役員の辞任届の書き方と変更登記での使い方
取締役辞任届、監査役辞任届、代表取締役辞任届、役員退任届、辞任届 とも呼ばれます。
役員辞任届は、役員が会社へ辞任を伝えた事実を残す私文書です。取締役、監査役、代表取締役が本人として作ります。辞任で登記事項が変わると、役員変更登記の添付書面になります(商業登記法54条4項)。
| 書面の要否 | 意思表示自体は書面要件なし |
|---|---|
| 登記添付 | 退任を証する書面になります |
| 登記期限 | 変更から2週間以内です |
| 印鑑 | 印鑑提出者(いなければ代表者)は届出印か実印と証明書 |
| 欠員時 | 後任就任まで権利義務が残ります |
| 過料 | 登記を怠ると取締役等に100万円以下 |
最終確認日:
どんなときに必要か
任期満了や解任ではなく、役員が自分の意思で退くときに使います。取締役、代表取締役、監査役の氏名は登記事項で、辞任は変更登記につながります(会社法911条3項・915条1項)。
書面にする必要はあるか
辞任の意思表示自体に、法律上の書面要件はありません。役員と会社の関係は委任で、委任は各当事者がいつでも解除できます。登記では、退任を証する書面を添付します(商業登記法54条4項)。
必ず入れる事項
辞任者と役職
誰がどの地位を辞めるかを特定します。取締役、代表取締役、監査役は登記事項が分かれるため、代表取締役だけを辞める場合も明記します(会社法911条3項)。
宛先の会社名
辞任は会社への意思表示で、会社に届いた時から効力を生じます(民法97条1項)。宛先が曖昧だと、どの会社に届いた意思表示かを示しにくくなります。
辞任の表示
退任の相談や引継ぎの申出では足りません。退任を証する書面として使うため、辞任する結論を一文で書きます(商業登記法54条4項)。
辞任日
辞任日は、原則として登記期間の起算点です(会社法915条1項)。員数が欠けて権利義務が残る間は、後任が就任するまで退任の登記ができない扱いになり得ます。
作成日
作成日と辞任日は同じとは限りません。将来の日を辞任日にする場合、意思表示の日と登記期間の起算日を分けて書きます。
署名押印
登記所に印鑑を提出した代表取締役等(提出者がいない会社では代表者)の辞任届は、実印を押し印鑑証明書を添付します。提出した印鑑を押したときは不要です(商業登記規則61条8項)。
後任と員数
役員が欠けるか、法律や定款で定めた員数が欠けると、後任就任まで権利義務が残ります。代表取締役が欠ける場合も同じです(会社法346条1項・351条1項)。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
会社の承認がないと辞任できないと扱う誤りです。役員と会社の関係には委任の規定が適用されます。委任は各当事者がいつでも解除できます(民法651条1項)。
印鑑を登記所に提出していない会社の代表者が、関係ないと考えて認印で辞任届を作る誤りです。提出者がいない会社では、代表者の辞任届にも印鑑証明書が要ります(商業登記規則61条8項)。
辞任届を出せば登記も終わると考える誤りです。辞任届は添付書面で、変更登記の申請は会社が2週間以内に行います(会社法915条1項)。
辞任日から職務も権利義務も常に終わると言い切る誤りです。役員や代表取締役が欠けるか員数が欠ける場合、後任就任まで権利義務が残ります(会社法346条1項・351条1項)。
不利な時期の辞任が常に損害賠償になると考える誤りです。相手方に不利な時期の解除でも、やむを得ない事由があるときは除かれます(民法651条2項)。
辞任届を作っただけで会社に渡さない誤りです。意思表示は相手方に到達した時から効力を生じます(民法97条1項)。
作成の流れ
- 1
地位を決める
取締役、監査役、代表取締役のどの地位を辞めるかを決めます。代表取締役だけを辞めて取締役に残る場合は、書き方と登記内容が変わります(会社法911条3項)。
- 2
員数を見る
定款と登記事項証明書で、役員と代表取締役の員数を見ます。欠けると後任就任まで権利義務が残ります(会社法346条1項・351条1項)。裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てで一時役員等の職務を行うべき者を選任できます。
- 3
本文を書く
会社名、辞任者の氏名と役職、辞任する旨、辞任日、作成日を書きます。相手方に不利な時期の解除は損害賠償の場面になるため、引継ぎ日程も整理します(民法651条2項)。
- 4
印鑑を選ぶ
辞任する人が登記所に印鑑を提出しているかを確かめ、必要な印鑑証明書を用意します。
- 5
会社へ渡す
辞任届を会社へ渡し、受領印や送付記録を残します。相手方が正当な理由なく到達を妨げたときは、通常到達すべき時に到達したものとみなされます(民法97条2項)。
- 6
登記へ進める
会社側は2週間以内に変更登記を申請し、辞任届を添付します。監査役を辞任した者は、辞任後最初に招集される総会で辞任の旨と理由を述べられます。取締役はその者に、招集する旨と日時・場所を通知します(会社法345条4項)。
この書式だけでは足りない場面
登記の窓口は管轄の法務局です。印紙税の課否は所轄税務署が窓口です。商業・法人登記の申請の代理を他人の依頼を受けて業として行えるのは、司法書士・司法書士法人と弁護士・弁護士法人に限られます。
よくある質問
- 会社が受け取らないと辞任できませんか。
- 同意は条件ではありません。届いた時に効力が生じ、正当な理由なく受取りを拒んでも届いたとみなされます(民法97条1項・2項)。
- 代表取締役だけ辞められますか。
- 代表取締役と取締役は別の登記事項です。代表取締役だけを辞められるかは、定款と代表取締役の選び方で変わります。
- 紙と押印がないと辞任できませんか。
- 書面要件はありません。登記では、印鑑提出者(いなければ代表者)の辞任届に届出印か実印と印鑑証明書が要ります(商業登記規則61条8項)。
- 後任がいなくても辞任届で終わりますか。
- 役員が欠けるか法令・定款の員数が欠けると、後任就任まで権利義務が残ります。代表取締役も同様です(会社法346条1項・351条1項)。
- 会社が登記しないと誰が過料を受けますか。
- 名宛人は株式会社でなく、在任中の取締役等の個人です(会社法976条)。員数が欠けて権利義務が残る間は、取締役等として扱われる余地があります。
出典
- 会社法(e-Gov法令検索)
- 民法(e-Gov法令検索)
- 商業登記法(e-Gov法令検索)
- 商業登記規則(e-Gov法令検索)
- 司法書士法(e-Gov法令検索)
- 法務局:株式会社変更登記申請書(役員が辞任して新たな役員が就任する場合)
最終確認日: 2026-09-26
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