取締役会議事録

取締役会議事録書面、役員会議事録、取締役会決議議事録、取締役会書面決議議事録、取締役会のみなし決議議事録 とも呼ばれます。

取締役会で審議・決議・報告した内容を会社の正式記録として残す文書です。会社法369条3項は、取締役会の議事について法務省令で定めるところにより議事録を作成し、書面の場合は出席した取締役及び監査役が署名または記名押印することを義務付けています。具体的な記載事項は会社法施行規則101条3項が定め、会社法371条1項により取締役会の日から10年間、本店に備え置きます。登記の添付書類になるほか、後日の責任追及の場面で各取締役の賛否を示す中心的な証拠になります。

最終確認日:

どんなときに必要か

取締役会設置会社が取締役会を開催したときに作成します。会社法362条2項は業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職を取締役会の職務とし、同条4項は重要な財産の処分及び譲受けや多額の借財などの決定を取締役に委任できないとしています。実際に開催した場合だけでなく、会社法370条のみなし決議(書面決議)や会社法372条1項により報告を省略した場合にも、会社法施行規則101条4項所定の事項を内容とする議事録を作成します。

書面にする必要はあるか

法定の作成義務があります。会社法369条3項は「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」と定め、同条4項は電磁的記録で作成した場合に署名または記名押印に代わる措置を求めています。会社法施行規則101条2項も「取締役会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない」としており、作らない・様式を欠くという選択肢はありません。

必ず入れる事項

  • 開催日時・場所と、会場外から出席した者の出席方法

    会社法施行規則101条3項1号は、開催された日時及び場所に加え、その場所に存しない取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人・株主が出席した場合の出席方法を記載事項としています。ウェブ会議等の方法を書き落とすと、誰がどの形で出席したのかを後から確認できません。

  • 招集の経緯(招集権者・通知・手続省略の同意)

    会社法366条1項により取締役会は各取締役が招集し(定款・取締役会で招集権者を定めたときはその取締役)、会社法368条1項は取締役会の日の1週間前まで(定款で短縮可)に各取締役(監査役設置会社では各取締役及び各監査役)への通知を求めます。監査役の請求を受けた招集など会社法施行規則101条3項3号に掲げる場合は、その旨も記載事項です。

  • 出席者と定足数の充足

    会社法369条1項は、議決に加わることができる取締役の過半数(定款で上回る割合を定めた場合はその割合以上)の出席を決議の前提とします。出席取締役・監査役を書かないと定足数の充足を議事録上で示せません。会社法施行規則101条3項7号は出席した執行役・会計参与・会計監査人・株主の氏名または名称の記載も求めています。

  • 議事の経過の要領と結果

    会社法施行規則101条3項4号は「取締役会の議事の経過の要領及びその結果」を記載事項としています。提案の内容、説明、質疑、採決方法、可決・否決を議案ごとに対応させないと、どの決議がどの内容で成立したのかを登記所や取引の相手方に示せません。

  • 特別利害関係取締役の氏名と議決不参加の扱い

    会社法369条2項により特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができず、会社法施行規則101条3項5号は「決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名」を記載事項とします。欠くと決議の成立要件を検証できません。

  • 監査役等の意見・発言の概要と、議長の氏名

    会社法施行規則101条3項6号は、会社法383条1項の監査役の意見など所定の規定により取締役会で述べられた意見・発言の内容の概要を、同項8号は議長が存するときの議長の氏名を記載事項としています。監査役の意見が記録に残らないと、監督が尽くされた経過を跡付けられません。

  • 決議要件の充足と各議案の賛否

    会社法369条1項は、出席した議決可能な取締役の過半数(定款で上回る割合を定めた場合はその割合以上)をもって決議すると定めます。議案ごとの賛否や異議の有無を書かないと、同条5項の賛成推定との関係で各取締役の立場が確定しません。

  • 出席取締役・監査役の署名または記名押印(電磁的記録では代替措置)

    会社法369条3項は書面議事録への出席した取締役及び監査役の署名または記名押印を義務付け、同条4項は電磁的記録の場合に法務省令で定める署名等に代わる措置を求めます。欠けると法定の様式を満たさず、登記の添付書類として通用しないおそれがあります。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 出席した監査役の署名・記名押印欄がない雛形です。会社法369条3項は、議事録が書面をもって作成されているときは「出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」と定めています。押印欄が取締役分しかない書式をそのまま使うと、監査役設置会社では法定の要件を欠いた議事録になります。

  • 特別の利害関係がある取締役を、定足数や賛成数にそのまま算入する記載です。会社法369条2項は「前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない」と定めています(前項は同条1項の取締役会の決議を指します)。会社法施行規則101条3項5号によりその取締役の氏名も記載事項であり、氏名を落とした議事録では決議の成立を検証できません。

  • 重要事項を包括的に担当取締役へ一任した旨だけを記す形です。会社法362条4項は「取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない」と定め、重要な財産の処分及び譲受けや多額の借財などを列挙しています。一任決議の体裁をとっても、これらの事項は取締役会自身が決定した経過と結果を記録する必要があります。

  • 口頭で反対したから議事録に書かなくてもよい、という運用です。会社法369条5項は「取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する」と定めています(第三項は同条3項の議事録です)。反対の事実を議事録に残さなければ、賛成の推定を覆すための証拠を自ら失うことになります。

  • 定款の定めがないまま「取締役全員の書面同意により可決とみなす」とする書面決議の雛形です。会社法370条は、議決に加わることができる取締役の全員が書面または電磁的記録により同意したときに決議があったものと「みなす旨を定款で定めることができる」という構造で、定款の定めが前提です。監査役設置会社では、監査役が異議を述べたときは成立しない括弧書きも落とせません。

  • 代表取締役を選定した取締役会議事録は認印で足りる、と一律に説明する雛形です。商業登記規則61条6項は、代表取締役の就任による変更の登記の申請書について、取締役会の決議による選定の場合は「出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑」につき市町村長の作成した証明書の添付を求めています。ただし書により、その印鑑が変更前の代表取締役(取締役を兼ねる者に限る)の登記所届出印と同一であるときは添付を要しません。

作成の流れ

  1. 1

    権限と決議要件を確認する

    会社法362条2項・4項と定款・取締役会規程に照らし、議案が取締役会の決議事項かをまず確認します。重要な財産の処分及び譲受けや多額の借財のように取締役に委任できない事項は、取締役会自身の決議として記録します。あわせて会社法369条1項の定足数(議決に加わることができる取締役の過半数の出席)と可決要件(出席取締役の過半数。いずれも定款で加重可能)を、特別利害関係取締役を除いた数で計算します。

  2. 2

    招集手続を整えて開催する

    会社法368条1項により、招集する者は取締役会の日の1週間前まで(定款で短縮した場合はその期間前まで)に各取締役(監査役設置会社では各取締役及び各監査役)へ通知を発します。同条2項は「前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる」と定めているため、手続を省略したときは全員の同意があった旨を議事録に残します。

  3. 3

    出席の方法と利害関係を記録する

    会社法施行規則101条3項1号に沿って、開催日時・場所と、ウェブ会議など会場外からの出席者についてはその出席方法を記載します。途中入退室があれば議案ごとの在席状況も残します。特別の利害関係を有する取締役は会社法369条2項により議決に加われないため、その氏名と、当該議案の採決で議決に参加させなかった扱いを明記します。

  4. 4

    議案ごとの経過と結果を確定する

    会社法施行規則101条3項4号の「取締役会の議事の経過の要領及びその結果」として、提案の内容、説明と質疑の要旨、採決方法、賛否、可決・否決を議案単位でまとめます。監査役の意見や所定の発言は同項6号により内容の概要を記載します。決議した内容は、その後に作成する契約書や登記申請書と文言レベルで一致させます。

  5. 5

    署名等を完了し、10年間本店に備え置く

    書面の議事録には会社法369条3項により出席した取締役及び監査役が署名または記名押印し、電磁的記録では同条4項の代替措置をとります。会社法371条1項は「取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間」議事録等を本店に備え置くことを求めています(前条は会社法370条のみなし決議の規定です)。

専門家に相談したほうがよい場面

代表取締役の選定・解職、会社法365条1項による読替え後の利益相反取引・競業取引の承認、重要な財産の処分及び譲受けや多額の借財、組織再編、みなし決議を導入するための定款変更、登記申請の添付書類となる議事録の作成は、記載の不備が決議の効力や登記の受否に直結する場面です。開催前の設計段階で、会社法分野を扱う弁護士(登記手続については司法書士)に相談してください。当サイトは資格者を擁しておらず、議事録の作成の代行や個別事案についての法的判断は行いません。

よくある質問

取締役会議事録には誰が押印しますか。
会社法369条3項は、議事録が書面で作成されているときは「出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」と定めています。対象は出席者であり、欠席した取締役は署名しません。電磁的記録で作成した場合は、同条4項により法務省令で定める署名・記名押印に代わる措置をとります。印鑑の種類は会社法には定めがありませんが、代表取締役の選定を登記する場合は商業登記規則61条6項の印鑑証明書の扱いが関わるため、市町村登録の実印を使うかどうかを事前に確認します。
反対した取締役はどう記録すればよいですか。
会社法369条5項は「取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する」と定めています(第三項は同条3項の議事録を指します)。後日その決議をめぐって責任が問われた場面で、議事録に異議の記載がなければ賛成した前提から出発することになります。反対または棄権した取締役は、その旨と理由の要領を議事録に明記させ、記載を確認したうえで署名または記名押印してください。
議事録は何年、どこに保管しますか。
会社法371条1項は「取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間」、議事録またはみなし決議の意思表示書面等(議事録等)を本店に備え置くよう定めています(前条は会社法370条です)。株主は権利行使に必要な範囲で閲覧・謄写を請求できますが、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では同条3項により裁判所の許可が必要とされています。
実際に集まらなくても取締役会の決議はできますか。
会社法370条は、取締役が決議の目的である事項を提案し、議決に加わることができる取締役の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社では監査役が異議を述べたときを除きます)に、その提案を可決する旨の決議があったものと「みなす旨を定款で定めることができる」としています。定款にこの定めがなければ使えません。この場合も議事録は必要で、会社法施行規則101条4項1号により、決議があったものとみなされた事項の内容、提案した取締役の氏名、みなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を内容とします。
株主総会議事録と同じ書式・同じ扱いで足りますか。
署名・押印の要件が異なります。取締役会議事録は会社法369条3項が出席した取締役及び監査役の署名または記名押印を明文で義務付けるのに対し、株主総会議事録については会社法318条と会社法施行規則72条に署名・押印を義務付ける一般的な定めはありません。記載事項も、取締役会議事録は会社法施行規則101条3項、株主総会議事録は同規則72条3項と、別の条文が定めています。株主総会用の書式を流用すると、取締役会議事録に必要な署名・記名押印を欠くおそれがあるため、書類ごとに根拠条文を確認してください。

出典

最終確認日: 2026-08-12

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