入社誓約書の解読ガイド

入社時誓約書、入社に関する誓約書、誓約書(入社時提出)、就業誓約書、入社誓約書兼同意書とも呼ばれます。

入社誓約書は、入社する人が就業規則の遵守や秘密保持を会社に約束する書面です。法定の作成義務はなく、約束内容の証拠として使います。法律が禁じる条項は、署名があっても効力を生じません。

最終確認日:

どんなときに必要か

採用後、働き始める前後に、会社が本人から提出を受ける形で使います。労働条件通知書は会社から本人への明示で、誓約書とは向きが逆です。使用者の労働条件明示義務は誓約書では果たせません(労働基準法15条1項)。

書面にする必要はあるか

入社誓約書に法定の書面要件はなく、証拠目的の書面です。契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、方式を備えなくても成立します。使用者の労働条件明示義務は、誓約書の有無と別に残ります。

記載が必要な事項

  • 就業規則の特定

    使用者が合理的な労働条件を定めた就業規則を周知していた場合、その就業規則が労働契約の内容になります。どの規則か曖昧だと、誓約の中身を特定できません。

  • 就業規則の周知

    就業規則は、掲示、備付け、書面交付その他の法定方法で周知します。周知がなければ、就業規則の内容を労働契約の内容にする枠組みは働きません。

  • 義務の具体的列挙

    信義誠実の原則だけでは、個別の義務内容は決まりません。「誠実に勤務する」だけでは、後から何を守らせたかったかを示せません。

  • 賠償額を定めない記載

    使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、損害賠償額を予定する契約をしてはいけません(労働基準法16条)。

  • 規則以上の条件

    就業規則の基準に達しない労働条件を定めた部分は無効です。無効部分は就業規則の基準によります。誓約書も労働契約の一部として扱われます。

  • 日付と本人署名

    法定の書面要件がないため、価値はいつ、誰が、何に同意したかを示す点にあります。提出日、入社日、署名または記名押印で証拠性を支えます。

  • 通知書との分離

    使用者は労働条件を明示し、一定事項は書面交付などの方法で示します。誓約書は本人から会社への約束であり、この義務を果たしません(労働基準法15条1項)。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 損害時に金額や給与月数を支払う条項です。使用者の違約金と損害賠償額の予定は禁止されています(労働基準法16条)。

  • 退職に研修費用返還や違約金を結び付ける条項です。違約金は、損害の有無を問わない点で賠償予定と別です。

  • 業務上の損害を全額賠償する包括条項です。実損の賠償や求償も、信義則上相当な限度で扱われます。

  • 就業規則にない義務を誓約書だけで課す条項です。周知された就業規則にない事項は、個別合意の問題になります。

  • 就業規則の基準を下回る労働条件です。その部分は無効となり、就業規則の基準によります(労働契約法12条)。

  • いかなる懲戒処分にも異議を申し立てない条項です。懲戒は客観的合理性と社会通念上の相当性で判断されます。

  • 身元保証人欄に極度額を書かない形です。2020年4月1日以後の個人根保証では、極度額が効力を左右します。

作成の流れ

  1. 1

    規則を点検する

    常時10人以上を使用する場合、就業規則の作成と届出が要ります。就業規則があるなら、法定方法で周知されているかも点検します。

  2. 2

    事項を書き出す

    服務規律、秘密の取扱い、備品管理、住所変更の届出などを一つずつ書き出します。就業規則にある事項と、ない事項に分けます。

  3. 3

    賠償を点検する

    金額、月数、倍率など、あらかじめ数字を決めた賠償の定めを外します。包括的な全額賠償の記載も、判例上の限界を踏まえて見直します。

  4. 4

    通知書と分ける

    労働条件通知書は会社から本人への明示です。誓約書は本人から会社への約束です。両者を分けると、記載の食い違いを避けやすくなります。

  5. 5

    日付を整える

    提出日、入社日、本人の署名または記名押印をそろえます。本人控えと、就業規則を見られる方法も案内します。

  6. 6

    相談先を分ける

    就業規則の作成、変更、届出や労務管理の設計は社会保険労務士の分野です。紛争や責任追及の可否は弁護士の分野です。

この書式だけでは足りない場面

条項の書き方だけで結論が決まらない場面があります。損害賠償、懲戒処分、解雇、退職後の秘密保持や競業避止が典型です。就業規則の作成、変更、届出や労務管理の整備は社会保険労務士が扱う分野です。

よくある質問

入社誓約書は作らなければいけませんか。
法定の作成義務はありません。就業規則を読んだことや守ることの証拠として使われます。
損害を全額弁償すると書けますか。
金額を先に決める書き方は禁止です。全額という包括表現も、そのまま認められるとは限りません。
就業規則がなくても義務を課せますか。
就業規則による契約内容化の枠組みは働きません。個別合意として扱われる場合はあります。
労働条件通知書と同じものですか。
別のものです。誓約書は本人から会社への約束で、通知書は会社から本人への労働条件明示です。

出典

最終確認日: 2026-09-20

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