株式譲渡契約書の記載事項と名義書換までの流れ
株式売買契約書、株式譲渡合意書、株式譲渡証書、株式売渡契約書 とも呼ばれます。
株式譲渡契約書は、株主が株式を移す条件を残す私文書です。譲渡人と譲受人が、株式数、価格、譲渡日などを書きます。株券発行会社では、自己株式の処分による譲渡を除き、株券を交付しなければ譲渡の効力を生じません(会社法128条1項)。
| 書面の要否 | 法定の書面要件はありません |
|---|---|
| 株券発行 | 株券交付が効力要件です |
| 名簿効力 | 株主名簿が対抗要件(株券発行会社は会社に対してのみ) |
| 譲渡制限 | 会社の承認決定が必要です |
| 名義書換 | 取得者と名簿上の株主の共同請求が原則 |
最終確認日:
どんなときに必要か
株式の売買、贈与、創業者間の持分整理、役員や親族への譲渡で使います。M&A前の株主整理や、相続で分散した株式の集約でも使います。譲渡制限株式では、会社へ承認を請求する前提として相手方と条件を固めます。
書面にする必要はあるか
法律上、株式譲渡契約書の作成は効力要件ではありません。株式譲渡は契約書がなくても成立し得ます。別に、株券発行会社では株券交付、対抗関係では株主名簿への記載または記録が問題になります(会社法128条1項・130条1項)。
必ず入れる事項
譲渡人と譲受人
氏名または名称と住所を書きます。株式取得者の氏名または名称と住所は、株主名簿の記載事項です(会社法121条1号)。
発行会社と株式
発行会社名、株式の種類、株数を特定します。種類株式発行会社では、種類ごとの数も名簿記載の基礎になります(会社法121条2号)。
譲渡日
株式を取得した日は、株主名簿の記載事項です(会社法121条3号)。譲渡日が不明だと、名簿に入れる取得日が決まりません。
価格と支払方法
個人間で時価より著しく低い価額で譲渡すると、差額は贈与とみなされます(相続税法7条)。資力を喪失して弁済が困難な人へ扶養義務者が弁済のため譲る場合は、困難な部分の金額が除かれます。
株券交付の扱い
自己株式の処分を除き、株券を交付しなければ譲渡の効力を生じません。株券発行前の譲渡は、株券発行会社に対して効力を生じません(会社法128条1項・2項)。
譲渡制限の承認
譲渡制限株式では、株主が会社へ承認の決定を請求できます。決定機関は株主総会で、取締役会設置会社では取締役会です。ただし定款に別段の定めがある場合を除きます(会社法136条・139条1項)。
名義書換の協力
株式取得者は会社へ名義書換を請求できます。原則は、名簿上の株主又はその一般承継人との共同請求です(会社法133条)。株券発行会社では、株券を提示すれば取得者が単独で請求できます。
担保権と二重譲渡
譲渡人が、質権設定や二重譲渡がないことを述べる条項です。二重譲渡では、株券不発行会社は先に名簿へ記載された側、株券発行会社は株券の交付を受けた側が優先すると解されています。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
契約書の署名だけで会社から株主として扱われる、と読む書き方です。株主名簿への記載または記録がなければ、株式会社その他の第三者に対抗できません(会社法130条1項)。
株券発行会社で、名義書換だけで第三者に対抗できるとする書き方です。株券発行会社では、株主名簿の記載で対抗できる相手は会社に限られます(会社法130条2項)。
株券が印刷されていないため交付不要と扱う進め方です。株券発行会社では、自己株式の処分による譲渡を除き、株券交付が譲渡の効力要件です(会社法128条1項)。
譲渡制限株式で、承認前に通常の名義書換を請求する進め方です。会社の承認を受けた場合、指定買取人である場合、相続その他の一般承継の場合を除き、名義書換を請求できません(会社法134条)。
承認機関を一律に取締役会と書く扱いです。取締役会を置かない会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会が決めます(会社法139条1項)。
株式譲渡契約書だけで登記添付書面が足りると扱う進め方です。株主は登記事項でなく、株式の譲渡そのものは登記しません。株主総会決議を要する登記では、株主リストが添付対象です(商業登記規則61条3項)。
法人への譲渡で、価格を時価と無関係に決める進め方です。個人が法人へ時価の2分の1に満たない価額で譲渡すると、譲渡所得の計算上、時価で譲渡したものとみなされます(所得税法59条1項2号)。
作成の流れ
- 1
定款を見る
定款で、株券発行の定め、譲渡制限、承認機関を見ます。株主名簿では、現在の株主と株式数を見ます。株券発行会社か、譲渡制限株式かで、この後の手順が分かれます。
- 2
承認を請求する
譲渡制限株式では、株主が譲渡の相手方を示して会社へ承認の決定を請求します。会社は決定内容を通知します(会社法136条・139条2項)。
- 3
条件を書く
譲渡人、譲受人、発行会社、株式の種類と数、価格、支払時期、譲渡日を書きます。表明保証、株券交付、名義書換への協力も分けて書きます。
- 4
交付順を決める
株券発行会社では、代金決済と株券交付の順序を決めます。株券発行前の譲渡は、株券発行会社に対して効力を生じません(会社法128条2項)。
- 5
名義を換える
契約後、株式取得者が会社へ名義書換を請求します。法務省令で定める場合を除き、名簿上の株主または一般承継人と共同で請求します(会社法133条1項・133条2項)。
- 6
登記と照合する
役員変更など株主総会決議を要する登記では、株主リストと株主名簿を照合します。上位株主や議決権割合の記載が、譲渡後の状態と合うかを見ます(商業登記規則61条3項)。
この書式だけでは足りない場面
登記の窓口は法務局です。商業・法人登記の申請の代理を他人の依頼を受けて業として行えるのは、司法書士・司法書士法人と弁護士・弁護士法人に限られます。
よくある質問
- 契約書を交わせば、その日から株主ですか。
- 会社に株主として扱われるには、株主名簿の記載又は記録が要ります。株券発行会社では株券の交付も要ります(会社法128条1項・130条1項)。
- 株券が印刷されていない株券発行会社ではどうしますか。
- 株券発行前の譲渡は、会社に対して効力を生じません(会社法128条2項)。会社に株券の発行を求めるか、定款で株券発行の定めを廃止してから譲渡します。
- 会社から承認の返事が来ません。
- 請求から2週間(定款で短縮可)以内に通知がなければ承認とみなされます。会社と請求者の合意で別段の定めをした場合を除きます(会社法145条)。
- 株主名簿を書き換えれば第三者にも対抗できますか。
- 株券発行会社でない会社なら対抗できます。株券発行会社では、株券が未印刷でも名簿で対抗できる相手は会社に限られます(会社法130条2項)。
出典
- e-Gov法令検索・会社法
- e-Gov法令検索・商業登記規則
- e-Gov法令検索・司法書士法
- 法務省・「株主リスト」が登記の添付書面となりました
- 法務局・商業・法人登記の申請書様式
- e-Gov法令検索・相続税法
- e-Gov法令検索・所得税法
- e-Gov法令検索・会社法施行規則
- e-Gov法令検索・所得税法施行令
最終確認日: 2026-09-26
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