パート・アルバイト労働契約書|書面交付が義務づけられている項目と、明示漏れ・無効になりやすい条項

パートタイマー雇用契約書、アルバイト契約書、短時間労働者労働条件通知書、パート雇用契約書、短時間・有期雇用労働者の労働条件通知書 とも呼ばれます。

パート・アルバイト労働契約書は、短時間で働く人や契約期間を定めて働く人を雇い入れるときに、労働条件を書面で示すための契約書です。「雇用契約書」「労働条件通知書」など呼び方はさまざまですが、書くべき中身は法律で決まっています。労働基準法15条1項後段と労働基準法施行規則5条3項・4項による書面交付に加えて、パートタイム・有期雇用労働法6条1項の「特定事項」4項目を文書で明示する義務が重なる点が、正社員向けの契約書との最大の違いです。

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どんなときに必要か

短時間労働者・有期雇用労働者を雇い入れるときに必要です。対象は「パート」「アルバイト」という呼称では決まりません。パートタイム・有期雇用労働法2条1項は、同じ事業主に雇用される通常の労働者と比べて1週間の所定労働時間が短い労働者を短時間労働者とし、同2条2項は期間の定めのある労働契約を締結している労働者を有期雇用労働者としています。フルタイムでも契約期間の定めがあれば対象で、契約更新のたびに新たな締結として明示が必要とされています。

書面にする必要はあるか

法定の書面要件があり、しかも二重です。①労働基準法15条1項後段と同法施行規則5条4項本文により、5条3項の事項は書面の交付が原則です。労働者が希望した場合に限り、ファクシミリを利用してする送信(同項1号)または電子メール等の送信(同項2号。当該労働者が記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る)によることができます。②パートタイム・有期雇用労働法6条1項により、特定事項は文書の交付等で明示する必要があり、同法31条は「第六条第一項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する」と定めています。

必ず入れる事項

  • 労働契約の期間に関する事項

    労働基準法施行規則5条1項1号の事項で、同5条3項により書面で明示すべき事項に含まれます。期間の定めの有無と始期・終期がここで確定し、労働契約法18条1項の通算契約期間を数える起点にもなります。

  • 有期契約を更新する場合の基準

    労働基準法施行規則5条1項1号の2の事項です。同項ただし書により、更新する場合があるものを締結するときに限って必要ですが、通算契約期間または更新回数に上限の定めがあるときは、その上限も含めて明示することとされています。

  • 就業の場所・従事すべき業務と変更の範囲

    労働基準法施行規則5条1項1号の3は、括弧書きで「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。」と定めています。入社時点の勤務地と職種だけを書いた古い雛形は、現行の明示事項を満たしていないおそれがあります。

  • 始業終業時刻・所定外労働の有無・休憩・休日・休暇・就業時転換

    労働基準法施行規則5条1項2号は「始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項」と定め、同5条3項により書面事項です。「所定労働時間を超える労働の有無」や、交替制のときの就業時転換を落とす例が多く見られます。

  • 賃金の決定・計算・支払方法と締切・支払時期

    労働基準法施行規則5条1項3号の事項です。ただし同じ3号のうち「昇給に関する事項」は、同5条3項の括弧書きで書面事項から除かれています。昇給の「有無」の側はパート・有期側で文書明示が必要になる点と混同しないでください。

  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

    労働基準法施行規則5条1項4号の事項です。括弧書きの「解雇の事由を含む。」が落ちている雛形が多く、退職の手続だけを書いたものは明示として足りないおそれがあります。

  • 特定事項4つ(昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口)

    パートタイム・有期雇用労働法6条1項と同法施行規則2条1項1〜4号の事項です。この4つだけは文書の交付等による明示が求められ、落とすと同法31条の10万円以下の過料の対象になります。「無」でも記載が必要です。

  • 無期転換の申込みに関する事項(該当する更新時)

    その契約期間内に労働契約法18条1項の無期転換申込みができる契約では、申込みに関する事項と、転換後の労働条件のうち労働基準法施行規則5条1項1号・1号の3〜11号(4号の2〜11号は定めをしない場合を除く)を明示します(同5条5項)。書面が要るのは申込みの事項と1号・1号の3〜4号(昇給を除く)です(同5条6項)。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 正社員用の労働条件通知書を流用し、昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口の4項目を書いていない雛形。この4項目はパートタイム・有期雇用労働法6条1項と同法施行規則2条1項が定める特定事項で、同法31条は「第六条第一項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する」と定めています。

  • 「6時間を超える勤務なのに休憩を置かない」「年次有給休暇は付与しない」など、労働基準法が定める基準を下回る条件を書いた条項。休憩は労働基準法34条1項が「労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間」と定めるものですので、所定労働時間が6時間以内の契約で休憩を置かないこと自体は基準割れではありません。労働基準法13条は「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による」と定めており、契約書にどう書いても、基準に達しない部分は無効となって労働基準法の基準に置き換わります。パート・アルバイトでも労働基準法の適用は変わりません。

  • 「無断欠勤1回につき罰金○円」「備品を破損したときは○円を支払う」など、あらかじめ金額を決めておく条項。労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めており、同条が禁じる定めに当たります。同条が禁じているのは、あらかじめ金額を決めておくことです。

  • 就業の場所と業務を入社時点の内容だけ書いた欄、更新があり得るのに「会社が判断する」とだけ書く更新欄。労働基準法施行規則5条1項1号の3は「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。」と定め、1号の2は、同項ただし書により更新する場合があるものを締結するときに限り、更新の基準(通算契約期間または更新回数に上限の定めがあるときは当該上限を含む)の明示を求めます。記載が薄いと労働契約法19条2号の更新への期待をめぐる争点になり得ます。

  • 実態と違う条件を書いた契約書。労働基準法施行規則5条2項は「使用者は、法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない」と定め、労働基準法15条2項は労働者が即時に労働契約を解除できるとしています。

  • 会社の都合でPDFをメール送信して交付に代える運用。労働基準法施行規則5条4項本文は書面の交付を原則とし、ファクシミリを利用してする送信(同項1号)と電子メール等の送信(同項2号)は労働者が希望した場合に限られます。電子メール等については、さらに当該労働者が記録を出力することにより書面を作成できるものに限るという限定が付いています。パート・有期の特定事項についても、パートタイム・有期雇用労働法施行規則2条3項が同じ構造を採っています。

  • 満18歳未満の人を雇うのに、大人向けの雛形をそのまま使った契約書。労働基準法58条1項は「親権者又は後見人は、未成年者に代つて労働契約を締結してはならない」と定め、同法59条は「未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代つて受け取つてはならない」としています。また同法61条1項は、満18才に満たない者を午後10時から午前5時までの間に使用することを原則として禁じています(交替制によって使用する満16才以上の男性を除く)。署名欄・振込先・シフトの時間帯がこの3点に触れていないかを確認します。

  • 欄は埋まっているが、書いた内容が実態と違う契約書。労働基準法施行規則5条2項は「明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない」と定め、パートタイム・有期雇用労働法施行規則2条2項も特定事項について同じ定めを置いています。明示された労働条件が事実と相違する場合、労働基準法15条2項により労働者は即時に労働契約を解除できます。シフトの実態と所定労働時間、実際の就業場所と記載の食い違いが典型です。

作成の流れ

  1. 1

    対象になるかを定義で確かめる

    呼称ではなく定義で判断します。パートタイム・有期雇用労働法2条1項の短時間労働者(通常の労働者より1週間の所定労働時間が短い人)か、同2条2項の有期雇用労働者(期間の定めのある労働契約を結んでいる人)に当たれば、6条1項の文書明示が上乗せされます。フルタイム勤務でも期間の定めがあれば対象です。

  2. 2

    労働基準法側の書面事項を並べる

    労働基準法施行規則5条3項が書面事項としているのは、同5条1項1号から4号まで(昇給に関する事項を除く)です。契約期間、更新の基準、就業の場所・業務と変更の範囲、始業終業や所定外労働の有無・休日・就業時転換、賃金、退職(解雇の事由を含む)が並びます。1号の2は更新する場合があるものの締結のときに限られます。

  3. 3

    パート・有期の特定事項4つを足す

    昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、雇用管理の改善等に関する相談窓口の4つです(パートタイム・有期雇用労働法施行規則2条1項)。相談窓口は担当者名や部署、連絡先まで書けるよう、社内の受け皿を先に決めておきます。パートタイム・有期雇用労働法16条は相談に応じ適切に対応するための体制整備を事業主の義務としています(労働基準法16条の賠償予定の禁止とは別の条文です)。

  4. 4

    有期なら更新と無期転換の欄を点検する

    更新の基準に上限の定めがあるなら上限まで書きます。さらに、その契約期間内に労働契約法18条1項の無期転換申込みができることとなる契約を結ぶときは、申込みに関する事項と転換後の労働条件のうち所定の事項を追加で明示することとされています(労働基準法施行規則5条5項・6項)。

  5. 5

    交付の方法を決めて控えを残す

    原則は書面の交付です。ファクシミリと電子メール等は本人が希望した場合に限られ、電子メール等はさらに出力して書面を作成できるものに限られます(労働基準法施行規則5条4項ただし書)。パート・有期の特定事項についてはパートタイム・有期雇用労働法施行規則2条3項が同じ構造です。希望した記録と交付した控えを残しておくと、後日の確認が容易になります。

  6. 6

    雇入れ時の説明を準備する

    パートタイム・有期雇用労働法14条1項は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、同法8条から13条までで措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法15条1項の省令事項と特定事項を除く)について、講ずることとしている措置の内容を説明しなければならないと定めています。書面の交付とは別の義務なので、説明する担当と内容を決めておきます。

専門家に相談したほうがよい場面

次の場面は書式では解決せず、法的な評価が必要です。①正社員との賞与・手当の差について説明を求められた、または不合理だと指摘された(パートタイム・有期雇用労働法8条・9条、同法14条2項の説明義務)。②反復更新してきた人の雇止めや、更新上限の後付けを考えている(労働契約法19条)。③通算5年に近づいた人の契約設計(同18条1項)。④シフトや時給の引下げに同意を求めたい。いずれも社会保険労務士や弁護士にご相談ください。署名を求められた側も、明示された労働条件が事実と相違するときは労働基準法15条2項により即時に労働契約を解除でき、労働基準監督署や弁護士に相談できます。当サイトは書類の作成代行や個別事案の判断は行いません。

よくある質問

労働条件通知書を渡していれば、契約書は作らなくてもよいですか?
法律が求めているのは労働条件の明示であり、書面の名称は問われません。労働基準法施行規則5条4項も「書面の交付」、パートタイム・有期雇用労働法6条1項も「文書の交付その他厚生労働省令で定める方法」と定めるだけです。また民法522条2項により契約の成立自体に書面は不要です。ただし双方が署名した契約書にしておくと、合意した内容の証拠として残ります。
更新のたびに作り直す必要がありますか?
更新は新たな有期労働契約の締結に当たるため、そのつど労働基準法15条1項の明示が必要とされています。更新の基準に通算契約期間や更新回数の上限があるならその上限も(労働基準法施行規則5条1項1号の2)、無期転換申込みができることとなる契約のときは申込みに関する事項も(同5条5項・6項)明示することとされています。
賞与を出さない場合でも「賞与の有無」は書きますか?
はい。パートタイム・有期雇用労働法施行規則2条1項3号の文言は「賞与の有無」で、支給しない場合も「無」と記載して初めて明示したことになります。空欄のままにすると同法6条1項の明示を欠くことになり、同法31条の10万円以下の過料の対象になり得ます。昇給と退職手当も同じく「有無」の明示です。
正社員と時給や手当が違うのは問題になりますか?
待遇の相違そのものはパートタイム・有期雇用労働法8条(不合理な待遇の禁止)と9条(通常の労働者と同視すべき者への差別的取扱いの禁止)の射程です。ただし、ある差が不合理かどうかは職務の内容や変更の範囲などを個別に評価して決まるため、当サイトでは判断しません。同法14条2項により、本人から求めがあれば相違の内容と理由を説明する義務があります。

出典

最終確認日: 2026-08-07

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