在籍証明書・在職証明書(就労証明書)

在職証明書、在籍証明書、就労証明書、雇用証明書、勤務証明書 とも呼ばれます。

在籍証明書・在職証明書は、従業員が現に雇用関係にあることや役職・在籍期間・賃金等を勤務先が事実として証明する書面である。労働基準法には在職中の労働者への交付を義務付ける明文規定がなく、提出先の審査資料として任意に作成される。保育所入所の審査で使う様式は「就労証明書」と呼ばれ、こども家庭庁が標準的な様式を定めている。退職者に交付する労働基準法22条の退職証明書とは、対象となる時点も法的根拠も異なる別の書類であり、様式を取り違えると提出先で受理されないことがある。

最終確認日:

どんなときに必要か

住宅ローンや賃貸借契約の入居審査、保証会社の与信審査、在留資格の申請・更新、転職先への提出等、第三者機関が申請者の雇用状況を確認する場面で必要となる。未就学児を保育所等に入所させる際は、自治体が指定する就労証明書(標準的な様式)の提出を求められることが多い。保育の必要性の認定は、満3歳以上の子どもは子ども・子育て支援法19条2号、満3歳未満の子どもは同法19条3号に基づいて行われ、いずれも就労の事実と就労時間が審査の中心になるため、証明書の記載がそのまま認定結果を左右する。

書面にする必要はあるか

在籍証明書・在職証明書には法定の書面要件はない(証拠目的)。労働基準法上、在職中の労働者に発行を義務付ける明文規定のない任意の証明書であり、主として提出先(金融機関・自治体・出入国在留管理庁等)の審査資料という証拠目的で作成される。これに対し、退職者が使用期間・賃金・退職の事由等を請求した場合の証明書は、労働基準法22条1項が「使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」と定める法定書面であり、同条3項は「前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。」と定める。違反は労働基準法120条1号により30万円以下の罰金の対象となり、両者は法的性質が異なる。就労証明書については、子ども・子育て支援法施行規則2条2項2号が、就労(同規則1条の5第1号)を事由とする保育の必要性の認定の申請に添付する証明書を「原則として様式第一号による。」と定めており、こども家庭庁が示す標準的な様式がこの様式第一号である。ただし同規則2条2項本文のただし書により、市町村は、証明すべき事実を公簿等によって確認できるときは当該書類を省略させることができる。

必ず入れる事項

  • 発行日・証明基準日

    証明内容がいつの時点の在籍状況かを明確にしないと、提出先(保育所・金融機関等)が審査の基準時点を特定できず、証明書として採用されないおそれがあるため。多くの提出先は発行から一定期間内(例:3か月以内)の証明書のみを有効なものとして扱う運用をとっており、発行日の記載が特に重要である。

  • 発行会社の名称・所在地・代表者名

    証明書を発行した事業主体を特定できなければ、提出先が発行元の実在性や連絡先を確認できず、証明書としての信用力を欠くことになるため。提出先が内容を照会する際の連絡先としても機能するため、法人番号や電話番号を併記しておくと、審査担当者による確認がより円滑になる。

  • 証明対象者(従業員本人)の氏名・生年月日等の特定情報

    同姓同名者との混同を避け、証明内容が特定の個人に確実に紐づくことを明らかにするために必要な情報であるため。多くの手続では運転免許証等の本人確認書類と併せて提出されるため、氏名の表記や生年月日が他の提出書類と一致していることも確認しておく必要がある。

  • 在籍期間(入社年月日・証明基準日時点で在籍中である旨)

    提出先が審査で必要とする最も基本的な事実であり、この記載が欠けると証明書がその目的を果たせなくなるため。入社年月日に加え、証明基準日時点でなお雇用契約が継続していることを明記することで、休職中や退職予定であるといった誤解を防ぐことができる。

  • 雇用形態・職種・役職等の業務内容

    融資審査や在留資格審査等では職務の内容や雇用の安定性が判断材料となるため、具体性を欠く記載は証明書としての機能を損なうため。正社員・契約社員・パートタイム等の雇用形態や、無期雇用か有期雇用かの別も、提出先の審査基準に直結することが多い。有期雇用であれば契約期間と更新の有無まで書き分ける。

  • 賃金額・給与形態(月給・年収等)

    労働基準法108条は賃金台帳について「賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」と定めており、在職証明書の賃金額もこの記録に基づく正確な数値である必要があるため。労働基準法施行規則54条1項7号は台帳の記載事項として「基本給、手当その他賃金の種類毎にその額」を挙げており、証明書でも総支給額か基本給か、賞与や通勤手当を含むかを明示しないと、提出先の年収計算がずれる。

  • 所定労働時間・週の勤務日数等(就労証明書の場合)

    保育所等の入所審査基準に直結する項目であり、記載が漏れていると申請自体が受理されない実務上のリスクがあるため。子ども・子育て支援法施行規則1条の5第1号は保育を必要とする事由の一つを「一月において、四十八時間から六十四時間までの範囲内で月を単位に市町村が定める時間以上労働することを常態とすること。」と定めており、多くの自治体は週の就労日数や1日の実働時間に基づいて保育の必要性を点数化している。実態と異なる時間数を記載すると審査結果にも影響しかねない。

  • 証明者(会社側作成者)の氏名及び記名押印又はこれに代わる証明手段

    会社を代表して誰が証明した内容かを明確にし、提出先や本人からの後日の照会・確認に応じられるようにするため。押印を省略し電子的な手段で証明する場合であっても、作成者の所属・役職・氏名は明記し、責任の所在を曖昧にしないことが望ましい。

  • 本人からの交付申請と提出目的・提出先の記録

    証明書には賃金額等の個人情報が含まれるため、誰の求めでどの提出先に向けて作成したかを社内に残す必要があるため。個人情報保護法18条1項は「あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない」と定めており、申請書や同意の記録は、目的の範囲内で作成・交付したことを後から説明する裏付けになる。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 賃金台帳(労働基準法108条)や実際の給与支払実績と異なる金額を記載した場合。証明書の内容が事実と異なる私文書となり、提出先の信頼を損なう。会社が自社の名義で虚偽の内容を書く行為は名義の冒用を伴わないため私文書偽造罪(刑法159条)の構成要件には通常当たらないと解されているが、その証明書が融資等の詐取に使われれば詐欺罪(刑法246条1項)の幇助(刑法62条1項)を問われ得るほか、これを信じた提出先に損害が生じれば民法709条の損害賠償責任の問題となる。依頼者の希望や見込み額に合わせて数値を調整することは避け、常に社内の賃金記録に基づいて作成すべきである。

  • 退職者から求められた証明書を在職証明書のひな形で代用し、労働基準法22条1項が定める使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由等の必要事項を満たさない場合。同条3項は請求者が求めない事項の記入を禁じているため、様式を混同すると法定の要件を満たさない書面になるおそれがある。さらに同条4項は、あらかじめ第三者と謀り労働者の就業を妨げる目的で「第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない」と定めており、再就職を妨げる意図の符号を書き込むことは許されない。労働基準法120条1号は22条1項から3項までの違反に30万円以下の罰金を定めている。

  • 証明基準日を記載せず「現在」等の曖昧な表現のみで作成した場合。いつの時点の在籍状況を証明したものか特定できず、提出先が審査資料として採用できないことがある。特に発行後一定期間内のものに限って有効とする運用の提出先では、発行日と基準日の双方が明確でないと、再度の発行を求められ手続が遅延する原因になる。

  • 発行者(会社)の特定情報や証明権限者の記名・押印を欠いた場合。誰が証明の責任を負っているか不明となり、提出先の審査担当者が真正性を確認できず、再提出を求められることがある。特に指定様式がある就労証明書では、証明者の押印欄が必須項目として設けられていることが多く、空欄のまま提出すると受理されない自治体もある。

  • 本人の同意なく、提出先が求めていない退職予定の有無や人事評価等の機微な情報まで記載した場合。目的外の個人情報記載は本人の不利益につながるおそれがあるほか、労働基準法22条3項が定める「労働者の請求しない事項を記入してはならない」という考え方にも反する。個人情報保護法18条1項も、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことを禁じている。

  • 保育所等の就労証明書で、認定の下限に届かせるために実態より長い就労時間を記載した場合。子ども・子育て支援法施行規則1条の5第1号は「一月において、四十八時間から六十四時間までの範囲内で月を単位に市町村が定める時間以上労働することを常態とすること。」を保育を必要とする事由としており、記載が実態と異なれば認定の前提を欠くことになる。市町村が勤務実態を確認した結果、認定の取消しや利用調整のやり直しに至り、保護者と会社の双方が不利益を受けるおそれがある。

  • 本人の求めや同意がないまま、証明書を提出先の金融機関や自治体へ会社が直接送付した場合。証明書は賃金額を含む個人データであり、個人情報保護法27条1項は「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」と定めている(法令に基づく場合等の除外は別に定められている)。自治体の電子申請で会社が直接提出する運用をとるときも、本人の申請と同意を書面等で確認したうえで、送付先と送付方法を記録しておく必要がある。

作成の流れ

  1. 1

    提出先が求める書式・記載事項と提出期限を確認する

    保育所等の自治体窓口、金融機関、出入国在留管理庁など、提出先ごとに指定様式や必須記載事項(雇用期間・週の勤務日数の下限等)が異なる。就労証明書についてはこども家庭庁が定める標準的な様式が広く用いられているため、まず提出先所定のフォーマットや記入要領を確認してから作成に着手する。保育所の入所申込みのように締切が決まっている手続では、提出期限から逆算して社内の作成・決裁の期日を先に押さえる。

  2. 2

    従業員本人からの交付申請を受け付ける

    通常は在籍中の従業員本人からの申請に基づき、人事労務担当部署が作成する。申請の際に提出先・提出目的・希望する記載事項を確認しておくと、後の記載漏れや再発行の手間を防ぐことができる。指定様式がある場合は、従業員に原本の様式を提出してもらうと転記ミスを避けやすい。申請日・提出先・目的を記録に残しておけば、個人情報を目的の範囲内で取り扱ったことを後から説明できる。

  3. 3

    賃金台帳・労働者名簿等の社内記録と照合する

    在籍期間・賃金額・職種等の記載事項は、労働基準法108条に基づき調製された賃金台帳や、労働基準法107条1項に基づく労働者名簿と突き合わせ、実態と一致する数値・事実のみを記載する。労働者名簿には労働基準法施行規則53条1項により「従事する業務の種類」「雇入の年月日」等を記入することとされているため、入社年月日や職種の裏取りに使える。ただし同条2項は「常時三十人未満の労働者を使用する事業においては、前項第三号に掲げる事項を記入することを要しない。」と定めており、その規模の事業場では職種欄が空のことがあるため、職種は雇用契約書や辞令で確認する。記憶や見込みで記入することは避け、直近の給与改定や異動があった場合は最新の記録を反映させる。

  4. 4

    証明権限を持つ担当者が内容を確認し記名押印する

    人事部門の責任者や代表者等、会社を代表して証明する権限を持つ者が最終的に内容を確認し、発行日・証明基準日を明記したうえで交付する。押印に代えて社内で定めた電子的な証明手段を用いる場合も、権限者による確認の手順は省略しない。指定様式に証明者欄がある場合は、様式の記入要領が求める記載単位(部署名まで書くか等)に合わせる。

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    本人に交付し、提出先への提出方法を確認する

    交付の相手方は原則として申請した本人であり、会社が提出先へ直接送付するのは本人の求めと同意がある場合に限る。自治体の電子申請や提出先が指定するオンライン様式を使う場合は、受け付けられるファイル形式や電子署名・押印の要否をあらかじめ確認しておく。交付日と交付方法(手交・郵送・電子)を記録に残しておくと、後日の照会や再発行依頼に答えやすい。

  6. 6

    交付後は控えを保管し、内容照会に備える

    発行した証明書の写しを社内に保管しておくことで、提出先からの内容照会や、同一内容での再発行依頼に速やかに対応できる。証明の裏付けとなる労働者名簿・賃金台帳については、労働基準法109条が「五年間保存しなければならない」と定め、労働基準法附則143条1項により当分の間は三年間に読み替えられている。個人情報を含む書類であるため、保管期間や廃棄の方法についても、社内の個人情報管理規程に沿って取り扱う。

専門家に相談したほうがよい場面

当社は行政書士・社会保険労務士等の士業資格者を擁しておらず、在籍証明書・在職証明書・就労証明書の作成受託や代理作成は行わない。本ガイドは、利用者自身が自社の賃金台帳等の記録に基づいて証明書を編集・発行することを前提とした支援ツールであり、事実と異なる証明書は作成しない。賃金額や在籍期間の記載に疑義がある場合、退職者からの証明書請求(労働基準法22条)への対応、労働者名簿・賃金台帳の整備(労働基準法107条・108条)、指定様式の記入方法や様式の適法性等に不安がある場合は、社会保険労務士や弁護士に相談することを推奨する。既に個別の労使紛争に発展しているときは、早い段階で専門家の助言を受けるべきである。

よくある質問

在職証明書と退職証明書はどう違いますか。
在職証明書は現に雇用関係が継続していることを証明する書面で、発行を義務付ける法律上の規定はなく、会社が任意に作成するものである。これに対し退職証明書は、労働基準法22条により、退職した労働者が使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由について証明を請求した場合に、使用者が遅滞なく交付しなければならない法定の証明書であり、交付を怠ると労働基準法120条1号により30万円以下の罰金の対象となり得る。なお、この請求権は労働基準法115条にいう賃金以外の請求権として、行使することができる時から2年間行わなければ時効によって消滅するとされている。用途と法的根拠が異なるため、提出先が求めている書類がどちらかを事前に確認する必要がある。
就労証明書は保育所の入所申込み以外にも使えますか。
就労証明書は保育所等の入所審査で用いられることが多い名称で、こども家庭庁が標準的な様式を定めている。記載内容(在籍・勤務時間・賃金等)は一般の在職証明書と共通する部分が多いため、住宅ローン審査や賃貸借契約の入居審査等、他の用途に準用できる場合もある。ただし提出先ごとに指定様式や必須記載事項が異なるため、指定様式がある場合はそれに従うべきである。保育の必要性の認定では、子ども・子育て支援法施行規則1条の5第1号が定める「一月において、四十八時間から六十四時間までの範囲内で月を単位に市町村が定める時間以上労働することを常態とすること。」に当たるかが審査されるため、就労時間の欄は市町村が定める時間との関係で特に重要になる。
会社は在籍証明書・在職証明書の発行を拒否できますか。
在籍中の従業員に対する在職証明書の発行には、労働基準法22条のような明文の義務規定がないため、会社が個別の事情により発行を控える余地はあり得る。もっとも、実務上は多くの企業が就業規則や慣行に基づき発行に応じており、合理的理由のない拒否は労働者との信頼関係を損なうおそれがある。就業規則に発行手続を定めている場合や、労働契約に付随する配慮が求められる場面では、拒否が争いになる可能性も否定できない。発行の要否や手続を就業規則等であらかじめ明確にしておくことが望ましい。
証明書の記載内容が事実と異なっていた場合、誰が責任を負いますか。
会社側の担当者が誤って事実と異なる内容を記載し、それを信頼した提出先(金融機関等)が融資や契約等の判断をして損害が生じた場合、民法709条の不法行為として会社が説明責任や損害賠償責任を問われる可能性がある。従業員の依頼に応じて意図的に実態と異なる賃金額や在籍状況を記載した場合、会社名義で作成する以上は私文書偽造罪(刑法159条)には通常当たらないと解されているが、その書面が融資の詐取に使われれば詐欺罪の幇助を問われ得る。逆に、従業員が会社に無断で会社の印章や代表者の署名を使って会社名義の証明書を作り上げれば、事実証明に関する文書の偽造として刑法159条1項1号にあたり、同項の法定刑は3月以上5年以下の拘禁刑である(印章・署名を用いずに偽造した場合でも、同条3項により1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金の対象となる)。常に賃金台帳等の社内記録に基づいた正確な記載を徹底する必要がある。
押印は必要ですか。電子データで交付してもよいですか。
在籍証明書・在職証明書に押印を義務付ける法令上の規定はなく、労働基準法22条の証明書についても押印を求める明文はない。もっとも、自治体の就労証明書のように指定様式に証明者の押印欄が設けられている場合は、様式の記入要領に従う必要がある。近年は押印欄を省略した様式やオンライン提出に対応する自治体も増えているため、提出先が電子データを受け付けるか、受け付ける場合のファイル形式や電子署名の要否を事前に確認する。押印を省略するときでも、証明者の所属・役職・氏名と発行日は必ず記載し、責任の所在を明確にしておく。

出典

最終確認日: 2026-08-20

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