採用内定通知書
内定通知書、採用内定通知、採用通知書、内定通知とも呼ばれます。
採用内定通知書は、採用を決めた相手に内定を伝える書面です。判例は、応募への承諾として解約権留保付き労働契約の成立を認めた事案があります。単なるお知らせではなく、契約成立に関わる書面です。
最終確認日:
どんなときに必要か
採用を決め、応募者に伝える段階で作ります。新卒採用では内々定や内定式の前後、中途採用では入社日・配属・賃金を固める場面で交付されます。募集時の条件を変更・特定・削除・追加する場合は、その内容も明示します(職業安定法5条の3第3項)。
書面にする必要はあるか
内定通知書そのものに法定の書面要件はありません。労働契約は、労働者と使用者の合意で成立します。ただし、職業安定法上の労働条件明示は書面交付が原則で、本人が希望した場合に限りファクシミリや電子メール等も使えます(職業安定法施行規則4条の2第4項)。
記載が必要な事項
採用する旨と氏名
誰に対する何の通知かを示します。判例は、求人への応募と採用内定通知を、労働契約の申込みと承諾として扱った事案があります。
入社予定日
就労開始の時期を示します。始期がないと、就労義務と賃金支払義務がいつ始まるかを判断する手がかりが残りません。
契約期間
期間の定めの有無を示します。期間の定めがない場合はその旨を、有期の場合は始期と終期を書きます(職業安定法施行規則4条の2第3項2号)。
業務内容と変更範囲
従事すべき業務の内容には、変更の範囲も含めます。将来の配置転換がある場合は、入社後の認識差を避ける材料になります。
就業場所と変更範囲
就業の場所には、変更の範囲も含めます。転勤があり得るのに勤務地だけを書くと、募集時説明との食い違いが残ります。
労働時間・休日
始業・終業時刻、所定外労働の有無、休憩、休日を示します。所定外労働の有無は、内定段階で残すと認識差を減らせます。
賃金額
賃金額は明示事項です。臨時賃金、賞与、労働基準法施行規則8条各号の賃金は除かれます。除外分を確定額で書くと、合意内容と評価され得ます。
試用期間
試用期間中と終了後で条件が異なる場合は、それぞれの内容を示します。片方だけでは条件差が書面から分かりません。
保険・雇用主・喫煙対策
社会保険等の適用、雇用しようとする者の名称、受動喫煙防止措置を示します。採用窓口と雇用主が違う場合は、契約相手を明確にします。
返送期限と提出書類
内定承諾書や誓約書は、契約成立の場面に関わる書類です。返送期限と提出物を書くと、回収が滞ったときの状況整理に使えます。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
内定取消しを会社の判断だけに委ねる留保条項。判例は、取消事由を客観的合理性と社会通念上の相当性で絞った事案があります。
賞与や各種手当まで確定額で書く例。明示事項から除かれる部分まで書くと、労働契約の内容と評価され得ます。
内定辞退時の違約金や損害賠償予定を置く条項。使用者は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額の予定を定められません。
募集広告や面接説明と違う条件を黙って入れる例。募集時の明示条件を変更する場合は、変更内容等を明示します(職業安定法5条の3第3項)。
内定通知書だけで労働条件通知書を省く運用。労働契約締結時の労働条件明示には、書面交付の対象事項があります(労働基準法15条1項)。
新規学卒者の内定取消しを社内だけで終える雛形。取消し・撤回や内定期間延長は、公共職業安定所等への通知対象です(職業安定法施行規則35条2項)。
作成の流れ
- 1
条件を集める
求人票、募集広告、職業紹介事業者に渡した求人条件を集めます。募集や職業紹介が終わる日まで、一定の記録を保存します(職業安定法施行規則4条の2第7項)。
- 2
差分を見る
募集時の条件と、内定時に示す条件を1項目ずつ比べます。特定、削除、追加した内容がある場合は、その内容を書き出します。
- 3
項目を埋める
業務、契約期間、試用期間、就業場所、労働時間、賃金、保険、雇用主、受動喫煙防止措置を並べます。有期更新基準は有期契約の場合に限ります。
- 4
試用期間を分ける
試用期間中と終了後で条件が異なる場合は、それぞれを分けて示します。賃金や勤務地が違う場合は、期間中と期間後を2列で整理します。
- 5
交付方法を決める
明示は書面交付が原則です。本人が希望した場合に限り、ファクシミリや電子メール等も使えます。メールでは、本人の希望の記録も残します(職業安定法施行規則4条の2第4項)。
- 6
通知書を整える
内定時に労働契約が成立すると評価される場合、その時点が労働契約の締結に当たり得ます。労働条件通知書も用意し、就労開始前までに食い違いを見ます。
この書式だけでは足りない場面
内定取消し、入社日延期、募集時と違う条件での内定、違約金請求は、通知書とは別に整理する場面です。新卒者の内定取消しでは、公共職業安定所と施設の長への通知が関わります。
よくある質問
- 内定通知書は必ず書面で出さないといけませんか。
- 内定通知書自体に法定の書面要件はありません。労働条件明示は書面交付が原則です。
- 内定を出したあとに取り消すことはできますか。
- 判例は、取消事由を客観的合理性と社会通念上の相当性で絞った事案があります。
- 新卒者の内定を取り消すとき、社外への連絡は必要ですか。
- 新規学卒者の内定取消し・撤回は、公共職業安定所と施設の長への通知対象です。
- 内々定と内定は法的に違うものですか。
- 法令に内々定の定義はありません。呼び名ではなく、実際のやり取りで評価されます。
出典
- e-Gov法令検索 労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)
- e-Gov法令検索 職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)
- e-Gov法令検索 職業安定法施行規則(昭和二十二年労働省令第十二号)
- e-Gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
- e-Gov法令検索 労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)
- e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
- 裁判所 裁判例検索 最高裁判所第二小法廷判決 昭和54年7月20日(昭和52(オ)94・民集第33巻5号582頁)
- 厚生労働省 令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます
- 厚生労働省 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります
最終確認日: 2026-09-20