取締役会の決議省略(書面決議)同意書の要件と記載事項
取締役会書面決議同意書、取締役会みなし決議同意書、持ち回り決議同意書、取締役会決議省略同意書、書面決議同意書 とも呼ばれます。
取締役会決議省略同意書は、取締役会を開かずに、決議があったものとみなすための書類です。議決に加われる取締役全員が、書面又は電磁的記録で同意します。定款の定めがあり、監査役設置会社では監査役の異議がない場合に使います(会社法370条)。
| 書面の要否 | 書面又は電磁的記録が効力要件です |
|---|---|
| 前提 | 定款の決議省略条項です |
| 同意者 | 議決に加われる取締役全員です |
| 監査役 | 監査役設置会社では、異議があると使えません |
| 備置き | 議事録と同意記録を本店に10年間備え置きます |
| 登記 | 登記事項の決議なら証明書面と定款を添付します |
最終確認日:
どんなときに必要か
取締役会の決議事項を、日程を合わせずに確定したいときに使います。代表取締役の選定、重要な財産の処分、多額の借財、契約の承認などが対象です。定款に決議省略の定めがない会社や、同意がそろわない案件では使えません。
書面にする必要はあるか
書面又は電磁的記録が法律上必要です。口頭の了承だけでは、決議があったものとは扱いません。議事録と同意の書面等は、決議があったものとみなされた日から10年間、本店に備え置きます(会社法371条1項)。
必ず入れる事項
定款の省略条項
決議省略は、定款で定めた会社だけが使えます。現行定款に条項がなければ、全員の同意書があっても取締役会決議として扱えません(会社法370条)。
決議事項の内容
承認する契約、相手方、金額、効力発生日を具体的に書きます。各取締役が何に同意したかを一義的に特定します。
提案取締役の氏名
決議省略は、取締役の提案が起点です。議事録にも、提案をした取締役の氏名を記載します(会社法施行規則101条4項1号)。
同意者の範囲
同意者は、その事項について議決に加われる取締役全員です。特別の利害関係を有する取締役は、議決に加われません(会社法369条2項・370条)。
同意の記録
各取締役の同意は、書面又は電磁的記録で残します。署名押印、電子署名、本人名義の明確なメール返信などで、本人と内容を追える形にします。
監査役の異議なし
監査役設置会社では、監査役が提案に異議を述べると使えません(会社法370条)。監査の範囲を会計に限定する定款の定めがある会社は、監査役設置会社に当たりません。
みなし決議日
決議があったものとみなされた日を記録します。通常は、議決に加われる取締役全員の同意がそろった日です。10年間の備置き期間は、この日から数えます。
議事録作成者
みなし決議には出席取締役がいません。議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載します(会社法施行規則101条4項1号)。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
定款の省略条項がないまま同意書だけを集めても、取締役会決議として扱えません(会社法370条)。その決議を前提にした代表取締役の選定や登記も、後から争われます。
在任取締役全員を機械的に母数にすると、同意者の範囲を誤ります。特別の利害関係を有する取締役を数えると、全員の同意がそろったかの判定を誤ります。
監査役設置会社かを見ないと、異議の扱いを落とします。会計監査限定の定款がある会社は、監査役設置会社から除かれます(会社法2条9号)。
電話の了承、チャットの既読、スタンプだけでは足りません。書面又は電磁的記録による同意の意思表示が要件です(会社法370条)。
同意書だけで議事録を作らないと、備置き義務を満たせません。
決議を書面で済ませても、報告まで書面だけでは済ませられません。代表取締役と、取締役会決議で選定された業務執行取締役は、3か月に1回以上、取締役会で職務執行状況を報告します。この報告は省略できません(会社法363条2項・372条2項)。
登記事項に関わる決議で添付書面を軽く見ると、申請が止まります。決議があったものとみなされた場合に当たることを証する書面を添付します(商業登記法46条3項)。決議省略の条項を含む定款も添付します。
作成の流れ
- 1
定款を見る
現行定款に、取締役会決議の省略を認める条項があるかを見ます。条項がなければ、通常の取締役会開催又は定款変更の手続を先に扱います。
- 2
議案を固める
決議事項を通常の取締役会議案と同じ精度で書きます。承認対象、金額、相手方、効力発生日を入れ、同意の対象を特定します。
- 3
同意者を決める
議決に加われる取締役を案件ごとに確定します。特別の利害関係を有する取締役は、同意を数える母数から外します。
- 4
監査役を判定する
監査役設置会社に当たるかを定款で判定します。該当する場合は、提案内容を監査役にも共有し、異議を述べていないことを記録に残します(会社法370条)。
- 5
同意を集める
各取締役から、書面又は電磁的記録で同意を回収します。全員分がそろった日を、決議があったものとみなされた日として記録します。
- 6
議事録を作る
みなし決議用の議事録を作ります。事項の内容、提案取締役、みなし決議日、議事録作成職務を行った取締役を記載します(会社法施行規則101条4項1号)。
- 7
備置きをする
議事録と同意記録を、備置き期間中は本店に保管します。登記事項に関わる決議では、決議があったとみなされたことを証する書面と定款を添付書面として整えます。
この書式だけでは足りない場面
商業登記の申請書様式と添付書面の案内は、法務局が公開しています。印紙税の課否は、国税庁又は所轄税務署が扱います。商業・法人登記の申請の代理を他人の依頼を受けて業として行えるのは、司法書士・司法書士法人と弁護士・弁護士法人に限られます。
よくある質問
- メール返信だけで足りますか。
- メールも電磁的記録に当たり得ます。提案を特定し、本人の同意を明記し、保存できる形が前提です。
- 定款に定めがなくても使えますか。
- 使えません。決議省略は、定款に定めがある会社だけの制度です(会社法370条)。
- 監査役も同意者に数えますか。
- 数えません。ただし監査役設置会社では、監査役が提案に異議を述べると決議省略は使えません。
- 取締役会を一度も開かなくてよいですか。
- 開かないことはできません。代表取締役と選定業務執行取締役は、3か月に1回以上、取締役会で職務執行状況を報告します(会社法363条2項)。
- 登記に使う書類ですか。
- 代表取締役の選定など登記事項に関わる決議では、添付書面になります。
出典
最終確認日: 2026-09-26
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