立替経費精算書

経費精算書、立替金精算書、仮払経費精算書、立替金請求書 とも呼ばれます。

立替経費精算書は、従業員や役員が業務のために自己負担で支払った旅費・交通費・消耗品費などの費用について、会社に対して返還(精算)を求める際に使用する社内書類です。支出日・支出先・金額・内容を記載し、領収書等の証憑を添付して申請します。法令が書式そのものを定めているわけではなく、会社の経理規程や就業規則に基づいて運用されるのが一般的です。ただし、返還を求める法的な足場は立場によって異なります。取締役等の役員は、会社法330条が「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。」と定めるため、民法650条1項の「受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。」が根拠になります。従業員は雇用契約であり同項が当然に適用されるわけではなく、労働契約・就業規則・経理規程の解釈によって返還の要否と範囲が決まります。

最終確認日:

どんなときに必要か

従業員や役員が、出張旅費、交通費、消耗品費、接待費用など業務に必要な支出を立て替えて支払った場合に、会社へその金額の返還を求める場面で作成します。経費精算の締め日ごとに定期的に提出するほか、少額の立替が生じた都度提出する運用も一般的です。高額の支出が見込まれる出張などでは、立て替えるのではなく仮払を受け、帰任後に仮払額との差額を精算する運用も広く用いられます(委任の場面については、民法649条が「委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。」と定めています)。退職・異動・部署変更の直前も、未精算分を洗い出して提出すべき典型的な場面です。

書面にする必要はあるか

立替経費精算書という書面の作成・様式を直接義務付ける法令規定はなく、法定の書面要件ではありません(証拠目的の書面です)。もっとも、支出の事実と金額を証する証拠書類として、また会社の内部統制・経理処理上重要な役割を持ちます。加えて、支出が労働の対償として支払われる賃金(労働基準法11条)には当たらない実費弁償である点を明確にする記録としても機能し、賃金台帳(同法108条)や税務上の記録と区別して保存することが実務上望まれます。書面の義務が明文で問題になるのはむしろ社内規程の側で、労働基準法89条は「常時十人以上の労働者を使用する使用者」に就業規則の作成・届出を義務付け、その5号として「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」を挙げています(常時十人未満の事業場には同条の作成義務自体がありません)。どの費用を会社負担とし、どの範囲を労働者の自己負担とするかを規程で明示しておくことが、精算の可否をめぐる争いを避ける要点になります。

必ず入れる事項

  • 精算対象者の氏名・所属部署

    誰が支出したかを特定できなければ、会社が金銭を返還すべき相手が確定せず、精算処理を進めることができません。氏名・所属・社員番号等を明記し、後日の照会にも対応できるようにしておく必要があります。実費弁償は労働の対償である賃金(労働基準法11条)ではないため、給与の支給対象者リストとは別に、誰にいくら返還したかを追跡できる形で残しておくことが重要です。

  • 支出日・支出先(取引先名)

    いつ・どこで支出が発生したかが分からなければ、業務との関連性や金額の妥当性を確認できません。支出日は領収書の日付と一致させ、支出先は正式名称で記載することが求められます。会社が仕入税額控除の適用を受ける場合、消費税法30条8項1号は帳簿の記載事項として「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」と「課税仕入れを行つた年月日」を挙げており、精算書の記載がその基礎資料になります。

  • 支出内容・勘定科目(摘要)

    何のための支出かが記載されていないと、会社は業務上必要な支出かどうかを判断できず、経理処理上どの勘定科目に計上すべきかも確定できません。具体的な用途を簡潔に記載します。消費税法30条8項1号は帳簿の記載事項として「課税仕入れに係る資産又は役務の内容」も挙げており、軽減対象課税資産の譲渡等に係るものであればその旨が分かる書き方にしておくと、経理側での転記漏れを防げます。

  • 金額(税込)・消費税率区分

    精算すべき金額そのものであり、誤りがあれば過不足の返還につながります。軽減税率対象品目が含まれる場合は税率ごとに区分して記載しないと、会社の税務処理に支障が生じます。適格請求書については、消費税法57条の4第1項4号が、税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率の記載を求めているため、精算書側も同じ区分で拾える様式にしておくと突合が容易です。

  • 出張の場合の旅程(出発日・帰着日、出発地・目的地、訪問先、用務)

    所得税法9条1項4号は、勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行等について、「その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの」を非課税所得としています。通常必要と認められる範囲かどうかは旅程と用務から判断されるため、これらの記載を欠くと、支給額が実費弁償なのか給与課税の対象なのかを会社が説明できなくなります。

  • 領収書・レシート等の添付

    支出の事実を裏付ける一次証憑であり、これがなければ精算書自体が単なる自己申告にとどまります。宛名・日付・金額・但し書きが明確なものを原本で添付することが望まれます。領収書等は、青色申告法人については法人税法施行規則59条1項3号、それ以外の普通法人等については同規則67条1項1号にいう「取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」として会社側の保存対象になるため、精算後に個人で処分してよいかは経理規程で確認します。

  • 承認者(上長・経理担当者)の確認欄

    支出が業務上必要なものであることを組織として確認したことを示す記録であり、内部統制上、承認を経ない支出の精算は経理処理に進めないのが一般的な運用です。決裁権限者や承認ルートを明確にしておくことも重要です。承認欄が空欄のまま支払われると、後日の監査で誰が業務関連性を判断したのかを示す記録が残らず、支出の妥当性を会社として説明できなくなります。

  • 支払方法・振込先口座、精算日

    会社がいつ・どの口座へ返還するかを明確にし、支払漏れや二重払いを防ぐために必要です。給与とは別建てで管理し、賃金台帳(労働基準法108条)上の賃金の記載と混同しないようにする点にも関わります。給与振込と合算する運用をとる場合でも、支給明細上で実費弁償分を区別しておかないと、賃金として支払われたのか精算金なのかが事後に判別できなくなります。

  • 適格請求書発行事業者の登録番号等の記載欄(対象取引の場合)

    支出先が発行した領収書等にインボイス制度上必要な記載事項が含まれているかを確認するための欄です。消費税法57条の4第1項1号は、適格請求書の記載事項として「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」を挙げています。ただし記載内容が会社の仕入税額控除に影響するかどうかの個別判断は、税理士等の専門家への相談が必要な事項です。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 領収書の宛名が「上様」や空欄のまま、あるいは領収書自体が紛失している場合、支出の事実を客観的に確認する手段がなく、会社が精算(返還)に応じない、または税務調査等で経費として認められないおそれがあります。出金伝票や自認書のみでの代替は、会社の経理規程で認められている場合に限られます。なお、税込3万円未満の公共交通機関による旅客の運送など、消費税法施行令49条1項1号が定める課税仕入れは法定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の対象とされますが、これは請求書等の交付を受けることが困難な取引に限った例外であり、領収書を受け取れる取引一般には及びません。

  • 私的な支出や業務との関連性が不明確な支出を計上すると、会社が精算を拒否できるだけでなく、税務上も給与(現物給与)や交際費など別の性質のものとして扱われ、想定外の課税関係や源泉徴収漏れの指摘を受ける可能性があります。国税庁も、給与所得となるものの範囲を示す取扱いを公表しており、業務との関連性を説明できない支出は実費弁償として扱われにくくなります。用途・相手方・目的を具体的に記載しておくことが重要です。

  • 支出日から精算書の提出までの期間が、就業規則や経理規程で定められた提出期限(例えば翌月○日までなど)を超えている場合、法令上の期限ではなくとも、社内規程に基づいて精算そのものを拒否されることがあります。私法上の債権としては、民法166条1項1号が「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。」に時効消滅すると定めていますが、時効期間内であっても社内手続としての精算を拒まれる不利益は残ります。規程上の期限や締め日を事前に確認し、余裕をもって提出してください。

  • 承認者の決裁(押印・電子承認)を経ないまま提出・処理された精算書は、内部統制上の要件を欠くため、経理部門が支払処理を進められず、後日の監査や税務調査で証憑不備を指摘される原因にもなります。緊急を要する場合でも、事後承認の手続を明確にしておくことが望まれます。承認の記録が残らないと、後から支出の業務関連性を争われた際に、会社としての判断経過を示す資料がない状態に陥ります。

  • インボイス制度に対応した記載事項(登録番号等)を欠く領収書のみで処理を進めると、会社側の仕入税額控除の可否に影響し得ます。他方で、消費税法施行規則15条の4第2号は、役員又は使用人に対して支給する出張旅費等のうち「その旅行について通常必要であると認められる部分に係る課税仕入れ」を、請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れとして帳簿保存のみで足りる取扱いの対象としています。どの取引がこの例外に当たるかは個々の取引の性質による税務上の論点であり、当サイトでは様式・記載事項の説明にとどめ、可否の判定は税理士へ確認することを推奨します。

  • 出張日当や定額の旅費を実費と無関係に一律支給し、その額が実際の支出を大きく上回っている場合、所得税法9条1項4号が非課税とする「その旅行について通常必要であると認められるもの」の範囲を超える部分について、給与として課税されるべきものと整理される可能性があります。その場合、会社側に源泉徴収漏れが生じ、受け取った側にも追加の課税関係が生じ得ます。旅程と実費を記載し、規程上の日当と実費の対応関係を説明できるようにしておくことが重要です。

  • 領収書をメール添付のPDFやWeb明細のダウンロードで受け取ったにもかかわらず、紙に印刷して電子データを削除する運用は、保存義務の観点から不十分になります。電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律7条は、「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。」と定めています。電子で受け取った証憑は電子のまま会社の定める方法で提出・保存してください。

作成の流れ

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    立替の前に、会社負担の範囲と手続を規程で確認する

    立て替える前に、経理規程・出張旅費規程・就業規則で、その支出が会社負担とされているか、上限額や事前申請の要否、提出期限がどう定められているかを確認します。高額の支出が見込まれる場合は、立替ではなく仮払を申請できることも多く、事前に相談しておくと自己資金の負担と精算漏れの双方を避けられます。事前承認が必要な支出を無承認で行うと、後から精算を断られる典型的な原因になります。

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    立替時に証憑を必ず受領・保管する

    業務のために費用を立て替えて支払った時点で、宛名・日付・金額・但し書きが記載された領収書やレシートを必ず受け取り、失くさないよう保管します。宛名が「上様」の場合は、可能であれば会社の正式名称での発行を依頼しておくと後の手続きがスムーズです。電子メールやWeb明細で受け取った場合は、印刷して終わりにせず、受け取った電子データ自体を残しておきます。

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    精算書に必要事項を記入する

    氏名・所属、支出日、支出先、支出内容、金額、勘定科目など、会社所定の様式に沿って必要事項を記入します。複数の支出がある場合は、支出ごとに行を分けて明細を作成し、合計金額を明示します。出張の場合は出発日・帰着日、訪問先、用務も併せて記載します。記載内容と添付する領収書の内容が一致しているか、税率区分に誤りがないかも提出前に確認します。

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    証憑書類を添付する

    受領した領収書・レシート等の原本(または会社の運用に従い写し)を精算書に貼付・添付します。電子ワークフローの場合は、スキャンまたは撮影した画像データを所定の方法でアップロードします。メール添付のPDF等で受け取った証憑は、電子取引の取引情報に係る電磁的記録として、会社が定める方法で電子データのまま提出します。原本を提出する場合は、提出後の控えを手元に残しておくと安心です。

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    承認者の確認を受け、経理部門へ提出する

    直属の上長や経理担当者に精算書と証憑を提出し、業務上必要な支出であることの確認(承認)を受けます。承認手続を経ていない精算書は、会社の内部統制上、支払処理に進めないのが一般的です。差し戻しがあった場合は、指摘事項を確認し修正のうえ再提出します。承認済みの精算書を経理部門へ提出したら、振込先口座と金額に相違がないかを支払前に確認しておきます。

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    支払を受け、書類を保存する

    会社が定める支払サイクル(給与とは別の振込や、給与と合算した振込など)に従って立替金の返還を受け、入金額と申請額が一致しているかを照合します。精算書及び添付した証憑は、会社側では法人税法施行規則59条1項3号(青色申告法人以外の普通法人等は同規則67条1項1号・2項)の書類として起算日から原則7年間、労働関係に関する重要な書類に当たる場合は労働基準法109条(同法附則143条1項により当分の間3年間)に従って保存されます。個人側でも、控えを会社の規程が定める期間は残しておくと照会に対応できます。

専門家に相談したほうがよい場面

当社は税理士・社会保険労務士・弁護士等の士業資格者を擁しておらず、書類作成の受託・代理・代行や、個別の税務判断・法的判断は行いません。本ガイドは、利用者自身による編集・提出を前提とした支援情報として、様式・記載事項に関する一般的な説明にとどまります。また、精算書は支出の事実を申告する書類であるため、実際の支出と異なる内容(架空計上や水増し)の書類を作成することはできません。インボイス制度上の記載要件や仕入税額控除の可否、給与・交際費等への該当性判断は税理士に、就業規則・経理規程の整備や立替経費の取扱いを巡る労使間の争いは社会保険労務士・弁護士に、それぞれ具体的な資料をもとに相談することをおすすめします。

よくある質問

立替経費精算書の作成や押印は、法律上必要ですか。
立替経費精算書という書面の作成そのものを直接義務付ける法令規定はなく、押印を必須とする規定もありません。電子申請・電子承認ワークフローによる運用も広く行われています。ただし、会社の就業規則や経理規程で提出書式・提出期限・添付書類・承認者の押印や電子決裁の手続が定められている場合は、その規程に従って作成・提出する必要があります。様式は各社の運用に委ねられていますが、証拠書類として、また内部統制上重要な役割を持つ書類である点は変わりません。
領収書を紛失した場合、精算してもらえますか。
領収書等の一次証憑がない場合、支出の事実を客観的に確認する手段が乏しくなるため、会社が精算に応じない可能性があります。会社によっては、出金伝票や購入先への再発行依頼、クレジットカードの利用明細やICカードの利用履歴などの代替書類での対応を経理規程上認めている場合もありますが、可否は会社の規程・運用次第です。代替書類には支出日・支出先・金額・用途が分かる情報を揃え、あらかじめ経理担当者に相談することをおすすめします。
立替経費の返還は、労働基準法上の賃金として扱われますか。
労働基準法11条は、賃金を「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義しています。立替経費の返還(実費弁償)は労働の対償として支払われるものではないため、同法上の賃金には通常該当しないと解されています。そのため同法24条が定める賃金の全額払等の規制が直接及ぶかは支払の実態によりますが、実務上は給与とは別建てで管理し、賃金台帳(同法108条)上も区別して記録することが望ましいとされています。逆に、実費と無関係な定額支給が続く場合は、賃金や給与課税の対象と整理される余地が生じます。
領収書にインボイス制度上の登録番号がない場合、精算できませんか。
登録番号の有無は、主に会社側の消費税の仕入税額控除に関わる論点であり、精算書の様式上の記載事項として登録番号欄を設けている会社もあります。消費税法施行令49条1項1号は税込3万円未満の公共交通機関による旅客の運送等を、消費税法施行規則15条の4第2号は役員又は使用人に支給する出張旅費等のうち通常必要と認められる部分を、帳簿の保存のみで仕入税額控除の対象とする取扱いの対象としています。個々の取引についてこれらに当たるか、控除の可否をどう判断するかは取引の性質によって異なる税務上の論点ですので、具体的な判断は税理士等の専門家にご確認ください。
退職するのですが、未精算の立替金はいつまでに返してもらえますか。
労働基準法23条1項は、「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」と定めています。立替金の精算が同項にいう金品の返還に当たるかは支払の実態により見解が分かれ得ますが、退職時に清算を求める趣旨は共通します。実務上は、退職日までに未精算分を洗い出し、精算書と証憑を提出したうえで、返還時期と振込先を書面やメールで確認しておくことが有効です。

出典

最終確認日: 2026-08-20

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