めるものではありませんが、招集通知や株主名簿の表示に合わせて書くと確認が早くなります。
受任者(代理人)の氏名・名称
会社法310条1項の書面は、誰に代理権を与えたかを証明するためのものです。代理人が特定できない書面は、その証明として不十分と判断される可能性があります。この書面は同条6項により株主総会の日から3か月間本店に備え置かれ、7項により株主の閲覧・謄写の対象になります。
委任する議案と賛否の指示の有無
議案ごとに賛否を指示するのか、代理人の判断に委ねるのかで、代理人が行使できる範囲が変わります。会社法298条1項2号は、株主総会の目的である事項があるときは招集に際してその事項を定めるとしており、議案の表現は招集通知から確認できます。
委任状を作成した年月日
会社法310条2項の「株主総会ごと」の授与であることを外形から判断する手がかりになります。会社法299条1項は招集通知を株主総会の日の二週間前(公開会社でない株式会社では原則一週間前)までに発するとしており、日付があれば通知後の授権かも確認できます。
委任者の署名または記名押印
誰の意思で授権したかを示す部分です。会社が会社法施行規則63条5号に基づいて代理権を証明する方法を定めている場合は、その方法に合わせる必要があります。同号は、その定め(定款に当該事項についての定めがある場合を除く)を招集の決定事項としています。
会社が定めた代理人の資格・人数への適合
会社法310条5項は「株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる」と定めています。会社法自体は代理人の資格を限定していませんが、定款で資格を株主に限る例があるため、代理人を決める前に定款と招集通知の確認が要ります。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
「今後開催されるすべての株主総会について委任する」といった包括委任・継続委任型。会社法310条2項は「前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない」と定めており、この規定に沿わない授権は代理権の証明として認められない可能性があります。総会ごとに作り直すのが条文に沿った運用です。
議決権行使書面の様式を委任状として流用する型。会社法311条1項の議決権行使書面は、会社が同法298条1項3号の書面投票を採用したときに株主本人が賛否を書いて提出する制度で、代理人に出席してもらう310条の委任状とは別物です。混同すると、代理権を証明する書面として扱われないおそれがあります。
受任者欄を白紙のまま提出させる型。会社法310条1項は代理権を証明する書面の提出を求めており、誰に授権したのかが書面から確認できないと、その証明として不十分と判断される可能性があります。会社側で代理人名を後から補充する運用は、授権の範囲をめぐる争いの原因になります。
定款の代理人資格の定めを確認しないまま雛形を使う型。最高裁第二小法廷判決 昭和43年11月1日(民集22巻12号2402頁)は、議決権を行使する代理人の資格を当該会社の株主に限る旨の定款の定めについて、資格を制限すべき合理的な理由がある場合に相当と認められる程度の制限を加えるものとして許されるとしました。どこまで認められるかは事案により異なります。
登記申請の委任状と取り違える型。商業登記法18条は「代理人によつて登記を申請するには、申請書(前条第三項に規定する電磁的記録を含む。以下同じ。)にその権限を証する書面を添付しなければならない」と定めており、これは法務局への登記申請を代理してもらうための書面です。株主総会の議決権行使の委任状とは、宛先も目的も異なります。
総会が終わったら委任状を返却・破棄してしまう運用。会社法310条6項は株主総会の日から3か月間、代理権を証明する書面等を本店に備え置くことを求め、7項は株主が理由を明らかにして閲覧・謄写を請求できるとしています。回収・保管しない運用では、この備置義務を果たせなくなります。
作成の流れ
- 1
招集通知と定款で代理のルールを確認する
まず会社から届いた招集通知を確認します。招集通知が書面又は電磁的方法によるものである場合、会社法299条4項により同法298条1項各号の事項が記載されます。会社法施行規則63条5号は、代理人による議決権の行使について代理権(代理人の資格を含む)を証明する方法や代理人の数その他の事項を定めたとき(定款に当該事項についての定めがある場合を除く)は、それを招集の決定事項とする旨を定めています。あわせて、定款に代理人の資格に関する定めがないかを確認し、招集通知から読み取れないときは会社に確認します。
- 2
対象の株主総会と議案を特定する
会社法310条2項は「前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない」と定めています。そのため、開催日や開催場所など、どの株主総会についての委任かがわかる形で特定します。議案は招集通知に記載された表現に合わせて書き写すと、当日の照合で食い違いが出にくくなります。
- 3
代理人と賛否の指示範囲を決める
誰に委任するかを決め、議案ごとに賛否を指示するのか、代理人の判断に委ねるのかを決めます。会社法310条5項は「株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる」と定めており、会社側の制限がないかも確認します。定款に代理人の資格の定めがある会社では、その定めに沿う人を選ぶ必要があります。
- 4
会社が指定する期限・方法で提出する
会社法310条1項が求めているのは、代理権を証明する書面を会社に提出することです。電磁的方法で提供する場合、同条3項は「政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て」行うこととし、会社法施行令1条1項6号は、提供しようとする者があらかじめ相手方に電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならないと定めています。提出先・締切・受付方法は招集通知の記載に従い、不明なときは事前に会社へ確認します。
- 5
総会後の備置きと保管に備える
会社法310条6項は、会社に対し株主総会の日から3か月間、代理権を証明する書面等を本店に備え置くことを求めています。7項では株主が理由を明らかにして閲覧・謄写を請求でき、8項に会社が拒める場合が限定列挙されています。委任状は総会後に回収して保管する前提で運用します。なお議事録は同法318条2項により10年間本店に備え置きます。
専門家に相談したほうがよい場面
株主間で経営権が争われている、委任状の有効性や定足数の充足が総会で争点になりそう、会社に委任状の受付を断られた——こうした場面は、総会が終わってからでは打てる手が急に狭まります。会社法831条1項は、招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反するときなどについて、決議の日から三箇月以内に決議取消しの訴えを提起できると定めており、期間の制限があります。委任状に署名・提出する前に、遅くとも決議の日から三箇月が過ぎる前に弁護士へご相談ください。決議に基づく役員変更等の登記手続は司法書士が扱います。
よくある質問
- 委任状と議決権行使書面はどう違いますか。
- 委任状は会社法310条に基づき代理人に議決権行使を任せる書面で、代理人が総会に出席します。議決権行使書面は同法311条1項の「書面による議決権の行使」に使うもので、株主本人が賛否を記載して提出し、会場に出向きません。ただし同条2項は「前項の規定により書面によって行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入する」と定めており、定足数の計算に算入されます。書面投票の採用は同法298条1項3号により招集の際に決めます。298条2項は、議決権を行使できる株主の数が千人以上のときは書面投票を定めなければならないとし、ただし金融商品取引所に上場されている株式を発行している会社であって法務省令で定めるものはこの限りでない、としています。
- 一枚の委任状で今後の株主総会をまとめて委任できますか。
- 会社法310条2項は「前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない」と定めています。したがって、複数の総会をまとめた包括的な授権や、期間を区切らない継続的な委任は、この規定に沿わないと判断される可能性があります。総会ごとに作り直す運用が条文に沿った形です。
- 代理人は株主でなければならないのですか。
- 会社法自体は代理人の資格を限定していませんが、同法310条5項は会社が出席できる代理人の数を制限できると定めており、実務では定款で代理人の資格を株主に限る例があります。最高裁第二小法廷判決 昭和43年11月1日(民集22巻12号2402頁)は、そうした定款の定めについて、資格を制限すべき合理的な理由がある場合に相当と認められる程度の制限を加えるものとして許されるとしました。個別の場面でどこまで認められるかは事案により異なるため、まず自社の定款を確認してください。
- 委任状をメールやPDFで送ってもよいですか。
- 会社法310条3項は、代理権を証明する書面の提出に代えて「政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる」と定め、この場合は書面を提出したものとみなすとしています。会社の承諾が前提なので、受け付けてもらえる方法を先に確認する必要があります。なお同条4項は、株主が同法299条3項の承諾(招集通知を電磁的方法で受ける承諾)をした者である場合、会社は正当な理由がなければ3項の承諾を拒んではならないと定めています。
出典
- e-Gov法令検索 会社法(平成17年法律第86号)第298条・第299条・第309条・第310条・第311条・第318条・第831条
- e-Gov法令検索 会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第63条第5号
- e-Gov法令検索 会社法施行令(平成17年政令第364号)第1条第1項第6号(会社法310条3項の電磁的方法による提供についての承諾)
- e-Gov法令検索 商業登記法(昭和38年法律第125号)第18条(登記申請の代理人の権限を証する書面)
- 裁判所 裁判例検索
最終確認日: 2026-08-07
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