取締役の決定書の書き方と登記で使う場面

取締役決定書、取締役の互選書、取締役決議書、取締役同意書、業務執行決定書 とも呼ばれます。

取締役の決定書は、取締役会を置かない株式会社の業務決定を残す書面です。取締役が作り、決定内容、日付、賛成した取締役を示します。登記では、取締役の一致を証する書面として使います(商業登記法46条1項)。

取締役の決定書の書き方と登記で使う場面の要点。
書面の要否会社法上の作成義務はありません
対象会社取締役会非設置会社です
決定方法原則は取締役の過半数です
登記期限変更日から2週間以内です
過料登記を怠った取締役に100万円以下の過料
互選書押印した取締役の印鑑証明書を原則として添付

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どんなときに必要か

取締役会非設置会社で、本店移転先、定款の定めに基づく代表取締役の互選、支店の設置、支配人の選任などを決めるときに作ります。定款が別の決定方法を定める場合は、その方法で決めます。登記事項と関係する決定では、登記申請書と同じ粒度で書きます。

書面にする必要はあるか

会社法上、この名称の書面を作る義務はありません。取締役が2人以上いれば、定款に別段の定めがある場合を除き、過半数で決めます(会社法348条2項)。登記で取締役の一致を要する事項は、その一致を証する書面を添付します。

必ず入れる事項

  • 商号と本店

    どの会社の決定かを示します。商号と本店の表記が登記記録と食い違うと、登記官が申請会社との対応を確認できず、補正の対象になります。

  • 機関設計

    取締役会を置かない株式会社の書面です。取締役会設置会社では、業務執行の決定機関が取締役会になります(会社法362条2項1号)。

  • 決定事項

    本店の新所在場所、代表取締役の氏名、支店の所在場所などを、登記事項と対応する粒度で書きます。

  • 定款の定め

    取締役が2人以上ある場合、定款に別段の定めがあれば、その定めが優先します。互選による代表取締役の選定も、定款の定めに基づきます(会社法349条3項)。

  • 取締役の総数

    現任取締役の人数と賛成者数を示します。過半数または定款所定の要件を満たすかを、書面から読める形にします。

  • 氏名と押印

    互選で代表取締役を定め、就任による変更の登記をするときの項目です。取締役が互選書に押した印鑑について、市町村長が作成した印鑑証明書を原則として添付します(商業登記規則61条6項2号)。

  • 決定日と効力日

    決定した日と変更が生じる日を分けます。登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店所在地で変更登記をします(会社法915条1項)。

  • 委任禁止事項

    取締役が2人以上なら、各取締役へ委任できない事項が5つあります。支配人の選任・解任、支店の設置・移転・廃止、株主総会の招集事項、体制の整備、定款に基づく責任免除です(会社法348条3項)。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 取締役会を置かない会社で取締役会議事録を作ると、設置していない機関の記録になります。取締役の決定とは機関が違います(会社法348条・362条)。

  • 重要な財産の処分や多額の借財を、取締役会非設置会社の委任禁止事項として書くと誤りです。それらは取締役会設置会社の規定に出る事項です(会社法362条4項1号・2号)。

  • 定款に互選の定めがないのに互選書で代表取締役を選ぶと、選定方法が合いません。取締役会を置かない会社の代表取締役は、定款、定款の定めに基づく互選、株主総会の決議のいずれかで定めます(会社法349条3項)。

  • 互選で代表取締役を定めた登記では、定款を添付します。互選の権限は定款に由来し、添付しないと補正になります(商業登記規則61条1項)。

  • 互選書へ認印を押すと、印鑑証明書と合わず作り直しになります。変更前の代表取締役が引き続き取締役として互選書に押印し、その印鑑が登記所に提出している印鑑と同じときは、印鑑証明書は要りません(商業登記規則61条6項)。

  • 本店を移転する、代表者を選ぶ、だけでは登記事項と対応しません。新本店の所在場所、選ばれる人の氏名、効力発生日まで書きます。

  • 登記を先送りすると、登記を怠った取締役は100万円以下の過料の対象です(会社法976条1号)。変更登記は、変更が生じた日から2週間以内にします。

作成の流れ

  1. 1

    定款を読む

    登記記録と定款で、取締役会を置かない会社かを見ます。取締役の決定方法、代表取締役の選定方法、本店所在地の定め方を読みます。

  2. 2

    事項を分ける

    本店移転、代表取締役の選定、支店設置などを、登記申請書の記載に合わせて分けます。定款で定めた本店所在地の外へ移すときは、株主総会の特別決議で定款を変更し、新しい所在場所と移転日を取締役が決めます(会社法466条)。

  3. 3

    同意を集める

    取締役が1人なら単独で決めます。2人以上なら、定款に別段の定めがある場合を除き、過半数または定款所定の同意で決めます(会社法348条2項)。

  4. 4

    書面を作る

    表題、商号、本店、決定日、決定事項、効力発生日、取締役の氏名と押印欄を置きます。定款、印鑑証明書、就任承諾書との記載も合わせます。

  5. 5

    期限を管理する

    変更が生じた日から2週間以内に、本店所在地で変更登記をします(会社法915条1項)。他の法務局の管轄区域へ移すときは、2週間以内に旧所在地で移転の登記、新所在地で登記事項の登記をします。新所在地の分は旧所在地の法務局を経由し、同時に申請します。

  6. 6

    原本を保管する

    決定書の原本を手元に残すときは、原本還付を受けます。原本還付を受けるときは、写しに原本と相違ない旨を記載します。

この書式だけでは足りない場面

商業・法人登記の申請先は管轄の法務局です。登記事項証明書と会社の代表者印の印鑑証明書は法務局、互選書に押した取締役個人の印鑑証明書は市区町村で取得します。商業・法人登記の申請の代理を他人の依頼を受けて業として行えるのは、司法書士・司法書士法人と弁護士・弁護士法人に限られます。

よくある質問

取締役会議事録と何が違いますか。
会社の機関が違います。取締役会を置かない会社では、取締役の決定書を使います。
取締役が1人でも作りますか。
会社法上の作成義務はありません。取締役が決める事項を登記するときは、決定を証する書面を添付します。
全員の実印が要りますか。
過半数で決めるのが原則で、定款が全員一致を定めていればそれに従います。互選書には押印した取締役の印鑑証明書を原則として添付します。
本店移転は決定書だけで足りますか。
定款の本店所在地の範囲内なら、取締役の決定で足ります。範囲外へ移るときは、株主総会の特別決議で定款を変更します。
株主リストはいつ関係しますか。
株主総会決議を要する登記で添付します。議決権の上位10名と、多い順に3分の2に達するまでの人数のうち少ない方の株主を示します(商業登記規則61条3項)。

出典

最終確認日: 2026-09-26

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