育児休業等の個別周知・意向確認書
育児休業取得意向確認書、妊娠出産等申出時個別周知書、育休個別周知書、個別周知・意向確認書 とも呼ばれます。
「育児休業等の個別周知・意向確認書」は、労働者本人または配偶者の妊娠・出産等の申出を受けた事業主が、育児休業等の制度を知らせ、取得意向を確認したことを記録する社内書面である。育児介護休業法21条1項の周知・意向確認義務に対応し、2025年10月1日施行の改正で加わった育児介護休業法21条2項の就業条件に関する意向確認と、21条3項の配慮義務までを一枚で記録する運用が実務的である。育児休業の取得を控えさせる方向へ誘導しない中立的な設計が前提となる。
最終確認日:
どんなときに必要か
労働者本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったときに使用する。育児介護休業法21条1項により、事業主はこの申出を契機として育児休業に関する制度等を知らせ、面談その他の方法で取得意向を確認しなければならない。2025年10月1日施行の育児介護休業法21条2項では、始業・終業の時刻や就業の場所といった就業条件についての意向確認も同一の機会に求められており、本書面はその実施記録として用いる。
書面にする必要はあるか
育児介護休業法21条1項は、事業主が「育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出等に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない」と定めるだけで、書面の様式も書面化そのものも法定していない。施行規則69条の5は措置として面談・書面の交付・ファクシミリを利用しての送信・電子メール等の送信を挙げ、書面交付は選択肢の一つにすぎない。つまり法定の書面要件はなく、本書面は義務の履行を立証するための証拠目的の記録である。
必ず入れる事項
妊娠・出産等の申出日と申出事実の種別を書く欄
育児介護休業法21条1項の周知・意向確認義務は、労働者本人または配偶者の妊娠・出産等の申出を契機に発生する。施行規則69条の2は特別養子縁組の請求や養子縁組里親としての委託も申出事実に含めており、申出日と事実の種別を残さないと義務の起点と対象範囲を立証できない。
対象労働者の氏名・子の続柄・出産予定日と出生日の両欄
育児介護休業法5条1項の育児休業は養育する子が1歳に達するまでが原則であり、9条の2の出生時育児休業は出生日または出産予定日から起算する。予定日と実際の出生日を分けて記録しないと、制度ごとの取得可能期間の計算そのものが狂う。
育児休業(育児介護休業法5条)の制度概要と分割回数の周知欄
育児介護休業法5条2項は、一歳到達日までの期間内に二回の育児休業をした場合、「厚生労働省令で定める特別の事情がある場合を除き」三回目を申し出られないと定める。施行規則5条はその特別の事情に、保育所等の保育の利用を申し込んだが当面その実施が行われないとき、配偶者の死亡、子が二週間以上の世話を必要とする状態になったとき等を挙げる。同法5条3項・4項は保育所に入所できない等の場合の1歳6か月・2歳までの延長を定める。回数・例外・延長を落とすと、制度を知らせたとは評価されにくい。
出生時育児休業(育児介護休業法9条の2)の周知欄
育児介護休業法9条の2第1項の出生時育児休業は、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に4週間以内で取得する別枠の制度であり、9条の2第2項により2回まで・通算28日が上限となる。5条2項と異なり9条の2第2項には特別の事情による例外が置かれていないため、通常の育児休業と混同した説明は周知漏れになる。
育児休業給付・出生後休業支援給付・社会保険料の取扱いの記載欄
育児介護休業法施行規則69条の4は、周知事項として制度と申出先のほか、雇用保険法上の育児休業給付および出生後休業支援給付に関することと、育児休業期間・出生時育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱いを挙げる。この2項目を欠くと省令上の周知事項が不足する。
取得意向の確認欄(取得する・取得しない・検討中の中立的選択肢)
育児介護休業法21条1項は取得意向の確認を求めるが、確認は中立でなければ趣旨に反する。選択肢を取得しない方向へ偏らせると、意向確認を装った取得抑制と評価され、21条6項の不利益取扱いや25条のハラスメント防止措置の問題に波及しうる。
就業条件に関する意向聴取欄(始業・終業の時刻、就業の場所、制度の利用期間)
2025年10月1日施行の育児介護休業法21条2項は、両立の支障となる事情の改善に資する就業条件について意向確認を義務づけ、施行規則69条の7が始業および終業の時刻、就業の場所、各制度の利用期間を挙げる。欄がないと聴取漏れが起きる。
有期契約労働者の申出要件の確認欄(育児休業と出生時育児休業で別記載)
育児介護休業法5条1項ただし書は子が1歳6か月に達する日までの労働契約満了が明らかでないことを求め、9条の2第1項ただし書は出生日等から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までを基準とする。一つの欄で兼用すると判定を誤る。
面談等の実施日・実施方法・実施者と方法の希望の記録欄
育児介護休業法施行規則69条の5は措置として面談、書面の交付、ファクシミリを利用しての送信、電子メール等の送信を挙げ、後の2つは労働者が希望する場合に限る。実施方法と希望の有無を記録しないと、認められた方法で措置を講じたことを示せない。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
意向確認欄が『取得しない』方向へ誘導する選択肢しか用意していない場合、育児介護休業法21条1項が求める意向確認の趣旨に反し、取得を控えさせる働きかけと評価されて是正指導や紛争の原因になりうる。2025年10月1日施行の21条6項は、申出をしたことに加えて「第二項の規定により確認された意向の内容を理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定める。聴取した意向を配置や評価の理由に使うこと自体が問題となる。
有期契約労働者の要件欄を一つにまとめ、育児休業の基準だけで判定する書式は危険である。育児介護休業法5条1項ただし書は「その養育する子が一歳六か月に達する日までに」労働契約の満了が明らかでないことを求めるのに対し、9条の2第1項ただし書は「八週間を経過する日の翌日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り」と定め、基準となる時点が異なる。欄を兼用すると出生時育児休業の対象者を誤って除外するおそれがある。
出生時育児休業(育児介護休業法9条の2)の説明欄がなく通常の育児休業だけを周知した書式は、21条1項が求める育児休業に関する制度の周知として不十分と評価されうる。子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に4週間以内で取得する制度であること、9条の2第2項により2回まで・通算28日が上限であることまで説明しないと、取得可能期間を誤認したまま『取得しない』と回答される事態を招く。
書式が制度の説明だけで、給付や社会保険料の取扱いに触れていない場合、育児介護休業法施行規則69条の4が定める周知事項を満たさない。周知すべき事項は、育児休業に関する制度、育児休業申出等の申出先、雇用保険法上の育児休業給付および出生後休業支援給付に関すること、育児休業期間・出生時育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱いの4つである。経済的条件の説明を欠いたまま得た回答は、判断材料を欠いた回答として扱われるおそれがある。
2025年10月1日施行の育児介護休業法21条2項は、周知・意向確認を行うに当たり「職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資するものとして厚生労働省令で定める就業に関する条件に係る当該労働者の意向を確認しなければならない」と定め、21条3項は「就業に関する条件を定めるに当たっては、当該意向に配慮しなければならない」とする。聴取欄も配慮の検討結果欄もない旧様式のままでは、配慮を行った事実を後から示せない。
書面を交付しただけで面談等の実施日・方法・実施者の記録がない場合、育児介護休業法21条1項の措置を実際に講じたことを書面上で示せない。施行規則69条の5はファクシミリと電子メール等の送信を労働者が希望する場合に限って認め、これらの方法では労働者の受信時に到達したものとみなすとしており、希望の有無と送信日時を残さない運用は、到達時期をめぐる争いにも耐えられない。
書式の制度説明欄に『子の看護休暇・小学校就学前まで』という旧い記載が残っている場合、周知の内容が誤りになる。現行の育児介護休業法16条の2は名称が子の看護等休暇に改められ、対象は「九歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある子」すなわち小学校第三学年修了前の子まで拡大されている。施行規則69条の7は子の看護等休暇の利用期間も意向確認の対象に挙げており、誤った説明のまま意向を聴けば聴取自体が意味を失う。
作成の流れ
- 1
申出の受理と対象となる事実の確認
労働者本人または配偶者の妊娠・出産等の申出を受けた年月日と申出の内容を書面に記録する。育児介護休業法21条1項の義務はこの申出を契機に発生する。施行規則69条の2は、特別養子縁組の成立を家庭裁判所に請求したことや、養子縁組里親として1歳未満の児童を委託されたことなども対象となる事実として定めており、出産以外の申出も受理漏れがないようにする。
- 2
省令が定める周知事項4項目の記入
育児介護休業法施行規則69条の4が定める4つの周知事項を欄に沿って漏れなく記載する。すなわち、育児休業に関する制度(育児介護休業法5条の育児休業と9条の2の出生時育児休業)、育児休業申出等の申出先、雇用保険法上の育児休業給付および出生後休業支援給付に関すること、育児休業期間・出生時育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱いである。
- 3
有期契約労働者の要件確認を制度ごとに行う
対象労働者が期間を定めて雇用されている場合、育児休業と出生時育児休業のそれぞれについて要件を確認する。育児休業は育児介護休業法5条1項ただし書により「その養育する子が一歳六か月に達する日までに」労働契約(更新される場合は更新後のもの)の満了が明らかでないことが要件となり、出生時育児休業は9条の2第1項ただし書により基準時点が異なるため、判定結果を別々に記録する。
- 4
面談等による取得意向の確認
育児介護休業法施行規則69条の5が定める面談、書面の交付、ファクシミリを利用しての送信、電子メール等の送信のいずれかにより意向を確認し、実施日・実施方法・実施者・確認結果を記入する。ファクシミリと電子メール等は労働者が希望する場合に限られるため、希望の有無も記録する。選択肢と説明は『取得する・取得しない・検討中』のように中立に保つ。
- 5
就業条件についての意向聴取と配慮の検討
2025年10月1日施行の育児介護休業法21条2項に基づき、始業および終業の時刻、就業の場所、育児休業や子の看護等休暇など各制度の利用期間といった就業条件について意向を聴く。育児介護休業法21条3項は聴取した意向への配慮を求めるため、聴取内容と、配慮としてどのような検討を行ったかの結論を一つの書面に残す。
- 6
双方の確認・保管と次回の周知時期の管理
記載内容を労働者本人に確認してもらい、署名または記名を得たうえで、事業主と労働者の双方が写しを保管する。あわせて、子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までの1年間には、育児介護休業法23条の3第5項による別の個別周知・意向確認が必要になるため、実施時期を台帳等で管理する。
専門家に相談したほうがよい場面
本書面は、育児介護休業法21条1項および2025年10月1日施行の21条2項・3項が事業主に課す周知・意向確認・配慮の履行記録として作成するものであり、当社は士業資格者を擁さず、書類作成の受託・代理は行いません。個別の労働者が育児休業や出生時育児休業の要件を満たすか、有期契約の更新や雇止めが不利益な取扱いに当たらないか、聴取した意向にどこまで配慮すべきかといった具体的な判断が必要な場合は、社会保険労務士または弁護士にご相談ください。就業規則の改定を伴う場合も同様です。
よくある質問
- 意向確認書に『育児休業を取得しない』と記載させれば、会社は周知・意向確認義務を果たしたことになりますか。
- 育児介護休業法21条1項が求めるのは、制度と省令で定める事項を知らせたうえで意向を中立に確認することである。給付や社会保険料の取扱いを説明しないまま回答を得た場合や、取得しない方向へ誘導する説明をした場合は、形式的に記入があっても義務の履行として評価されにくい。さらに育児介護休業法21条6項は、確認された意向の内容を理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じているため、回答内容を人事上の判断材料に使うことも避ける必要がある。
- この書面のひな形は法律や省令で定められた様式がありますか。
- 様式は法定されていない。育児介護休業法21条1項は面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じることを求め、施行規則69条の5が面談、書面の交付、ファクシミリを利用しての送信、電子メール等の送信を挙げるにとどまる。書面の交付は選択肢の一つであり、面談のみで行うことも制度上は想定されている。もっとも、実施日・方法・説明内容・回答を残した書面がなければ後から義務の履行を示す材料がないため、記録として作成する実務上の意味は大きい。厚生労働省は規則の規定例を公開しており、社内規程との整合を確認する際の参考になる。
- 有期契約で働く労働者にもこの周知・意向確認は必要ですか。
- 必要である。育児介護休業法21条1項の周知・意向確認義務は、有期契約かパートかを問わず妊娠・出産等の申出をした労働者に及ぶ。ただし同法2条1号は「労働者」に「日々雇用される者を除く」との括弧書きを置き、これが「第二十一条から第二十四条まで」に及ぶと明示しているため、日々雇用される者は21条1項の対象から外れる。休業の取得要件は別で、育児休業は5条1項ただし書により「その養育する子が一歳六か月に達する日までに」労働契約の満了が明らかでないことが要件となり、出生時育児休業は9条の2第1項ただし書により「八週間を経過する日の翌日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り」とされる。基準となる時点が異なるため、要件の判定は制度ごとに行う。
- 2025年10月の改正で、周知・意向確認の内容は何が変わりましたか。
- 育児介護休業法21条2項が加わり、周知・意向確認を行うに当たって、子の心身の状況や家庭の状況に起因して生じる両立の支障を改善するための就業条件について、労働者の意向を確認することが義務づけられた。施行規則69条の7は、その条件として始業および終業の時刻、就業の場所、育児休業や子の看護等休暇などの制度の利用期間、その他両立の支障となる事情の改善に資する条件を挙げる。育児介護休業法21条3項は就業条件を定めるに当たり確認した意向へ配慮することを求めており、書式にも聴取欄と配慮の検討欄を設けるのが実務的である。
- 子の看護休暇について、書式にはどう書けばよいですか。
- 現行法では名称が子の看護等休暇に改められている。育児介護休業法16条の2第1項は対象を「九歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある子」、すなわち小学校第三学年修了前の子と定め、取得日数は1年度に5労働日、対象の子が2人以上なら10労働日を限度とする。事由には負傷・疾病の子の世話、予防接種や健康診断、学校保健安全法20条による学校の休業や19条による出席停止のほか、施行規則33条の2により入園・卒園・入学の式典その他これに準ずる式典への参加も含まれる。
出典
- e-Gov法令検索 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)
- e-Gov法令検索 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(平成三年労働省令第二十五号)
- 厚生労働省 育児・介護休業法について
- 厚生労働省 育児・介護休業等に関する規則の規定例
最終確認日: 2026-08-22
同じ分類のガイド(雇用・労務)
本ページは一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律判断ではありません。ソロイは書類作成の受託を行うものではなく、記載内容の正確性について 保証するものでもありません。実際の作成・運用にあたっては、出典の原文をご確認いただくか、 弁護士など有資格の専門家にご相談ください。