出張申請書・旅費精算書

出張旅費精算書、旅費精算書、出張申請書、出張旅費規程、出張精算書 とも呼ばれます。

出張申請書は従業員が出張前に目的・行先・期間等を明示して上長の承認を得るための社内文書、旅費精算書は出張後に交通費・宿泊費・日当等の実費や定額支給分をまとめて精算するための社内文書です。いずれも法令で書式が定められた書類ではなく、会社の出張旅費規程に基づき運用される内部管理・証憑書類ですが、所得税法9条1項4号が非課税とする「その旅行について通常必要であると認められるもの」に当たるかを裏付け、支給額が非課税の実費弁償か課税対象の給与かを分ける根拠資料として、また消費税の仕入税額控除に必要な帳簿・請求書等の保存を支える資料として機能します。

最終確認日:

どんなときに必要か

従業員を国内外の出張に派遣する際、事前に業務命令として旅費・日当の予算枠を確定し上長の承認を得たい場合、また出張後に立て替えた交通費・宿泊費や規程上の日当を清算し会社から支給・精算したい場合に用います。仮払金がある場合は差額精算にも使います。加えて、出張中の労働時間を労働基準法38条の2の事業場外みなし労働時間制で処理している会社では、出張の指示内容と想定行程を記録した申請書が、みなしの前提となる事実を示す社内資料にもなります。

書面にする必要はあるか

出張申請書・旅費精算書そのものの作成を義務付ける規定は、労働基準法にも所得税法にも法人税法にもなく、法定の書面要件はありません(証拠目的の任意書類です)。実務上は会社が就業規則の一部として定める出張旅費規程に基づく社内書類で、①業務命令としての出張であることの決裁記録、②支給額が所得税法上非課税となる実費弁償(給与ではない)であることを示す証憑、という二つの証拠目的で作成されます。周辺には保存義務があり、法人税法施行規則59条1項は青色申告法人の帳簿書類を「起算日から七年間」保存すべきものとしてその3号に領収書を挙げ、消費税法30条7項は帳簿及び請求書等を「保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。」と定めます。書式・保存が不備だと給与と認定されるおそれがあります。

必ず入れる事項

  • 出張の目的・行先・期間

    出張が業務遂行のために必要であったことを示す最も基本的な情報。所得税法9条1項4号は勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行を非課税旅費の前提としているため、目的や行先が曖昧だと、支給された旅費・日当が業務との関連性を欠くとして実費弁償性を否定され、給与相当と扱われるリスクの起点になる。

  • 出張者の氏名・所属・職位

    支給対象者を特定し、社内の決裁・経理処理の対象を明確にするための項目。旅費が給与と認定された場合は労働基準法108条の賃金台帳記載事項とも関連し得るほか、労働基準法109条が5年間(附則143条1項により当分の間は3年間)の保存を求める労働関係の重要書類を整理する際の索引にもなる。

  • 交通費・宿泊費の実費区分と証憑(領収書・乗車券等)

    実際に要した費用であることを裏付ける最重要項目。証憑を欠くと実費弁償の立証ができず、税務調査等で給与認定を受ける可能性が高まる。消費税法30条7項は帳簿及び請求書等の保存がない課税仕入れの税額について仕入税額控除を適用しないと定めるため、原本または写しの添付欄を設ける。

  • 日当(定額支給分)の金額・算定区分

    出張旅費規程に基づく定額支給の根拠を明示する項目。所得税基本通達9-3は、非課税とされる旅費の範囲の判定に当たり、支給額が役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準で計算されたものかを勘案するとしている。金額の個別判断は税理士法が規律する税務相談領域に接するため、規程上の区分と算定根拠を記録に残す。

  • 決裁者(上長)の承認欄・承認日

    出張が就業規則・出張旅費規程に基づく正当な業務命令であったことを社内的に立証する記録。承認欄・承認日を欠くと、出張自体の業務関連性や決裁の適正さが事後的に争われた場合に裏付けとなる記録がないことになる。

  • 仮払金額・精算日・差額精算方法

    仮払を行った場合の対応関係を明確にし、過不足なく清算するための項目。長期間精算せず放置すると貸付金的性格を帯び、労働基準法24条の賃金全額払い原則との関係でも整理を要する場合がある。

  • 精算期限・提出先(経理部門)

    適時に精算処理を行う体制を社内的に担保するための項目。精算期限や提出先を定めずに運用すると精算そのものが遅延・放置されやすくなり、領収書等の証憑が散逸して実費弁償性の立証が難しくなる。

  • 適用した出張旅費規程の条項・区分(役職別・国内/海外別)

    支給額がどの規程条項に基づくかを精算書の上で特定できるようにする項目。所得税基本通達9-3は、同業種・同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるかも勘案するとしており、規程との対応関係が精算書に現れていないと支給根拠を後から復元できず、説明資料としての価値が下がる。

  • 消費税の課税区分と出張旅費等特例の適用有無を記す欄

    消費税法施行令49条1項1号は、帳簿のみの保存で仕入税額控除を受ける場合に、帳簿へ同号イからニまでに掲げる課税仕入れのいずれかに該当する旨及び当該課税仕入れの相手方の住所又は所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く。)を記載することを求めている。もっとも、消費税法施行規則15条の4第2号が定める「その旅行について通常必要であると認められる部分に係る課税仕入れ」の相手方である使用人等は、令和5年国税庁告示第26号第2項第3号(令和6年国税庁告示第10号による改正後は同項第4号)でこの「国税庁長官が指定する者」に指定されているため、住所又は所在地の記載までは要しない。精算書に出張者の住所欄を設ける必要はなく、消費税法施行規則15条の4第2号の出張旅費等として処理するのか適格請求書を保存するのかを区別する欄を設ける。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 出張旅費規程が未整備のまま場当たり的に日当・旅費を支給していると、税務上その支給が実費弁償ではなく給与と認定されるリスクが生じる。所得税基本通達9-4は、通常必要とされる費用の範囲を超える部分の金額を、旅行の区分に応じた所得の収入金額に算入するとしている。認定された場合は源泉徴収義務が及び、追徴課税・延滞税の対象となり得る。ただし具体的な支給額が社会通念上相当かどうかの判断自体は税理士法が規律する税務相談領域であり、本ガイドで個別の適否を判定するものではない。

  • 出張旅費規程を新設・改定したのに、労働基準法89条の届出、労働基準法90条の意見聴取、労働基準法106条1項の周知を欠いたまま運用している例がある。労働基準法89条は「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。」と定め、その10号は「当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」を挙げているため、日当額の改定も届出の対象になる。労働基準法90条2項は届出について「前項の意見を記した書面を添付しなければならない。」とし、労働基準法106条1項は就業規則を労働者に周知させることを求めている。届出も意見聴取も周知もされていない規程は、支給額の根拠として社内で争われたときの拠り所が弱くなる。

  • 領収書等の証憑を保存せず、出張旅費規程が定める定額の日当・旅費のみを支給し続けると、実際に要した費用であるという実費弁償の裏付けを欠くことになる。所得税法9条1項4号が非課税とするのは「その旅行について通常必要であると認められるもの」であり、通常必要性を示す資料が残っていなければ、税務調査等の場面で当該支給が給与に当たると認定される可能性が高まる。証憑の添付・保存欄を精算書にあらかじめ設けておくことが望ましい。

  • 旅費精算書に決裁欄・承認履歴がない場合、当該出張が上長の承認を経た正当な業務命令に基づくものであったことの社内的な立証が困難になる。決裁記録の欠如は、経費処理の適正性そのものが後日争われる原因になるだけでなく、精算金額の妥当性を確認する内部統制の機能不全にもつながる。

  • 所得税法231条1項は、給与等の支払をする者につき「支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。」と定めている。出張旅費が給与と認定された場合はこの交付義務も及ぶため、実費弁償として処理してきた運用が事後的に覆ると事務負担が生じる点に注意が必要である。

  • 労働基準法108条は「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。」と定めている。旅費・日当が給与と認定された場合はこの賃金台帳記載義務の対象にもなり得る。労働基準法109条は労働者名簿・賃金台帳等の重要書類を「五年間保存しなければならない。」とし、附則143条1項により当分の間は3年間とされている。

  • 仮払金の精算が長期間未了のまま放置されると、実質的に会社から従業員への貸付金的性格を帯びる。労働基準法24条1項は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めており、精算処理と賃金からの控除方法との関係を整理せずに運用すると、この全額払い原則との抵触が問題になり得る。労働基準法24条1項ただし書は、労使協定があれば賃金の一部を控除して支払うことができるとしており、未精算の仮払金を給与から差し引くなら書面による協定の有無を先に確認する必要がある。

  • 従業員が予約サイトやメールで受け取った領収書・利用明細を紙に印刷し、元の電子データを破棄する運用には注意を要する。電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)7条は、電子取引を行った場合に「当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。」と定めており、紙の出力のみでは電子取引の保存として不足が生じ得る。旅費精算では電子で受領した証憑を電磁的記録のまま保存する経路を分けておく。

作成の流れ

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    出張旅費規程の確認・整備

    出張申請書・旅費精算書は単独の書式として運用するのではなく、就業規則の一部または付属規程である出張旅費規程を土台として作成する。規程には出張の区分、交通費・宿泊費の実費精算方法、日当の定額区分などをあらかじめ定めておく。所得税基本通達9-3が、役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものかを勘案するとしている点を踏まえ、役職区分ごとの金額と適用範囲を規程本文で確定しておく。出張旅費規程は労働基準法89条10号の「当該事業場の労働者のすべてに適用される定め」に当たり、同条は「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。」と定めるため、日当額の改定時も届出が必要になる。届出前に労働基準法90条1項の意見聴取(過半数労働組合または過半数代表者)を行い、同条2項により「前項の意見を記した書面を添付しなければならない。」とされている。さらに労働基準法106条1項は、就業規則を掲示・備付け・書面交付その他の厚生労働省令で定める方法によって労働者に周知させることを求めている。届出・意見聴取・周知の3点まで済ませてから運用を始める。

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    出張申請書の作成・提出・承認

    出張前に、出張者が目的・行先・期間・利用予定の交通機関等を記載して出張申請書を作成し、上長の承認を受ける。承認を経ることで、当該出張が正当な業務命令に基づくものであることの記録が社内に残り、後日の精算処理の前提にもなる。労働基準法38条の2第1項は「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と定めており、みなしを前提にする会社では指示内容と想定行程も申請書に残しておく。

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    出張の実施と証憑の保管

    出張中に生じた交通費・宿泊費等の領収書、乗車券の半券、請求書等の証憑を保管する。これらは支給額が実費弁償であることを裏付ける資料となるため、出張者自身が紛失しないよう管理し、帰社後速やかに提出できる状態にしておく。予約サイトやメールで受け取った電子の領収書は、紙に印刷するだけでなく電磁的記録のまま提出できるよう、受領形式ごとに提出経路を分けておく。

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    旅費精算書の作成

    出張後、実費区分(交通費・宿泊費)と出張旅費規程に基づく定額区分(日当)を分けて旅費精算書に記載し、それぞれの証憑を添付する。仮払を受けていた場合は、仮払額と実際にかかった費用との差額を明示し、過不足を清算できるようにする。消費税の仕入税額控除については、適格請求書を保存して処理する行と、消費税法施行規則15条の4第2号の出張旅費等に当たるものとして帳簿の記載で処理する行とを、明細ごとに区別して記載しておく。

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    経理部門への提出・精算処理

    作成した精算書と証憑一式を経理部門に提出し、記載内容と証憑の対応関係を確認のうえ差額の支給または返金の処理を行う。消費税法施行令49条1項1号は、帳簿のみの保存で仕入税額控除を受ける場合に帳簿へ該当する旨を記載することを求めているため、仕訳の摘要欄の書き方も社内で統一しておく。精算期限を過ぎて提出された申請の取扱いは、社内の出張旅費規程の定めに従って処理し、遅延が常態化しないよう管理する。

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    証憑・精算書の保存

    作成した精算書および添付した証憑類は、社内規程および関係法令上の帳簿書類の保存義務に従って保存する。法人税法施行規則59条1項は青色申告法人の帳簿書類について「起算日から七年間」の保存を求め、欠損金の繰越しの適用を受けようとする場合は法人税法施行規則26条の3第1項が「起算日から十年間」としている。実費弁償であることの証拠資料としても機能するため、具体的な保存年数や保存方法に不明な点があれば顧問税理士等に確認することが望ましい。

専門家に相談したほうがよい場面

出張申請書・旅費精算書は法定書式ではなく、御社の出張旅費規程に基づく社内書類です。日当額が社会通念上相当かどうかの判断や、支給額が給与課税に該当するか否かの個別判定は、税理士法が規律する税務相談に当たり得るため、具体的な金額設定や税務上の適否は顧問税理士にご相談ください。出張旅費規程・就業規則の整備と労働基準法89条の届出については社会保険労務士の関与が適切な場合があります。当社は士業資格者を擁さず、書類作成の受託・代理や、専門家に代わる個別の適法性判断は行いません。本サイトは利用者自身による編集・提出を前提とした支援ツールであり、実際には行っていない出張や支出していない金額を記載した精算書など、事実と異なる内容の書類は作成しません。

よくある質問

出張申請書・旅費精算書は必ず作成しなければならない書類ですか。
労働基準法・所得税法・法人税法のいずれにも、出張申請書・旅費精算書そのものの作成を直接義務付ける規定はなく、法令上必須の書類ではありません。もっとも、所得税法9条1項4号が非課税とするのは「その旅行について通常必要であると認められるもの」に限られ、通常必要性は出張の目的・目的地・行路・期間の長短・宿泊の要否・職務内容などから判断されるとされています。これらを示す記録が申請書・精算書のほかに残っていない会社が多いため、実務上は極めて重要な役割を果たします。作成・保存を怠ると、税務調査等で給与認定を受けるリスクが高まります。
日当はいくらまでなら非課税になりますか。
所得税法9条1項4号は非課税となる旅費を「その旅行について通常必要であると認められるもの」と定めるだけで、金額の上限を定める政令はありません。通勤手当については所得税法施行令20条の2が1か月当たり15万円などの限度額を置いていますが、旅費にはこれに対応する金額基準の規定がなく、所得税基本通達9-3が社内の均衡と同業種・同規模の他社水準を勘案するとしているにとどまります。当てはめ自体が税理士法の定める税務相談領域に接するため、本ガイドでは具体的な非課税限度額をお示しできません。具体的な金額設定については顧問税理士にご相談ください。
領収書をなくした場合、精算はできませんか。
領収書を欠く場合の取扱いは会社の出張旅費規程・経理規程の定めによって異なります。一般には、紛失理由の申告書や利用明細の代替提出などで対応する例がありますが、実費弁償性の立証資料が乏しくなる点は変わりません。消費税の仕入税額控除については、消費税法30条7項が帳簿及び請求書等の保存を要件としつつ、消費税法施行規則15条の4第2号の出張旅費等に当たるものは帳簿の記載により処理する余地が残されています。社内規程に従った手続を確認し、不明な点は経理部門または顧問税理士に相談することをお勧めします。
海外出張の場合、国内出張と扱いは異なりますか。
海外出張では為替換算や外貨建て証憑の扱い、渡航に伴う追加的な費用項目など、国内出張にはない論点が生じます。所得税法9条1項4号は国内・国外を区別せず、旅行に通常必要と認められる範囲かどうかで判断する構造になっており、金額水準そのものは会社の規程の定め方に委ねられています。取扱いの詳細は会社の出張旅費規程の定め方や個別の税務上の取扱いによって異なるため、規程に海外出張の区分を設けたうえで、課税関係に不明な点があれば顧問税理士に確認することが望ましいです。
出張中の移動時間は労働時間として扱う必要がありますか。
移動時間の労働時間該当性は、使用者の指揮命令下に置かれていたと評価できるかによって判断されるとされており、単なる往復の移動は労働時間に当たらないと解される例が多い一方、物品の監視など業務性のある指示が伴う場合には別に評価される可能性があります。労働基準法38条の2第1項は「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と定めており、みなしが使えるのは労働時間を算定し難いときに限られます。出張中の労働時間の把握方法と休日移動の取扱いは、就業規則で明確にしておくことが望まれます。

出典

最終確認日: 2026-08-20

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