情報セキュリティ・SNS利用に関する誓約書

SNS利用誓約書、情報セキュリティ誓約書、SNSポリシー同意書、秘密保持・SNS利用誓約書 とも呼ばれます。

情報セキュリティ・SNS利用に関する誓約書は、従業員が会社の秘密情報・個人情報の取扱いルールとSNS利用上の禁止行為を理解し、遵守することを確認するための書面です。入社時や情報セキュリティ規程・SNSポリシーの導入・改定時に取り交わされることが多く、就業規則が定める懲戒事由や秘密保持義務の内容を従業員に周知し、合意した事実を記録する役割を担います。個人情報保護法23条の安全管理措置と24条の従業者の監督を講じた裏づけにもなりますが、誓約書だけで新たな懲戒事由を作ることはできず、実体的な根拠は就業規則側に置きます。

最終確認日:

どんなときに必要か

入社時のオリエンテーションで秘密情報の取扱いルールを周知するとき、SNSポリシーや情報セキュリティ規程を新設・改定して従業員に遵守を求めるとき、会社の機密情報や顧客の個人情報を取り扱う業務に従事させるとき、業務用端末・アカウントを貸与し利用ルールへの同意を得たいときなどに用いられます。テレワークや私物端末の業務利用を認めるとき、派遣・アルバイト・出向者まで取扱者の範囲が広がるときも、対象者ごとに取り直すのが実務です。

書面にする必要はあるか

この誓約書の作成を義務づけ、書面によることを要求した法律の規定はなく、作成しなくても法令違反にはなりません。社内ルールを従業員に周知し、理解・同意した事実を記録する証拠目的の書面です。もっとも労働契約法4条2項は「労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。」と定めており、書面化はこの趣旨に沿う取扱いです。他方、懲戒の実体的な根拠は就業規則側に必要です。労働基準法89条は常時十人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成・届出を義務づけ、その9号で「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を必要的記載事項とし、減給等の制裁を設けるときは労働基準法91条の上限が及びます。

必ず入れる事項

  • 適用対象者・適用時期の明記

    誰が(全従業員か特定部署か)、いつ(入社時、規程改定時等)同意するのかを明確にしないと、規程違反が生じた際に誓約の対象外であるとの反論を招きます。労働契約法7条は、合理的な労働条件を定めた就業規則を周知させていた場合、労働契約の内容はその就業規則によるとしており、誓約書は誰にどの版が適用されるかを示す資料になります。派遣・出向の受入れ者は適用関係が異なるため対象欄で区別します。

  • 秘密情報・営業秘密の定義

    保護対象となる秘密情報や営業秘密の範囲を定義しないと、何が違反行為に当たるか従業員に伝わりません。不正競争防止法2条6項は営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しており、秘密管理性・有用性・非公知性を満たす管理(アクセス制限、マル秘表示等)とセットでなければ、法的な保護の対象から外れます。

  • SNS利用に関する禁止行為の具体的列挙

    社外秘情報の投稿禁止、誹謗中傷の禁止、会社名・ロゴの無断使用禁止、顧客名・取引先名への言及禁止など、禁止行為を抽象的にではなく具体的に列挙しないと、どの投稿が違反となるかの予見可能性を欠きます。労働契約法15条は、懲戒が行為の性質・態様その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合は無効とすると定めており、事前に示していない行為での懲戒は相当性を争われます。

  • モニタリングの目的・範囲・方法の明示

    会社が業務用端末やアカウントの利用状況を確認する場合の目的・範囲・方法・実施者・保存期間を事前に具体的に示さないと、プライバシー侵害を理由とする紛争に発展するおそれがあります。個人情報保護法23条は個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を求めており、モニタリングはその一環として位置づけ、あらかじめ社内に周知し、監視の内容を明記して同意を得ておくことが望ましい設計です。

  • 違反時の措置と就業規則との関係の明示

    誓約書違反があった場合の対応(注意指導、懲戒処分、損害賠償請求の可能性)を記載する際は、その根拠が就業規則上の懲戒事由・手続に置かれていることを明示する必要があります。労働基準法89条9号は制裁の定めをする場合の種類及び程度を就業規則の必要的記載事項としており、誓約書単独で新たな懲戒事由を作ることはできません。対応する就業規則の条項番号を誓約書に引用して整合を示します。

  • 退職後も存続する義務の範囲・期間の限定

    秘密保持義務やSNS投稿制限のうち退職後も存続させる部分について、対象情報・禁止行為・存続期間を区切って明記しないと、無期限・無制限な制約として合理性を欠くと評価されやすくなります。憲法22条1項が保障する職業選択の自由との調整が必要な場面であり、対象を不正競争防止法2条6項の営業秘密に相当する情報へ絞り、代償措置の有無まで含めて設計することが求められます。

  • 減給等の制裁を設ける場合の上限順守

    労働基準法91条は「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と定めています。この上限は就業規則の定めに掛かるものなので、誓約書に金銭的な制裁色の強い条項を置くときは、対応する減給の制裁を就業規則側に定めたうえで上限内に収める必要があります。就業規則の定めが上限を超えると、労働基準法120条1号により罰金の対象になります。

  • 漏えい・紛失時の報告義務と初動手順

    端末の紛失やメールの誤送信を従業員が直ちに報告する義務を書いておかないと、発覚が遅れて被害が広がります。個人情報保護法26条は、個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして規則で定める事態が生じたときの個人情報保護委員会への報告と、本人への通知を求めています(委託元へ通知した場合や、本人への通知が困難で代わるべき措置をとる場合の例外があります)。報告先と連絡手段を誓約書と規程の両方に書きます。

  • 署名・日付・交付/保管方法の明記

    従業員の署名または記名押印と誓約日の記載がなければ、いつ誰が同意したかという事実自体が争いになりやすくなります。写しの交付方法や原本の保管方法を定めておくことで、紛争時に証拠として提出できる状態を保てます。電子的に同意を取得する場合は、本人特定の方法と同意時刻の記録が残る手段を選びます。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 会社は必要と判断した場合に通信内容を含め一切を確認できる、といった目的・範囲を定めない包括的な監視条項は、プライバシー侵害を理由とする紛争を招きやすくなります。裁判例は、監視の目的・手段・態様と労働者が受ける不利益を比べて社会通念上相当な範囲を逸脱したかどうかで判断する傾向にあり、監視の目的・対象・方法・実施者・保存期間を具体的に定め、その範囲を超えない運用にしなければ、条項があっても会社側の正当性の主張は弱くなります。

  • 業務時間外・プライベートアカウントでの投稿まで広く会社の事前承認制とするなど、私的な言論活動全般を制約する条項は、業務との関連性が乏しいと評価されやすくなります。会社の信用毀損や秘密情報の漏えいなど、業務に関連する範囲に絞って定めなければ、労働契約法15条が求める客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性の判断において、条項自体の合理性が争われます。

  • 誓約書にのみ、違反した場合は懲戒解雇とする旨を記載しても、就業規則上に対応する懲戒事由・手続の定めがなければ、その懲戒処分の有効性が争われます。労働基準法89条9号は制裁の種類及び程度を就業規則の必要的記載事項とし、労働基準法106条1項は就業規則を「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。」と定めています。周知を欠いた規定は懲戒の根拠として否定されやすく、誓約書は就業規則の内容を確認し合意を得る書面と位置づけ、懲戒の根拠は就業規則側に置きます。

  • 労働基準法91条は、就業規則で減給の制裁を定める場合、「その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と定めています。誓約書やこれに連動する規程がこの上限を超える減給を定めると、超過部分は無効と判断され、労働基準法120条が「次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。」として91条違反を対象にしています。

  • 誓約書違反があった場合に、実際の損害額にかかわらず一律いくらを支払うと定める違約金予定型の条項について、労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と明文で禁じており、これに反する定めは無効です。労働基準法119条は「次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。」として16条違反を対象にしています。実際に生じた損害の内容に応じて賠償を請求する立て付けとし、金額を機械的に固定しない扱いにします。

  • 退職後の存続期間や対象情報の範囲を限定せず、無期限かつ包括的に情報の取扱いやSNS上の言及を禁止する条項は、憲法22条1項が保障する職業選択の自由との関係で行き過ぎと評価され、効力が制限されやすくなります。裁判例は、制限の期間・対象範囲・地域・代償措置の有無などを総合して合理性を判断しており、存続期間・対象情報・禁止行為を具体的に絞り込むことで、条項としての説得力を持たせる必要があります。

  • 就業規則より重い義務や不利な取扱いを、規程を直さないまま誓約書だけで課そうとするのも危険です。労働契約法12条は「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。」と定めており、誓約書も労働契約の一部として同じ判断を受けます。規程を先に整えてから誓約書の文言を合わせる順序にしないと、署名を得ていても条項が働きません。

作成の流れ

  1. 1

    就業規則・情報セキュリティ規程の根拠を先に固める

    人事・法務の担当者が、誓約書に書く予定の遵守事項と違反時の措置について、就業規則や情報セキュリティ規程に対応する条文があるかを先に確認します。不足があれば規程側を改定し、労働基準法90条1項に基づき過半数代表者等の意見を聴いたうえで、労働基準法89条の届出と労働基準法106条1項の周知まで済ませてから、誓約書の取得に進みます。

  2. 2

    タイトル・適用対象・目的の明記

    書面のタイトルを情報セキュリティ・SNS利用に関する誓約書等とし、誰が誰に対して誓約するか(従業員から会社へ)、対象となる情報の範囲(秘密情報・個人情報・営業秘密等)と誓約の目的(情報漏えい防止、SNS上のトラブル防止等)を冒頭に記載します。適用の起算時点(入社日、規程改定日)と、準拠する規程名・改定年月日も併記し、どの版に同意したかを後から追えるようにします。

  3. 3

    遵守事項の具体的列挙

    秘密情報の持出し・私的利用の禁止、パスワードや多要素認証の管理方法、SNSでの社外秘投稿・誹謗中傷・会社名やロゴの無断使用の禁止、業務用アカウントと私的アカウントの区分、外部クラウドや生成AIへの業務データ入力の可否といった遵守事項を、抽象的な表現ではなく具体的な行為として箇条書きで列挙します。不正競争防止法2条6項の営業秘密に当たる情報と、それ以外の社内情報とを分けて書くと運用しやすくなります。

  4. 4

    モニタリング・違反時対応の条項化

    会社が業務用端末やアカウントの利用状況を確認する場合の目的・範囲・方法・実施者・保存期間をあらかじめ明示し、違反が判明した場合には就業規則に基づく懲戒手続や損害賠償請求の対象となり得る旨を記載します。就業規則の該当する条項番号を引用して整合させ、漏えいや紛失を発見した従業員が直ちに連絡する窓口と手段も同じ条項に書いておきます。

  5. 5

    退職後の存続条項の範囲設定

    秘密保持義務やSNS投稿に関する制限のうち退職後も存続させる部分について、対象情報の範囲・禁止行為の内容・存続する期間を区切って明記します。無期限・無限定な記載は避け、業務上の必要性で説明できる範囲にとどめます。あわせて退職時に返却・削除すべきデータや貸与端末の一覧と期限を別紙で確認し、削除完了を書面で残す運用にします。

  6. 6

    署名・日付・交付/保管方法の確定

    従業員の署名または記名押印、誓約日を記載する欄を設け、原本の保管方法(人事部門での保管等)と本人への写し交付の要否を定めます。電子的に同意を取得する場合は、本人特定の方法・同意時刻の記録・保存場所をあわせて明確にし、規程を改定したときに新しい版で取り直す時期も決めておきます。

専門家に相談したほうがよい場面

この誓約書は、懲戒処分や損害賠償請求の場面で、従業員がルールを認識し同意していた証拠として重要ですが、誓約書の文言だけで懲戒事由を新設することはできず、就業規則との整合性が常に問われます。モニタリング条項の範囲設定、退職後条項の合理性、労働基準法91条が定める減給の制裁の上限や労働基準法16条の賠償予定の禁止への抵触の有無など、判断が分かれる論点が多いため、規程の整備・運用や漏えい発生時の対応は、社会保険労務士や弁護士に相談することを推奨します。当サイトが提供するのは、利用者自身による編集・提出・締結を前提とした支援ツールです。当社は士業資格者を擁さず、書類作成の受託・代理は行いません。

よくある質問

誓約書への署名を拒否した従業員を懲戒処分にできますか。
署名拒否のみを理由に直ちに懲戒処分を行うことは、就業規則上の根拠がなければ難しいと考えられます。労働契約法7条は、合理的な労働条件が定められた就業規則を労働者に周知させていた場合、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるとしており、署名がなくても周知された規程自体は適用されるのが通常です。そのため実務では、署名を強く迫るよりも、説明会の出席記録や配布記録といった周知の証跡を残す対応が優先されます。拒否の理由に規程内容への異議が含まれる場合の扱いは、社会保険労務士や弁護士に相談することをおすすめします。
プライベートアカウントでの会社批判の投稿を理由に処分できますか。
業務時間外・プライベートアカウントでの投稿であっても、会社の信用を著しく毀損する内容や秘密情報の漏えいを伴う場合には、就業規則上の懲戒事由に該当し得ると考えられていますが、投稿内容と業務との関連性など個別の事情によって判断が分かれます。労働契約法15条は「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定めており、投稿の内容・閲覧範囲・会社が特定される程度・反復性まで含めた検討が必要です。誓約書はSNS利用に関する社内ルールを明確化するための書面であり、個々の投稿への対応は内容を精査したうえで弁護士等の専門家に相談すべき事項です。
本人の同意があれば、SNSやメールの内容をどこまで確認できますか。
事前に目的・範囲・方法を具体的に示したうえでの同意であれば、業務用端末やアカウントの利用状況を確認する根拠にはなり得ますが、同意した範囲を超えて私的な通信内容まで確認すると、プライバシー侵害をめぐる紛争に発展するおそれがあります。個人情報保護法23条は個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を求め、個人情報保護法24条は従業者に対する必要かつ適切な監督を求めていますが、これらは無限定な監視を認める規定ではありません。誓約書には監視の目的・対象・方法・保存期間をできる限り具体的に記載し、実際の運用もその範囲にとどめることが重要です。
この誓約書があれば、情報漏えい時に損害賠償を確実に請求できますか。
誓約書は、従業員が情報管理やSNS利用のルールを認識し合意していたことを示す証拠として機能しますが、それだけで損害賠償請求権が当然に発生するわけではありません。労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めているため、あらかじめ賠償額を固定しておくことはできず、実際に生じた損害の額と因果関係を会社側が主張・立証することになります。裁判例では、労働者に対する賠償請求や求償が信義則上相当な範囲に制限される傾向もあるため、具体的な請求を検討する場合は弁護士に相談することをおすすめします。
誓約書を取っていない退職者が情報を持ち出したときは、何もできませんか。
誓約書がなくても、不正競争防止法上の営業秘密に当たる情報であれば、不正競争防止法に基づく差止めや損害賠償を検討できます。不正競争防止法2条1項7号は、営業秘密を示された者による「不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為」を不正競争として掲げ、不正競争防止法21条2項は「次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の拘禁刑若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」として、示された営業秘密を任務に背いて領得する行為を刑事罰の対象にしています。ただし保護されるのは秘密管理性を満たす情報に限られるため、アクセス制限や表示による管理の実態が要になります。

出典

最終確認日: 2026-08-20

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