有期労働契約書(契約社員)

契約社員 雇用契約書、有期雇用契約書、期間の定めのある労働契約書、労働条件通知書兼雇用契約書、嘱託社員 契約書、有期労働契約 更新 とも呼ばれます。

有期労働契約書は、契約社員・嘱託・臨時社員など、あらかじめ期間を区切って働いてもらう労働契約の内容を書面にしたものです。名称は「雇用契約書」「労働条件通知書」などさまざまですが、労働基準法15条1項後段と同法施行規則5条4項により、契約期間や賃金など一定の事項は書面の交付で明示することが義務づけられています。単なる証拠書類ではなく、法律が交付そのものを求めている書面です。

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どんなときに必要か

期間の定めのある労働契約を結ぶときに、そのつど必要になります。新規採用のときだけでなく、更新も新たな労働契約の締結にあたるため、更新のたびに明示が求められます。フルタイムの契約社員でも短時間のパートでも、期間の定めがあれば同じ扱いです。同一の使用者との間で締結された有期労働契約の通算契約期間が5年を超え、労働契約法18条1項の無期転換申込権が生じる契約を結ぶときは、労働基準法施行規則5条5項・6項により明示すべき事項が上乗せされます。

書面にする必要はあるか

法定の書面要件があります。労働基準法15条1項後段を受けた同法施行規則5条4項本文は「法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする」と定めています。同項ただし書により、労働者が希望した場合は、同項1号のファクシミリを利用してする送信と、同項2号の電子メール等の送信(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る)も認められます。出力して書面を作成できるものに限るという限定は2号の括弧書きで、1号には付いていません。書面交付が必要な事項は同5条3項が指定する1項1号から4号まで(昇給に関する事項を除く)です。

必ず入れる事項

  • 契約期間(始期と終期)

    労働基準法施行規則5条1項1号の書面交付事項です。労働基準法14条1項は原則3年を上限としており、これを超える定めは同法120条1号で30万円以下の罰金の対象とされ、13条により超えた部分は無効になるとされています。

  • 更新の有無と更新の判断基準

    労働基準法施行規則5条1項1号の2の事項です。通算契約期間や更新回数に上限を設けるなら、その上限まで明示する必要があります。書き落とすと明示義務を欠くうえ、更新への期待の有無をめぐる争いの火種になります。

  • 就業の場所・業務と「変更の範囲」

    労働基準法施行規則5条1項1号の3の事項です。2024年4月から「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」まで含めることになったため、この欄を持たない古い様式のまま使うと明示事項を欠いた書面になります。

  • 始業終業時刻・休憩・休日・休暇・所定外労働の有無

    労働基準法施行規則5条1項2号の事項で、同条3項により書面の交付が必要な範囲に入ります。同号は「始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項」と定めており、年次有給休暇などの休暇も、シフト制の就業時転換も書き落とせません。

  • 賃金の決定・計算・支払方法と締切・支払時期

    労働基準法施行規則5条1項3号の事項です。同条3項は書面交付事項から「昇給に関する事項」だけを括弧書きで除いており、昇給の時期や決定基準といった中身までは、労働基準法上は書面の交付を求められていません。ただし「昇給の有無」自体は、契約社員ならパート・有期雇用労働法6条1項・同法施行規則2条1項1号により文書で明示すべき事項です。

  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

    労働基準法施行規則5条1項4号の事項で、書面の交付が必要です。あわせて、期間の途中の解雇は労働契約法17条1項により「やむを得ない事由がある場合でなければ」できないとされている点を踏まえて書くことになります。

  • 昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口

    契約社員はパート・有期雇用労働法2条2項の「有期雇用労働者」に当たるため、同法6条1項・同法施行規則2条1項のこの4項目を文書で明示する義務があります。違反は同法31条で10万円以下の過料です。

  • 無期転換申込みに関する事項(該当時)

    同一の使用者との通算契約期間が5年を超え無期転換申込権が生じる契約では、労働基準法施行規則5条5項により、申込みに関する事項と転換後の労働条件のうち同条1項1号・1号の3〜11号(4号の2〜11号は定めをしない場合を除く)を明示します。書面が要るのは申込みの事項と1号・1号の3〜4号(昇給を除く)です(同条6項)。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 上限を超える契約期間。労働基準法14条1項は、期間の定めのないものと一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、3年(同項1号の高度の専門的知識等を有する労働者で当該業務に就く者、2号の満60歳以上の労働者は5年)を超える契約を禁じています。対象者でないのに「期間5年」と書いた雛形は同法120条1号で30万円以下の罰金の対象とされ、13条により超えた部分は無効になるとされています。

  • 更新上限と「変更の範囲」の欄がない旧様式。労働基準法施行規則5条1項1号の2の更新上限(通算契約期間・更新回数)と、1号の3の「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」は2024年4月から明示事項に加わりました。ネット上に残る古い労働条件通知書のひな形はこの2欄を持たないものが多く、そのまま使うと明示事項を欠いた書面になります。

  • 「契約期間中は退職できない」と読める条項。民法628条は、期間を定めた雇用でも「やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」と定めます(同条は続けて、その事由が一方の過失で生じたときの相手方への損害賠償責任も定めます)。労働基準法137条も、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除く1年超の有期契約では、同法14条1項各号の労働者を除き、初日から1年経過後はいつでも退職を申し出られるとしています。

  • 中途退職の違約金・損害賠償額の予定。労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。「期間の途中で辞めたら違約金○万円」と金額を決め打ちする条項は、同条が明文で禁じる賠償予定にあたります。研修費用や留学費用の返還条項は、実質が立替費用の返還なのか退職を思いとどまらせる賠償予定なのかで評価が分かれるとされていますので、置く前に弁護士にご相談ください。

  • パート・有期雇用労働法の4項目の欠落。昇給・退職手当・賞与の有無と、雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口(同法施行規則2条1項)は、契約社員も同法2条2項の有期雇用労働者にあたり同法6条1項の文書明示が必要です。厚生労働省のモデル労働条件通知書(一般労働者用;常用、有期雇用型)には4欄がありますが、正社員向け様式や古いひな形では相談窓口欄が抜けがちです。欄がなければ明示にならず、同法31条の10万円以下の過料の対象とされています。

  • 無期転換を避けるための形だけのクーリング。労働契約法18条2項は、契約の間に空白期間(原則6か月以上)があるときは「当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない」と定めます。同一の使用者のもとでの通算がリセットされる仕組みで、これを逆手にとって申込権の発生直前に形式的な空白をはさむ設計は、脱法的と評価される可能性があります。更新拒絶の可否は同法19条の当てはめで、個別の判断は弁護士にご相談ください。

作成の流れ

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    契約期間の上限区分を確認する

    まず労働基準法14条1項のどの枠に当たるかを確かめます。原則の上限は3年で、同項1号の「専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)」と2号の満60歳以上の労働者は5年、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものは別枠です。知識だけでなく技術・経験も対象です。ここを外すと期間の定め自体が同項に反することになります。

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    更新の有無・基準・上限を決める

    更新の可能性があるなら、労働基準法施行規則5条1項1号の2にしたがって更新の判断基準を書きます。通算契約期間や更新回数に上限を置くかどうかも、この段階で決めておきます。上限を後から新設したり短縮したりすると更新への期待をめぐる説明が必要になるため、最初の契約の時点で方針を固めておくほうが安全です。1回の期間を短く刻んで反復更新する設計については、労働契約法17条2項が、労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならないと定めています。

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    書面交付が必要な事項を並べる

    労働基準法施行規則5条3項が指定する「第一項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)」を抜けなく並べます。具体的には契約期間、更新の基準、就業の場所・業務とその変更の範囲、労働時間と休憩・休日・休暇、賃金関係、退職に関する事項(解雇の事由を含む)です。厚生労働省が公開しているモデル労働条件通知書の欄立てと突き合わせると漏れを見つけやすくなります。

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    パート・有期雇用労働法の4項目を足す

    昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口の4つの欄を設けます(同法6条1項・同法施行規則2条1項)。厚生労働省のモデル労働条件通知書にはこの4欄がありますが、正社員向けの社内様式を流用するときは自分で足すことになります。「有無」を答える欄なので、制度がない場合も「なし」と書くことが明示になります。

  5. 5

    交付方法を選び、更新のたびに繰り返す

    原則は書面の交付です(労働基準法施行規則5条4項本文)。FAXや電子メール等によれるのは労働者がその方法を希望した場合に限られます。このうち「当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る」という限定は同項ただし書2号(電子メール等)の括弧書きで、1号のファクシミリを利用してする送信の方法には付いていません。会社の都合だけでメール送付に切り替えることはできません。更新のたびに同じ手順が必要になるので、交付の記録も残しておきます。

専門家に相談したほうがよい場面

有期契約は期間の終わりぎわに争いが集中します。更新を重ねてきた人の雇止めを検討している/告げられた、無期転換申込権が生じる直前に更新上限を新設したり短縮したい、期間の途中で辞めたい・辞めてもらいたい、正社員との賞与や手当の差を指摘された——こうした場面は労働契約法19条・18条・17条やパート・有期雇用労働法8条9条の当てはめになり、結論は個別の事情で変わります。署名や通知の前に弁護士・社会保険労務士にご相談ください。

よくある質問

労働条件通知書と雇用契約書は、両方作る必要がありますか。
労働基準法15条1項後段と同法施行規則5条4項が求めているのは、所定の事項が明らかとなる書面を交付することであって、書面の名称は条文上限定されていません。そのため実務では「労働条件通知書兼雇用契約書」として一体の書面にする例があります。ただし、通知書は使用者から労働者への一方的な明示、契約書は双方が合意した内容の記録という役割の違いがありますので、署名押印欄を設けて合意の形を残すかどうかは別に検討することになります。
契約期間は最長で何年にできますか。
労働基準法14条1項が上限を定めています。期間の定めのないものと一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、原則は3年です。例外として、同項1号の「高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等」を有する労働者(当該業務に就く者に限る)と、2号の満60歳以上の労働者との契約は5年まで認められています。上限を超える定めは同法120条1号で30万円以下の罰金の対象とされています。
更新して通算5年を超えるとどうなりますか。
労働契約法18条1項は、「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間」を通算契約期間と定義したうえで、これが5年を超える労働者が、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に無期労働契約の締結を申し込んだときは、使用者はその申込みを承諾したものとみなすと定めます。他社での期間は通算されません。転換後の労働条件は、別段の定めがある部分を除き、現に締結している有期労働契約の内容と同一(契約期間を除く)です。同条2項により空白期間(原則6か月以上)があると、その前に満了した契約期間は算入されません。ただし、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法8条2項は、厚生労働大臣の認定を受けた事業主(第二種認定事業主)のもとで定年後引き続いて雇用されている期間について「同項に規定する通算契約期間に算入しない」と定めています。同条1項は、同じく認定を受けた事業主のもとで特定有期業務に就く高度専門職(1年間当たりに換算した賃金の額が厚生労働省令で定める額以上の者に限る)について、労働契約法18条1項の「五年」をその業務の開始の日から完了の日までの期間(10年を超える場合は10年)に読み替えます。いずれも事業主が認定を受けていることが前提なので、定年後の嘱託などでは認定の有無で結論が変わります。
電子メールで送っても明示したことになりますか。
原則は書面の交付です(労働基準法施行規則5条4項本文)。同項ただし書は労働者が希望した場合に限りFAXの送信と電子メール等の送信を認めており、電子メール等は「当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る」とされています。パート・有期雇用労働法の4項目も同法施行規則2条3項が同じ枠組みを定めています。労働者が希望していないのにメールだけで済ませることはできません。

出典

最終確認日: 2026-08-07

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