パート・アルバイト労働契約書:書面交付の義務と無効になりやすい条項
パートタイマー雇用契約書、アルバイト契約書、短時間労働者労働条件通知書、パート雇用契約書、短時間・有期雇用労働者の労働条件通知書とも呼ばれます。
パート・アルバイト労働契約書は、短時間労働者や有期雇用労働者の労働条件を示す書面です。名称よりも、法律で決まる記載内容が軸です。正社員向けとの違いは、特定事項4つが重なる点です(パートタイム・有期雇用労働法6条1項)。
| 書面の要否 | 書面交付が原則(労働基準法15条1項) |
|---|---|
| 電子交付 | 労働者が希望し出力可能な場合に限る |
| 書面事項 | 昇給を除く省令事項 |
| 上乗せ | 特定事項4つは無でも記載 |
| 過料 | 10万円以下の過料(パートタイム・有期雇用労働法31条) |
| 対象者 | 呼称でなく短時間・有期の定義で判定 |
最終確認日:
どんなときに必要か
短時間労働者・有期雇用労働者を雇い入れるときに使います。対象はパートやアルバイトという呼称では決まりません。フルタイムでも契約期間の定めがあれば対象です。
書面にする必要はあるか
書面要件は二重です。労働基準法15条1項後段は書面交付を原則とし、労働者が希望した場合に限りファクシミリや電子メール等も使えます。特定事項を欠くと、裁判所から10万円以下の過料に処される可能性があります(パートタイム・有期雇用労働法31条)。
記載が必要な事項
書く項目は二階建てです。労働基準法側の書面事項に、昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口の4つが上乗せされます。更新する場合がある有期契約では、更新基準と上限も扱います。
労働契約の期間
期間の定めの有無と始期・終期を書きます。有期契約では、労働契約法の通算契約期間を数える起点にもなります。
更新の基準
有期契約を更新する場合があるときに書きます。通算契約期間や更新回数に上限の定めがあるときは、その上限も含めます(労働基準法施行規則5条1項1号の2)。
就業場所と業務
入社時点の就業場所と業務だけでなく、変更の範囲も書きます。古い雛形は、変更の範囲の記載を欠いていることがあります。
労働時間と休日
始業・終業時刻、所定外労働の有無、休憩、休日、休暇を書きます。二組以上に分けて就業させる場合は、就業時転換も含めます。
賃金の基本事項
賃金の決定、計算、支払方法、締切、支払時期を書きます。労働基準法側の書面事項では、昇給に関する事項は除かれます。
退職と解雇事由
退職に関する事項には、解雇の事由も含めます。退職手続だけを書いた欄では、明示事項として不足します。
特定事項4つ
昇給、退職手当、賞与の有無と相談窓口を書きます。この4つは文書の交付等で明示し、無でも記載します(パートタイム・有期雇用労働法6条1項)。
無期転換申込み事項
その契約期間内に無期転換申込みができる契約では、申込みに関する事項と転換後の労働条件のうち所定の事項を明示します。
無効・効力が否定されやすい条項
落ちやすいのは、正社員用雛形の流用、基準割れの条項、実態と違う記載です。特定事項を欠くと、裁判所から10万円以下の過料に処される可能性があります(パートタイム・有期雇用労働法31条)。
正社員用の雛形を流用し、昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口を欠くと、特定事項の明示を欠きます(パートタイム・有期雇用労働法6条1項)。
6時間超の勤務に休憩を置かない条項や、有給休暇を付与しない条項は、基準に達しない部分が無効となり労働基準法の基準に置き換わります(労働基準法13条)。
無断欠勤や備品破損について、あらかじめ罰金額や賠償額を決める条項は、使用者による違約金や損害賠償額の予定に当たります(労働基準法16条)。
就業場所と業務を入社時点だけにする欄や、更新基準を会社判断だけにする欄は、変更の範囲や更新上限の明示が薄くなります。
実態と違う条件を書くと、明示された労働条件と事実が相違します。この場合、労働者は即時に労働契約を解除できます。
会社都合でPDFメール交付に代える運用は、書面交付の原則から外れます。電子メール等は、労働者が希望し、出力して書面を作れるものに限られます。
満18歳未満の人に大人向け雛形を使うと、契約締結者、賃金受取人、午後10時から午前5時までの使用制限が抜けやすくなります。
欄が埋まっていても、シフトの実態、所定労働時間、就業場所が記載と違う契約書は、事実と異なる労働条件の明示になります。
作成の流れ
手順は、対象者の判定から始めます。次に労働基準法側の書面事項を並べ、特定事項4つ、有期契約の更新欄、無期転換申込み事項、交付方法の順に点検します。
- 1
対象を判定する
呼称ではなく定義で見ます。通常の労働者より1週間の所定労働時間が短い人か、期間の定めのある労働契約を結ぶ人なら対象です。
- 2
書面事項を並べる
契約期間、更新基準、就業場所・業務と変更の範囲、労働時間、賃金、退職を並べます。昇給に関する事項は、この書面事項から除かれます。
- 3
特定事項を足す
昇給、退職手当、賞与の有無と相談窓口を足します。相談窓口は、担当者名、部署、連絡先を書けるように受け皿を決めます。
- 4
有期欄を点検する
更新基準に上限があるなら、通算契約期間や更新回数の上限まで書きます。無期転換申込みができる契約では、申込みに関する事項も追加します。
- 5
交付方法を決める
原則は書面交付です。ファクシミリや電子メール等は、労働者が希望した場合に限ります。電子メール等は出力して書面を作れるものに限られます(労働基準法施行規則5条4項ただし書)。
- 6
説明内容を準備する
事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたとき、講ずる措置の内容を速やかに説明します。省令事項と特定事項は、この説明対象から除かれます。
この書式だけでは足りない場面
書式だけで結論が決まらない場面があります。正社員との賞与・手当の差、反復更新後の雇止め、更新上限の後付け、通算5年に近い契約設計、シフトや時給の引下げです。明示された労働条件が事実と相違するときは、労働者は即時に労働契約を解除でき、労働基準監督署や弁護士に相談できます。
よくある質問
- 労働条件通知書を渡せば、契約書は不要ですか?
- 法律が求めるのは労働条件の明示です。名称は問いませんが、双方署名の契約書は合意内容の証拠になります。
- 更新のたびに作り直しますか?
- 更新は新たな有期労働契約の締結です。そのつど明示し、更新上限があるなら上限も明示します(労働基準法施行規則5条1項1号の2)。
- 賞与なしでも有無を書きますか?
- はい。賞与を支給しない場合も無と書きます。昇給と退職手当も同じく、有無の明示です。
- 正社員と時給や手当が違うと問題ですか?
- 待遇差はパートタイム・有期雇用労働法の射程です。本人が求めた場合、事業主は相違の内容と理由を説明します。
出典
- e-Gov 法令検索:労働基準法(第13条・第15条・第16条)
- e-Gov 法令検索:労働基準法施行規則(第5条)
- e-Gov 法令検索:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(第6条・第8条・第9条・第14条・第16条・第31条)
- e-Gov 法令検索:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則(第2条)
- 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
- 厚生労働省「パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために」
最終確認日: 2026-09-20