支払通知書

支払明細書、支払通知、買掛金支払明細、支払案内書 とも呼ばれます。

支払通知書は、委託事業者(発注者)が中小受託事業者(受注者)に対し、製造委託等代金の支払期日・支払金額・支払方法・控除内訳を通知する書類である。製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(中小受託取引適正化法)が明示を義務づける法定の書面又は電磁的記録ではなく、法定の明示は発注時の4条書面(4条1項=書面又は電磁的方法による明示)である。もっとも、3条の支払期日、5条の遵守事項、7条の書類等の作成及び保存の各要請に応えた記録となり、記載事項を満たして相手方(適格請求書発行事業者に限る)の確認を受ければ消費税法上の仕入明細書等としても機能する。

最終確認日:

どんなときに必要か

中小受託取引適正化法が適用される製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託で、委託事業者が製造委託等代金を支払う際に、支払期日・金額・支払方法・控除内訳を明確に伝える場面で用いる。相殺・振込手数料・源泉徴収などの控除がある取引、手形その他の支払手段を用いる取引、インボイス制度で仕入明細書方式を採る取引では、通知書の記載がそのまま法令上の評価対象になるため特に重要になる。

書面にする必要はあるか

支払通知書自体に法定の書面要件はない(証拠目的の書類である)。中小受託取引適正化法が発注時に義務づけるのは4条の明示で、4条1項は製造委託等をした場合に直ちに「中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項」を書面又は電磁的方法により明示することを求める。電磁的方法で明示した場合に中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、4条2項により遅滞なく交付しなければならない(公正取引委員会規則で定める場合を除く。違反は14条2号の罰則)。支払通知書はこの明示を代替しない。7条は「製造委託等代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録」の作成・保存を義務づけ、違反には14条の罰則がある。仕入明細書として用いる場合は消費税法30条9項3号の要件を満たす必要がある。

必ず入れる事項

  • 支払期日(給付の受領日から60日以内)

    中小受託取引適正化法3条1項は、検査をするかどうかを問わず給付を受領した日から起算して「六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」と定める。役務提供委託・特定運送委託では役務の提供を受けた日が起点になる。

  • 支払金額(製造委託等代金の額と消費税額)

    発注時の中小受託取引適正化法4条書面に明示した製造委託等代金の額との整合を確認する。金額が下回るときは、その差が合意や法令に基づく控除か、中小受託取引適正化法5条1項3号が禁じる「中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、製造委託等代金の額を減ずること」に当たるかが問われる。

  • 支払方法(手形・電子記録債権・振込の別と決済期日)

    中小受託取引適正化法5条1項2号は、支払期日経過後の不払に「手形を交付すること並びに金銭及び手形以外の支払手段であつて当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用すること」を含める。手段と現金化時期が読み取れる記載にする。

  • 控除項目の内訳と根拠(相殺・振込手数料・源泉徴収・立替金)

    控除が中小受託取引適正化法5条1項3号の減額に当たらないと示せる形にする。振込手数料の差引きは発注時の書面合意と実費の範囲内であること、源泉徴収は所得税法上の義務であることなど、項目ごとに根拠と算定方法を明記する。減額と評価されると中小受託取引適正化法6条2項の遅延利息も生じる。

  • 有償支給原材料等の対価とその控除時期

    中小受託取引適正化法5条2項1号は「当該原材料等を用いる給付に対する製造委託等代金の支払期日より早い時期に、支払うべき製造委託等代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し」といった行為を禁じる。通知書で相殺するときは控除の時期を確認する。

  • 給付内容・受領日が特定できる情報(中小受託取引適正化法4条書面との対応)

    品目・数量・受領日・注文番号を記載し、発注時の中小受託取引適正化法4条書面のどの発注に対応するかを示す。受領日が特定できなければ支払期日の60日要件も6条の遅延利息の起算日も検証できず、中小受託取引適正化法7条の保存書類としての価値も損なわれる。

  • 発行者・受領者の名称及び通知年月日

    誰が誰に宛てた通知かを特定し、支払期日の妥当性や控除の根拠が後日争われた際の証拠とする。中小受託取引適正化法7条の書類等の作成及び保存義務との関係でも、当事者と作成時点の特定は前提になる。

  • 課税仕入れの相手方(受注者)の氏名又は名称及び登録番号(仕入明細書として用いる場合)

    消費税法30条9項3号は、仕入明細書等について「当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る」と限定する。記載事項を定める消費税法施行令49条4項は、1号で書類の作成者について氏名又は名称のみを求める一方、2号で「課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号」を求める。登録番号は作成者である自社ではなく受注者のものである。施行令49条4項5号・6号の税率の異なるごとに区分して合計した支払対価の額及び適用税率、消費税額等と、確認の記録が残る欄もあわせて設ける。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 通知書上で値引き・歩引き・協力金・振込手数料負担などの名目により代金を差し引いても、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がなく発注時の書面合意にも基づかない差引きであれば、中小受託取引適正化法5条1項3号が禁じる減額に当たり得る。減額と評価されると、6条2項により、減じた日と受領日から起算して60日を経過した日のいずれか遅い日から遅延利息が発生し、通知書の記載自体が減額の日付と額を示す証拠になる。

  • 支払方法欄に手形を記載しても支払を済ませたことにはならない。中小受託取引適正化法5条1項2号は、支払期日経過後の不払に手形の交付を含めており、金銭及び手形以外の支払手段については、支払期日までに代金額に相当する金銭と引き換えることが困難なものの使用を含めている。手形やファクタリング類似の手段を通知書に書く運用は、支払期日に現金が渡っていない状態として評価される余地がある。

  • 受領日から起算して60日を超える支払期日を通知書に書いても記載どおりの効力は生じない。中小受託取引適正化法3条2項は、支払期日が定められなかったときは受領した日が、3条1項に違反して定められたときは受領日から起算して60日を経過した日の前日が、それぞれ「製造委託等代金の支払期日と定められたものとみなす」と定める。6条1項の遅延利息も、通知書記載の期日の翌日ではなく受領日から起算して60日を経過した日から発生する。

  • 有償支給した原材料等の対価を、その原材料等を用いる給付に対する製造委託等代金の支払期日より早い時期に控除する内容を通知書に記載すると、中小受託取引適正化法5条2項1号に触れ得る。代金からの相殺という形をとっても、控除の時期が支払期日より前であれば評価は変わらない。なお5条2項の柱書は、役務提供委託又は特定運送委託をした場合には1号の行為を除いており、委託類型で適用の有無が変わる。

  • 支払通知書を仕入明細書として使えるのは、相手方が適格請求書発行事業者として登録している場合に限られる。消費税法30条9項1号は「他の事業者(適格請求書発行事業者に限る。次号及び第三号において同じ。)」と定義し、この限定は仕入明細書等を定める同項3号にも及ぶ。未登録の相手方については、記載事項を満たし確認を受けても30条9項3号の書類に当たらず、30条7項により仕入税額控除の対象外になる(経過措置の有無は国税庁の案内で確認する)。未登録を理由に消費税相当額を一方的に差し引けば、中小受託取引適正化法5条1項3号が禁じる代金の減額に当たり得る。

  • 支払通知書を仕入税額控除の請求書等として用いる場合、記載事項を満たしていても相手方の確認を受けた記録がなければ消費税法30条9項3号の書類に当たらず、30条7項により仕入税額控除が受けられなくなるおそれがある。一定期間内に異議がなければ確認したものとして扱う運用を採るときも、通知が現に到達し異議申出の機会が確保されていたことを説明できる形にしておく。

  • 支払通知書をPDFやメールで授受した場合、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)2条5号の電子取引に当たり得る。電子取引の定義は取引情報を「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」に通常記載される事項とするもので、支払通知書もこれに準ずる書類に含まれる余地がある。紙に出力して電子データを破棄する運用は、7条の電磁的記録の保存義務を満たさないおそれがある。

  • 資本金区分だけを見て中小受託取引適正化法の対象外と判断すると誤る。2条8項5号は常時使用する従業員の数が300人を超える法人が300人以下の個人・法人へ製造委託等をする場合を、2条8項6号は100人を超える法人が100人以下の者へ情報成果物作成委託又は役務提供委託をする場合を、それぞれ委託事業者としている。対象外と誤認して60日超の支払期日を通知すれば、3条2項のみなし規定と6条の遅延利息が働く。

作成の流れ

  1. 1

    適用の有無と委託類型の確認

    取引が製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託のいずれに当たるかを確認する。次に中小受託取引適正化法2条8項の資本金区分で委託事業者に当たるかを判定する。区分は製造委託等が3億円・1000万円、情報成果物作成委託と役務提供委託が5000万円・1000万円だが、2条8項1号の括弧書き(「情報成果物作成委託及び役務提供委託にあつては、それぞれ政令で定める情報成果物及び役務に係るものに限る」とし、この限定は2条8項2号・5号にも及ぶ)により、プログラムの作成に係る情報成果物作成委託と、運送・物品の倉庫における保管・情報処理に係る役務提供委託(平成13年政令第5号)は3億円・1000万円の区分(1号・2号)で判定する。2条8項3号の括弧書きはこれらを5000万円区分から明文で除いている。あわせて2条8項5号・6号の従業員数基準(300人・100人)も確認する。相手方が従業員を使用しない個人事業者等ならフリーランス法3条の取引条件明示書が別に必要で、条番号を流用しない。

  2. 2

    中小受託取引適正化法4条書面との突合

    発注時に明示した給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法と、通知書の記載を一件ごとに突き合わせる。中小受託取引適正化法4条1項は製造委託等をした場合に直ちに明示することを求め、内容が定められないことにつき正当な理由がある事項は定まった後直ちに明示するとしており、支払通知書はこの明示を代替しない。発注後に単価や仕様を変えた場合は合意の時期と根拠を確認する。

  3. 3

    支払期日の算定

    給付を受領した日(役務提供委託・特定運送委託では役務の提供を受けた日)を起点に、中小受託取引適正化法3条1項に従い60日の期間内でできる限り短い期間内に支払期日を定める。検査をするかどうかは起点に影響しない。60日超や期日不記載の通知は3条2項のみなし規定の対象になり、6条1項の遅延利息は受領日から起算して60日を経過した日から発生することを前提に検証する。

  4. 4

    控除・支払手段・単価の適法性チェック

    差し引く項目ごとに根拠(書面合意・法令上の義務)と算定方法を確認し、中小受託取引適正化法5条1項3号の減額、5条2項1号の原材料等対価の早期決済、5条1項2号の手形等の支払手段に当たらないかを個別に検討する。原価が上がったのに協議に応じず一方的に代金額を決めた場合は5条2項4号に触れ得るため、単価改定の経緯も記録する。

  5. 5

    インボイス対応と確認手続の設計

    仕入明細書等として用いる場合は、課税仕入れの相手方(受注者)の氏名又は名称及び登録番号、税率の異なるごとに区分して合計した支払対価の額と消費税額など、消費税法施行令49条4項が定める記載事項を満たす。あわせて消費税法30条9項3号が求める相手方の確認について、返信欄・電子承認・異議申出期間の設定など、確認を受けた事実が記録に残る手続を用意する。

  6. 6

    交付・保存

    支払通知書を支払期日前に交付し、中小受託取引適正化法7条の書類等の作成及び保存義務との関係で取引記録として保管する。7条違反には14条の罰則が定められている。PDFやメールで授受した場合は電子帳簿保存法上の電子取引に当たり得るため電磁的記録のまま保存し、仕入明細書として用いる場合は相手方の確認を受けた記録もあわせて保存する。

専門家に相談したほうがよい場面

通知書の控除が代金の減額に当たるか、原価上昇後の一方的な単価改定が中小受託取引適正化法5条1項5号の買いたたきや5条2項4号の一方的決定に当たるかといった個別評価は、取引の経緯に左右されるため弁護士に相談してください。インボイス制度上の仕入明細書としての要件充足、源泉徴収や消費税の取扱いは税理士の領域です。違反の疑いがある場合、公正取引委員会・中小企業庁長官への申告は事業者本人が行えます。当社は行政書士・弁護士・税理士等の士業資格者を擁しておらず、支払通知書の作成受託や代理は行いません。本ガイド及び提供するツールは、利用者自身による編集・提出・締結を前提とした支援ツールです。

よくある質問

支払通知書の作成・交付は法律上の義務ですか?
中小受託取引適正化法が発注時に義務づけているのは4条の明示です。4条1項は、製造委託等をした場合に直ちに、給付の内容・製造委託等代金の額・支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示することを求めています。電磁的方法で明示した場合に中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、4条2項により遅滞なく交付しなければなりません(公正取引委員会規則で定める場合を除く)。支払時に出す支払通知書は法定書面ではなく、交付義務も様式の定めもありません。ただし7条は代金の支払その他の事項を記載・記録した書類等の作成と保存を義務づけ、違反には14条の罰則があるため、支払の記録自体は残す必要があります。
通知書に書いた支払期日が、そのまま支払期日になりますか?
受領日から起算して60日以内であれば、記載した期日が支払期日として扱われます。60日を超える期日を書いた場合や期日を定めずに通知した場合は、中小受託取引適正化法3条2項のみなし規定が優先し、期日を定めなかったときは受領した日、3条1項に違反して定めたときは受領日から起算して60日を経過した日の前日が支払期日とみなされます。6条1項の遅延利息も、通知書の期日の翌日ではなく受領日から起算して60日を経過した日から、公正取引委員会規則で定める率で発生します。
振込手数料や相殺を通知書に書けば、その控除は認められますか?
記載しただけでは根拠になりません。中小受託事業者の責めに帰すべき理由がなく、合意にも法令にも基づかない差引きは、中小受託取引適正化法5条1項3号が禁じる代金の減額に当たり得ます。振込手数料は、発注時に中小受託事業者が負担する旨を書面で合意し、かつ実費の範囲内かが分かれ目です。減額と評価されると6条2項により、減じた日と受領日から起算して60日を経過した日のいずれか遅い日から遅延利息が発生します。個別の該当性は取引の経緯によるため、疑義があれば弁護士に相談してください。
手形で支払う場合、通知書にはどう書けばよいですか?
支払手段の種類・決済期日・額面を代金額と対応づけて記載します。注意すべきは、中小受託取引適正化法5条1項2号が、支払期日経過後の不払に手形の交付を含めている点です。金銭及び手形以外の支払手段についても、支払期日までに代金額に相当する金銭と引き換えることが困難なものの使用が含まれます。期日に手形を渡しただけでは支払を終えたと評価されない構成になっているため、通知書はいつ現金として受け取れるかが読み取れる記載にし、支払手段そのものの見直しも検討してください。
仕入明細書として使う場合、相手方の確認はどう取ればよいですか?
消費税法30条9項3号は、事業者が作成する「仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類」について、「当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る」と限定しています。返信・電子承認のほか、一定期間内に異議がなければ確認があったものとして扱う運用も用いられますが、通知が相手方に到達し異議申出の機会が確保されていたことを説明できる形にしておく必要があります。記載事項の詳細や自社の運用が要件を満たすかは国税庁の案内を確認し、税理士に相談してください。

出典

最終確認日: 2026-08-23

同じ分類のガイド(取引・契約

本ページは一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律判断ではありません。ソロイは書類作成の受託を行うものではなく、記載内容の正確性について 保証するものでもありません。実際の作成・運用にあたっては、出典の原文をご確認いただくか、 弁護士など有資格の専門家にご相談ください。