年次有給休暇申請書・計画的付与の個人別表
有給休暇申請書、計画年休個人別表、計画的付与カレンダー、年休計画表、年休申請書 とも呼ばれます。
従業員が年次有給休暇の取得を使用者に申し出るための申請書と、労使協定に基づく計画的付与制度において対象者ごとの取得時季をあらかじめ割り振る個人別表を扱う。前者は労働者の時季指定権の行使を記録する書面であり、後者は労働基準法39条6項の計画的付与を社内で実施するための管理表であって、両者は法的性質が異なる点に注意が必要である。さらに労働基準法39条7項は、10労働日以上の年次有給休暇が付与される労働者について年5日を使用者が時季を定めて与える義務を課しており、申請書・個人別表・年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則24条の7)を一体で設計しないと、義務の履行状況を追跡できなくなる。
最終確認日:
どんなときに必要か
従業員が特定の日に年次有給休暇を取得したいと申し出るとき、または会社が労使協定を締結して計画的付与制度を導入し、夏季休暇や年末年始等に合わせて休暇取得日をあらかじめ割り振るときに用いる。雇入れの日から起算して6か月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者が主な対象となる。加えて、労働基準法39条7項の年5日の時季指定義務の対象者(付与日数が10労働日以上の者)のうち取得が進んでいない人を洗い出し、使用者から時季を提案する場面でも、個人別表と申請書が実務上の起点になる。
書面にする必要はあるか
年次有給休暇の請求(時季指定)自体については、労働基準法に書面で行うべきとする定めはなく、口頭の時季指定でも法律上の効力は生じる。したがって申請書は取得日数と時季を記録して紛争を予防するための証拠目的の書面であり、法定の書面要件はない。これに対して計画的付与は、労働基準法39条6項が「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたとき」と定めており、労使協定は法定の書面要件である(過半数組合がある事業場では相手方は当該組合であり、過半数代表者と締結しても要件を満たさない)。個人別表はその協定内容を運用に落とし込む管理帳票にすぎず、協定に代わるものではない。さらに労働基準法施行規則24条の7は「時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類」=年次有給休暇管理簿を作成し、「当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない」と定める(労働基準法施行規則附則71条により、当分の間は3年間)。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準法89条1号が就業規則の絶対的必要記載事項として掲げる休暇に関する事項として、計画的付与の定めを就業規則にも置く必要がある。
必ず入れる事項
労働者の氏名・所属部署
誰が請求しているかを特定する基本記載であり、賃金台帳(労働基準法108条)等の他の労務記録と対照させて取得日数を管理するための前提となる項目であって、記載漏れがあると本人特定ができず処理が滞る。労働基準法施行規則24条の7の年次有給休暇管理簿も労働者ごとの作成を求めており、氏名の特定は管理簿への転記の起点でもある。
請求する休暇の年月日(時季)
労働基準法39条1項は「継続し、又は分割した十労働日の有給休暇」の付与を定めており、時季の特定は労働者の時季指定権行使の中核であるため、具体的な年月日で記載する。時間を単位として与える場合は、労働基準法39条4項が書面による労使協定で「時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)」(同項2号)等を定めることを求めるため、協定の有無と時間数も記載する。半日単位の付与は労働基準法にも労働基準法施行規則にも規定がなく(施行規則で「半日」を単位と定めるのは19条の2の代替休暇のみ)、労働基準法39条4項の労使協定の要否も「五日以内に限る。」の上限も及ばないため、記載欄は時間単位と分けて設ける。
基準日・継続勤務期間および全労働日8割出勤要件の充足
労働基準法39条1項は「その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者」を付与対象と定めており、この要件を満たさない者を対象に含めると付与自体の前提を欠く。出勤率の算定では、業務上の負傷・疾病による療養休業期間、育児休業・介護休業の期間、産前産後の休業期間について労働基準法39条10項が「これを出勤したものとみなす」と定めている点に注意する。
(計画的付与の場合)対象日数—付与日数のうち5日を超える部分
労働基準法39条6項により、計画的付与の対象にできるのは「これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については」とされる範囲に限られ、法定の最低5日は労働者本人が自由に時季指定できるよう留保しなければならない。個人別表の様式には、付与日数・計画的付与日数・本人留保日数を並記して差引きが目で追える欄を設ける。
労使協定の締結年月日・協定内容との整合
計画的付与は労働基準法39条6項に基づく労使協定を前提とする制度であり、個人別表に記載する取得時季は当該協定で定めた方式(全社一斉・グループ別・個人別等)と矛盾しない内容でなければならない。協定の有効期間と個人別表が対象とする年度がずれていないかも、締結年月日欄で突き合わせる。
承認欄・時季変更の記録
労働基準法39条5項ただし書は「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」と定めており(時季変更権)、変更の有無と判断理由・代替候補日を承認欄に記録として残すことで、後日の紛争予防に資する。
個人別表の場合は対象者一覧と各人の取得予定日
計画的付与を個人別方式で実施する場合、誰がいつ取得するかを一覧化しなければ労使協定の履行状況を管理できず、賃金台帳(労働基準法108条参照)への反映にも支障が生じる。休職者・期中入社者・退職予定者など計画日に在籍しない可能性のある者の扱いも、一覧上で明示しておく。
年次有給休暇管理簿の3項目(時季・日数・基準日)
労働基準法施行規則24条の7は「時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類」の作成を義務づけている。個人別表にこの3項目の欄を備えておけば、労働基準法施行規則55条の2が認める労働者名簿・賃金台帳との併せ調製と同様に、管理簿を兼ねる帳票として運用できる。
使用者が時季を指定する場合の意見聴取の記録
労働基準法39条7項に基づき使用者が時季を定めて年5日を与えるときは、労働基準法施行規則24条の6により、あらかじめ対象となることを本人に明らかにしたうえで「その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない」とされ、さらに「聴取した意見を尊重するよう努めなければならない」と定められている。聴取日・本人の希望・調整結果を残す欄が要る。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
時季指定理由欄を設け、私用目的等の具体的な理由の記載がなければ承認しない運用にすると、判例上確立された年次有給休暇の自由利用の原則に抵触するおそれがある。最高裁昭和48年3月2日判決(白石営林署事件)は年次休暇の利用目的が労働基準法の関知しないところであるとしており、取得理由の当否を使用者が審査する権限は労働基準法上与えられていない。理由欄はあくまで任意記載・業務調整の参考情報にとどめる設計が望ましい。
計画的付与の対象に、法定の最低5日(労働者が自由に時季指定できる部分)まで含めてしまうと、労働基準法39条6項が対象を「これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については」と限定した趣旨を超え、労働者本人の時季指定権を実質的に奪う結果となり、その部分の割り振りが無効と評価されるおそれがある。前年度からの繰越分を含めて何日が対象になるかは、協定の文言で明確にしておく。
労使協定を締結しないまま個人別表のみを作成し、これを計画的付与と称して休暇を消化させると、労働基準法39条6項が求める労使協定締結の要件を欠くことになり、法的根拠のない一方的な休暇時季の割り振りとして扱われるおそれがある。加えて常時10人以上の事業場では、労働基準法89条1号の休暇に関する事項として就業規則にも定めを置く必要があり、就業規則の作成・届出義務違反は労働基準法120条1号の罰則の対象とされている。
全労働日の8割以上出勤という付与要件を満たさない者を対象者一覧に誤って含めてしまうと、当該労働者にはそもそも労働基準法39条1項の年次有給休暇の請求権自体が発生していないため、個人別表上の時季割り振りが前提から成り立たない。逆に、業務上の負傷による療養休業や産前産後の休業を欠勤として算入し、8割要件を満たす者を対象から外す誤りも起きやすい(労働基準法39条10項のみなし出勤)。
時季変更権を行使する際、労働基準法39条5項が定める事業の正常な運営を妨げるという要件へのあてはめを欠いたまま、恒常的な人員不足や単なる業務都合のみを理由に変更を繰り返すと、時季変更権の濫用として当該変更が無効と判断されるおそれがある。最高裁昭和62年7月10日判決(弘前電報電話局事件)は、代替要員の確保について使用者が通常の配慮をしたかを要件該当性の判断に組み込んでいる。
労働基準法39条7項は、年5日の時季指定義務の対象を「これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る」と括弧書きで限定したうえで、その5日を基準日から一年以内に与えることを義務づけている。個人別表で年間の休暇を割り振ったつもりでも実取得が5日に満たない労働者を放置すると義務違反となり、労働基準法120条1号は労働基準法39条7項違反を「三十万円以下の罰金に処する」対象として掲げている(違反は労働者ごとに成立するとされている)。
労働基準法施行規則24条の7は、年次有給休暇を与えたときに「時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類」の作成と保存を義務づけている。個人別表を作っただけで3項目を満たさない様式のまま運用すると、労働基準監督署の調査で是正指導の対象となり得る。また使用者が時季を指定するときは労働基準法施行規則24条の6が「その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない」と定めており、意見聴取を経ずに休暇日を一方的に通知する運用は手続を欠く。
作成の流れ
- 1
対象者・付与日数の確認
労働基準法39条1項の定める「その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者」という要件と、継続勤務年数に応じた加算(労働基準法39条2項)を確認し、対象労働者の付与日数を確定させる。所定労働日数の少ないパートタイム労働者等は労働基準法39条3項の比例付与の対象となり、労働基準法施行規則24条の3の表に従って日数を求める。出勤率の算定では、業務上の負傷・疾病による療養休業、育児休業・介護休業、産前産後の休業の各期間を「これを出勤したものとみなす」(労働基準法39条10項)。
- 2
就業規則の整備と労使協定の締結
計画的付与制度を導入する場合、常時10人以上の労働者を使用する事業場では労働基準法89条1号の絶対的必要記載事項である休暇に関する事項として、就業規則に計画的付与の定めを置く。そのうえで労働基準法39条6項に基づき、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との間で書面による労使協定を締結し、対象者の範囲・対象日数・取得方式(全社一斉・グループ別・個人別)・計画日の変更手続を定める。この労使協定は労働基準監督署への届出を要しないが、締結書面は保存しておく。
- 3
個人別表の作成・本人意向の聴取
労使協定で定めた方式に沿って、対象者ごとの取得予定日を個人別表に記載する。全社一斉方式でない場合は、業務調整のため本人や所属長の意向をあらかじめ聴取したうえで具体的な年月日を割り振る。付与日数・計画的付与日数・本人が自由に指定できる残日数を並記し、労働基準法39条6項の5日留保が各人について確保されているかを行単位で検算する。期中入社者や休職者など計画日に付与日数が足りない者の扱いも、協定の定めに沿って個別に決める。
- 4
申請書の提出・承認と時季変更権の判断
労働者本人が取得を希望する日を明記した申請書を提出し、使用者が承認する。事業の正常な運営を妨げる事情がある場合は、労働基準法39条5項ただし書に基づき他の時季への変更を検討し、変更の理由と代替候補日を記録に残す。代替要員の手配など通常行うべき調整を尽くしたかを判断過程として書き留めておくと、後日の説明に耐える。承認・変更の結果は速やかに本人へ返す。
- 5
年5日の時季指定義務の履行管理
付与日数が10労働日以上の労働者について、基準日から一年以内の取得実績を四半期ごとに点検し、5日に届かない見込みの人には労働基準法39条7項に基づき使用者から時季を指定する。指定に当たっては労働基準法施行規則24条の6により、対象となることを本人に明らかにしたうえで「その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない」とされ、「聴取した意見を尊重するよう努めなければならない」ものとされている。本人の請求や計画的付与で取得済みの日数は、労働基準法39条8項により指定すべき5日から差し引かれる。
- 6
年次有給休暇管理簿の作成・保存と賃金台帳への反映
承認された取得日数・時季を賃金台帳その他の労務記録に反映し、労働基準法施行規則24条の7に基づき、時季・日数・基準日を労働者ごとに明らかにした年次有給休暇管理簿を作成する。保存期間は「当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない」とされ、労働基準法施行規則附則71条により当分の間は3年間である。労働基準法施行規則55条の2は管理簿・労働者名簿・賃金台帳の併せ調製を認めているため、個人別表を管理簿の様式に寄せておくと二重管理を避けられる。個人別表は労使協定の履行状況を示す資料としても保管しておく。
専門家に相談したほうがよい場面
当社は行政書士等の士業資格者を擁さず、書類の作成受託・代理は行わない。本サービスは、利用者自身による編集・提出を前提とした支援ツールである。年次有給休暇の自由利用の原則や計画的付与制度の適法性は判例・行政解釈の集積があり、理由欄の設計や労使協定の内容によっては個別の当てはめの検討が必要となる。また個人別表や年次有給休暇管理簿は取得実績を証する帳票であるため、実際には取得していない日を取得したものとして記載するなど、事実と異なる証明書・記録は作成しない。計画的付与制度の導入や就業規則・労使協定の見直し、時季変更権の行使や年5日の時季指定義務の履行をめぐり争いになりそうな場面では、社会保険労務士や弁護士へ相談することを推奨する。
よくある質問
- 年次有給休暇の取得理由を書面に記載させ、理由次第で拒否することはできますか。
- 年次有給休暇は労働者がその利用目的を問われることなく取得できるとされており(自由利用の原則)、最高裁昭和48年3月2日判決(白石営林署事件)も年次休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであるとしている。使用者が理由の当否を審査して拒否する権限は労働基準法上認められていない。申請書の理由欄は業務調整のための任意の参考情報にとどめ、記載の有無や内容を理由に承認を拒む設計は避けるべきである。繁忙期の重複を避けたい場合は、労働基準法39条5項ただし書の時季変更権の要件に沿って個別に判断する。
- 計画的付与の対象にできる日数に上限はありますか。
- 労働基準法39条6項により、計画的付与の対象にできるのは「これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については」とされる範囲に限られる。例えば年10日の付与を受ける労働者であれば最大5日分までが計画的付与の対象となり、残り5日は労働者本人が自由に時季を指定できるよう留保しなければならない。なお計画的付与で与えた日数は、労働基準法39条8項が「当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。」と定めるとおり、年5日の時季指定義務から差し引かれる。
- 使用者は労働者が指定した休暇の時季を変更できますか。
- 労働基準法39条5項本文は「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。」と定め、ただし書で「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」としている(時季変更権)。最高裁昭和62年7月10日判決(弘前電報電話局事件)は、代替要員の確保について使用者が通常の配慮をしたかどうかを要件該当性の判断に組み込んでおり、単なる人員配置の都合や恒常的な繁忙のみを理由とする変更は、要件を欠くものとして無効と判断されるおそれがある。
- 計画的付与の個人別表は、労使協定がなくても作成できますか。
- 計画的付与は労働基準法39条6項に基づく労使協定の締結を前提とする制度であるため、協定を締結せずに個人別表のみで休暇取得日を一方的に割り振ることはできない。協定を伴わない場合は、通常の労働者による時季指定と使用者の時季変更権(労働基準法39条5項)という枠組み、または労働基準法39条7項に基づく使用者の時季指定という枠組みで処理する必要がある。後者は年5日が上限であり、労働基準法施行規則24条の6の意見聴取を経ることが求められる点で、計画的付与とは手続が異なる。
- パートタイマーやアルバイトにも、年5日の時季指定義務や計画的付与は適用されますか。
- 労働基準法39条3項は比例付与の対象から「一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く」としており、労働基準法施行規則24条の3第1項はその時間を「三十時間とする」と定める。労働基準法施行規則24条の3の表では、週所定労働日数4日(1年間の所定労働日数169日から216日まで)の労働者は継続勤務3年6か月で10労働日、週3日の労働者は5年6か月で10労働日に達する。労働基準法39条7項の年5日の時季指定義務は付与日数が10労働日以上の労働者に限られるため、この段階に達した時点から対象となる。週2日以下では表の上限が7日にとどまり10労働日には達しない。
出典
- e-Gov法令検索 労働基準法(第39条 年次有給休暇・第89条・第119条・第120条)
- e-Gov法令検索 労働基準法施行規則(第19条の2・第24条の3・第24条の6・第24条の7・第55条の2)
- 厚生労働省 働き方改革特設サイト 年次有給休暇の時季指定
- 厚生労働省リーフレット 年次有給休暇の時季指定義務
- 厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト
最終確認日: 2026-08-20
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