身元保証書の解読ガイド:極度額(民法465条の2)と期間の上限
身元保証契約書、身元保証人、身元引受書、身元保証書の極度額、入社時の身元保証とも呼ばれます。
身元保証書は、被用者の行為で使用者が受けた損害を、身元保証人が賠償すると約束する書面です。保証契約なので、書面または電磁的記録でします。個人根保証契約に当たると解する立場では、極度額を定めないと効力を生じません(民法465条の2第2項)。
| 書面の要否 | 書面または電磁的記録でします |
|---|---|
| 極度額 | 個人根保証では金額の明記が効力要件 |
| 保証期間 | 定めるなら5年以内 |
| 通知解除 | 通知と解除を奪う特約は無効 |
| 注意点 | 古い様式は極度額欄を欠く例があります |
最終確認日:
どんなときに必要か
新しく人を雇うとき、本人とは別に親族などへ署名を求める場面で使います。使用者は、金銭、顧客資産、個人情報を扱う職種で身元保証書を求めることがあります。提出を求めるかは会社の判断です。改正前に作った社内様式では、極度額の欄を見直す場面があります。
書面にする必要はあるか
法定の書面要件があります。保証契約は、書面または内容を記録した電磁的記録でします。極度額の定めも、口約束では効力を生じません(民法446条2項、民法465条の2第3項)。
記載が必要な事項
身元保証書では、極度額、損害の範囲、保証期間、当事者、保証人、締結日を特定します。身元保証が個人根保証契約に当たると解する立場では、極度額を欠くと効力を生じません(民法465条の2第2項)。
極度額
個人根保証契約は、極度額を定めないと効力を生じません。身元保証がこれに当たると解する立場では、この欄を欠く書面は効力を生じません(民法465条の2第2項)。
損害の範囲
被用者のどの行為による損害を保証するかを特定します。身元保証ニ関スル法律は、被用者の行為で使用者が受けた損害を賠償する約束を対象にします。
保証期間
期間を定めるなら5年以内です。5年を超える定めは5年に短縮されます。期間を定めない場合は成立の日から3年、商工業見習者は5年です(身元保証ニ関スル法律2条1項)。
被用者と使用者
誰の行為について、誰に対して責任を負うかを特定します。同じ様式を複数の従業員に使う場合、後から対応関係が分からなくなることを避けます。
保証人の表示
誰が保証したかを書面で特定します。氏名、住所、署名は、使用者が身元保証ニ関スル法律の通知を届ける宛先にもなります。
保証人の属性
個人根保証契約は、保証人が法人でないものです。保証人が個人か法人かで、極度額の定めが要るかどうかが分かれます。
締結日
改正前に締結した保証契約の保証債務は、従前の例によります。極度額のルールが及ぶかは、契約を締結した日が起点です(民法の一部を改正する法律附則21条1項)。
無効・効力が否定されやすい条項
争点は、極度額、保証期間、通知と解除に集中します。極度額の欄がない様式、5年を超える期間、使用者の通知や保証人の解除を奪う特約は、効力や範囲の問題になります(身元保証ニ関スル法律6条)。
極度額の欄がない雛形。身元保証が個人根保証契約に当たると解する立場では、極度額を欠くと効力を生じません(民法465条の2第2項)。
極度額を「損害額を限度とする」「相当額」と書く例。法務省のパンフレットは、金額を明瞭に定める説明をしています。
保証期間を10年とする定め。身元保証の期間は5年を超えられず、これより長い期間は5年に短縮されます(身元保証ニ関スル法律2条1項)。
責任が無期限に続く書きぶり。期間を定めない身元保証は成立の日から3年、商工業見習者は5年です。更新後も5年を超えられません。
使用者の通知や保証人の解除を奪う特約。身元保証人に不利益で、身元保証ニ関スル法律に反する特約は無効です(身元保証ニ関スル法律6条)。
損害の全額を無条件に賠償する条項。裁判所は、使用者の監督上の過失、保証の事情、被用者の任務や身上の変化を斟酌します。
作成の流れ
作成は締結日の確認から始めます。改正前に締結した保証契約の保証債務は従前の例によるためです。続いて、保証人の属性、極度額、期間、通知と解除の条項を整えます。
- 1
締結日を確かめる
改正前に締結した保証契約の保証債務は、従前の例によります。極度額のルールが及ぶかは、契約を締結した日で分かれます(民法の一部を改正する法律附則21条1項)。
- 2
保証人を確認する
個人根保証契約は、不特定の債務を主たる債務とする保証契約で、保証人が法人でないものです。身元保証は、保証人が個人ならこの定義に当たると解されています。
- 3
極度額を書く
極度額は、書面または電磁的記録で定めます。法務省のパンフレットは、金額を明瞭に定め、当事者間の合意で定める説明をしています(民法465条の2第2項)。
- 4
期間を整える
身元保証の期間の上限は5年です。期間を定めない場合は成立の日から3年、商工業見習者は5年です。更新後の期間も、更新の時から5年が上限です。
- 5
通知解除を読む
使用者は、被用者の不適任や不誠実な事跡を知ったときなどに、保証人へ遅滞なく通知します。保証人は、通知を受けた後などに将来へ向かって解除できます(身元保証ニ関スル法律3条、身元保証ニ関スル法律4条)。
この書式だけでは足りない場面
従業員の行為で損害が生じた後は、請求額は書面の極度額だけでは決まりません。裁判所は、使用者の監督上の過失、保証の事情、被用者の任務や身上の変化を斟酌します。
よくある質問
- 2020年3月に結んだ身元保証書に極度額がありません。無効ですか。
- 改正前に締結した保証契約の保証債務は従前の例によります。ただし期間満了後の行為には及びません(民法の一部を改正する法律附則21条1項)。
- 極度額はいくらにすればよいですか。
- 法律は具体的な金額を定めていません。法務省のパンフレットは、金額を明瞭に定める説明をしています。
- 期間を更新するとき、あらためて極度額を定めますか。
- 身元保証ニ関スル法律は更新を認めます。更新後の期間は、更新の時から5年を超えられません。
- 身元保証書は取り交わさなければいけませんか。
- 提出を求めるかは会社の判断です。身元保証契約を結ぶなら、保証契約として書面または電磁的記録でします(民法446条2項)。
- 身元保証人が亡くなった後も保証は続きますか。
- 個人根保証契約では、保証人が死亡した時点で元本が確定します。その後に生じた損害には及びません。
出典
- e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
- e-Gov法令検索 身元保証ニ関スル法律(昭和八年法律第四十二号)
- e-Gov法令検索 民法(2019年12月11日時点・改正前の第465条の2「貸金等根保証契約の保証人の責任等」)
- 法務省 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
- 法務省 パンフレット(保証)「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」
最終確認日: 2026-09-20