内定承諾書:法的な位置づけと無効になりやすい条項
入社承諾書、内定誓約書、入社意思確認書、採用内定承諾書とも呼ばれます。
内定承諾書は、採用内定を受けた人が入社の意思を示す書面です。入社承諾書、内定誓約書とも呼ばれます。書面なしでも契約は成立しますが、証拠として重みがあります(民法522条2項)。判例には、内定通知と誓約書の提出により、解約権を留保した労働契約の成立を認めたものがあります。
| 書面の要否 | 法定の書面要件なし。証拠目的の書面 |
|---|---|
| 法的性質 | 内定通知と誓約書提出で契約成立を認めた例 |
| 違約金 | 違約金条項は効力を否定される |
| 身元保証 | 身元保証は書面と極度額が焦点 |
| 辞退可否 | 期間なし雇用はいつでも解約申入れ可 |
| 条件明示 | 承諾書は労働条件明示の代わりでない |
最終確認日:
どんなときに必要か
内定承諾書は、内定から入社日まで間が空く採用で使われます。会社は採用計画の根拠にし、内定者は内定内容を書面に残せます。承諾の意思表示と、誓約や保証の条項を分けて読みます。
書面にする必要はあるか
内定承諾書に法定の書面要件はありません。労働契約は労働者と使用者の合意で成立します。使用者は、労働条件を別の書面で明示します(労働基準法15条1項)。
記載が必要な事項
内定承諾書には法定の様式がありません。会社名、募集職種、内定通知の日付、入社予定日、提出年月日、本人の署名または記名押印を置くと、どの内定への承諾かを後から照合できます。労働条件を記した書面の受領と、提出書類の期限も分けて記録します。
どの内定かの特定
会社名、募集職種、内定通知の日付を結びます。どの条件を前提に入社の意思を示したかを、後から照合できます。
入社予定日
就労を始める時期を示します。始期がないと、働く義務と賃金を支払う義務がいつ生じるかがあいまいになります。
提出日と本人署名
意思表示は相手方に到達した時から効力を生じます。日付と署名があると、いつ誰が承諾したかを示せます(民法97条1項)。
労働条件書面の受領
労働条件の明示は承諾書とは別です。受領を記録すると、示された条件が事実と違う場合の前提を整理できます。
提出書類と期限
卒業証明書などの提出物を列挙します。身元保証書が含まれる場合は、保証契約として別の要件がかかります。
承諾と誓約の区別
秘密保持、競業避止、違約金の条項が同じ用紙に入ることがあります。入社の意思表示と義務の引受けは性質が違います。
無効・効力が否定されやすい条項
無効になりやすいのは、承諾に義務を上乗せする条項です。辞退時の違約金は、使用者による違約金や損害賠償額の予定の禁止に触れます(労働基準法16条)。身元保証を混ぜる場合は、保証契約の書面要件や極度額の有無も問題になります。
内定辞退時の違約金を定める条項です。使用者は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額の予定を定められません(労働基準法16条)。
いかなる理由でも辞退しないとする条項です。期間の定めのない雇用は、各当事者がいつでも解約を申し入れられるため、効力は乏しいとされます。
会社に損害を与えたとき全額賠償とする条項です。実損でも、請求できる範囲は損害の公平な分担から信義則上相当な限度とされます。
身元保証を承諾書に混ぜる形です。保証契約は書面でし、個人根保証に当たる場合は極度額を定めます(民法446条2項)。
賃金や就業場所が空欄のまま承諾書だけ出させる運用です。承諾書だけでは、使用者の労働条件明示を果たしません。
作成の流れ
手順は、承諾対象を照合してから署名する流れです。内定通知書、労働条件を記した書面、承諾書の3点で、会社名、職種、入社予定日、賃金を見ます。違約金や身元保証など別の義務がないかを読んだうえで記入し、到達日を基準に提出します。
- 1
承諾対象を照合する
内定通知書、労働条件を記した書面、承諾書を並べます。会社名、職種、入社予定日、賃金が一致するかを見ます。
- 2
条件書面を見る
使用者は、契約期間、就業場所、業務、労働時間、賃金(昇給に関する事項を除く)、退職などを明示します。方法は書面交付が原則です(労働基準法15条1項)。
- 3
別条項を読む
違約金、損害賠償額の予定、身元保証、秘密保持、競業避止が同じ用紙にないかを読みます。承諾とは別の義務です。
- 4
記入して届ける
提出年月日、氏名、住所、入社予定日など指定欄を埋めます。提出期限があるときは、投函日でなく到達日を基準にします。
- 5
控えを保管する
提出前に全ページの写しを取り、内定通知書や労働条件の書面と保管します。電子提出では送信日時の記録も残します。
この書式だけでは足りない場面
労働条件の明示や就業規則の整備は、労働基準監督署や社会保険労務士が相談先になります。違約金、損害賠償額、身元保証、内定取消しは、承諾書の体裁だけでは効力が決まりません。
よくある質問
- 内定承諾書を出したら、もう辞退できないのですか。
- 辞退を一切禁じる条項の効力は乏しいとされます。期間の定めのない雇用は、解約申入れができます(民法627条1項)。
- 承諾書に「辞退したら違約金を支払う」と書かれていました。
- 使用者は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額の予定を定められません(労働基準法16条)。
- 内定承諾書と労働条件通知書は同じものですか。
- 別のものです。内定承諾書は入社の意思を示す書面で、労働条件を明示する書面の代わりにはなりません。
- メールやウェブフォームで承諾しても大丈夫ですか。
- 承諾自体に法定の書面要件はありません。送信記録と会社からの受領連絡を残すと、到達時期を示せます。
出典
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索)
- 民法(e-Gov法令検索)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」
最終確認日: 2026-09-20