取引条件明示書(フリーランス法3条書面)

フリーランス新法3条明示書面、業務委託時の条件明示書、取引条件通知書、3条書面、フリーランス・事業者間取引適正化等法の明示書面 とも呼ばれます。

取引条件明示書は、従業員を使用しない個人事業者や、代表者一人だけで従業員を使用しない法人などの「特定受託事業者」へ業務を委託したときに、発注条件を伝える書類です。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)3条1項は、業務委託をした場合は直ちに、「特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項」を書面又は電磁的方法により明示するよう義務付けています。書類の名称は法定されておらず、発注書・契約書・電子メールでも、所定の事項がそろっていれば明示に当たります。

最終確認日:

どんなときに必要か

業務委託事業者が特定受託事業者へ業務委託をする都度必要です。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)2条5項は「この法律において「業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者をいう。」と定めており、発注側に従業員がいなくても3条の明示義務はかかります。先に確認すべきは受注側で、従業員を使用しない個人か、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しない法人(同法2条1項)に当たれば対象です。

書面にする必要はあるか

法定の明示義務があります。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)3条1項は、業務委託をした場合は直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、所定の事項を書面又は電磁的方法で明示するよう義務付けています。同項ただし書は「ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。」と定めており、未定の事項について確定後に追加明示するところまでが義務の一部です。

必ず入れる事項

  • 発注者・受注者の識別表示と、業務委託をした日

    公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項1号・2号が、商号・氏名・名称または番号等で両当事者を識別できる表示と、業務委託をした日を明示事項としています。委託日が欠けると、フリーランス法3条1項の「直ちに」の明示がされたかを後から確かめられません。

  • 給付の内容(役務提供型では、提供される役務の内容)

    公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項3号の明示事項です。件名だけの発注では何を納めれば完了かが確定せず、検査や、やり直し・減額をめぐる争いの基準も失われます。仕様・数量・作業範囲まで特定します。

  • 受領・役務提供の期日と場所、検査をする場合の検査完了期日

    公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項4号〜6号の明示事項です。期日は、期間で定める場合はその期間を書きます。受領の期日が欠けると、報酬の支払期日の起算点となる受領日の見込みも立てられません。

  • 報酬の額と支払期日

    公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項7号の明示事項です。発注側が特定業務委託事業者に当たる場合、フリーランス法4条1項により、支払期日は給付を受領した日(役務提供の委託では役務の提供を受けた日)から起算して「六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において」定めなければなりません。

  • 具体的な金額を決められない場合の、報酬の算定方法

    公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条3項は、具体的な金額の明示をすることが困難なやむを得ない事情がある場合に限り「報酬の具体的な金額を定めることとなる算定方法の明示をすることをもって足りる」とします。単価と数量など、計算すれば金額が一つに定まる書き方が必要です。

  • 未定事項がある場合の、定められない理由と確定予定期日

    公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項12号は、フリーランス法3条1項ただし書により明示を後回しにする未定事項について、内容が定められない理由と、内容を定めることとなる予定期日の明示を求めています。「未定」「追って通知」とだけ書く形では足りません。

  • 手形・ファクタリング等・電子記録債権・資金移動で支払う場合の追加事項

    公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項8号〜11号は、手形はその金額及び満期、債権譲渡担保方式・ファクタリング方式等は金融機関名や貸付け・支払を受けられる額などの明示を求めています。現金振込以外の支払方法を使うときに落ちやすい欄です。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 発注はチャットで一言だけ、条件は請求段階でまとめて整理するという運用。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)3条1項は、業務委託をした場合は直ちに、書面又は電磁的方法により所定の事項を明示するよう求めています。受信者を特定して伝達する電気通信であれば明示の手段にはなりえますが、所定の事項がそろわない断片や納品後の事後整理では、明示として足りないと判断される可能性があります。

  • 決まっていない項目を「追って通知」とだけ書く雛形。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)3条1項ただし書が明示の後回しを認めるのは「その内容が定められないことにつき正当な理由があるもの」に限られ、公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項12号は、定められない理由と予定期日の記載まで求めています。内容が定まれば直ちに追加明示が必要です。

  • 発注側にも従業員がいなければ対象外、とする解説。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)2条5項の「業務委託事業者」は特定受託事業者に業務委託をする事業者をいい、従業員の使用は要件ではありません。従業員を使用する個人や、二以上の役員があり又は従業員を使用する法人である「特定業務委託事業者」(2条6項)に限られるのは支払期日の規制(4条)など後続の義務で、3条の明示義務は一人で事業を営む発注者にもかかります。

  • 6か月以上続いた取引でも、期間満了で更新しないだけなら予告は不要とする運用。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)16条1項は、特定業務委託事業者(従業員を使用する個人、または二以上の役員があり若しくは従業員を使用する法人である発注者)に対し、継続的業務委託に係る契約の解除に「契約期間の満了後に更新しない場合を含む」と明記した上で、少なくとも30日前までの予告を求めています。災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は除かれます。

  • 条件を明示しないと直ちに罰金、と書く解説。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、3条違反にはまず公正取引委員会の勧告(8条1項)があり、正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかったときに命令(9条1項)が出ます。24条が「五十万円以下の罰金に処する」と定める対象はこの命令への違反などであり、3条違反そのものに直接罰金が科される構造ではありません。

  • 支払期日を「検収完了後60日以内」とする雛形。発注側が特定業務委託事業者の場合、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)4条1項の支払期日は、給付の内容について「検査をするかどうかを問わず」、受領した日(役務提供の委託では役務の提供を受けた日)から起算して「六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において」定めなければなりません。検収完了を起算点にすると、受領日基準の60日を超えるおそれがあります。

作成の流れ

  1. 1

    当事者の適用区分を確認する

    受注側が、従業員を使用しない個人か、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しない法人か(フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)2条1項)をまず確認します。当たる場合、発注側は従業員の有無を問わず「業務委託事業者」として3条1項の明示義務を負います(同法2条5項)。発注側が従業員を使用する個人、または二以上の役員があり若しくは従業員を使用する法人なら「特定業務委託事業者」(同法2条6項)に当たり、支払期日の規制(4条1項)など後続の義務も重なります。

  2. 2

    十二の明示事項を点検する

    公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項は、①当事者の識別表示、②業務委託をした日、③給付(役務提供型では提供される役務)の内容、④受領・役務提供の期日(期間で定めるときはその期間)、⑤場所、⑥検査をする場合の検査完了期日、⑦報酬の額及び支払期日、⑧〜⑪手形・ファクタリング等・電子記録債権・資金移動による支払の追加事項、⑫未定事項の理由と予定期日、の12項目を掲げています。検査をしない場合の⑥のように、該当しない項目まで書く必要はありません。

  3. 3

    明示の方法と到達の記録を決める

    電磁的方法によるときは、公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則2条1項により、電子メールその他の受信をする者を特定して情報を伝達する電気通信による送信か、電磁的記録媒体の交付のいずれかで行い、同条2項により、事項が文字、番号、記号その他の符号で表示される方法であることが必要です。同規則1条6項は、電子メール等による明示は「特定受託事業者の使用に係る通信端末機器等により受信した時に、当該特定受託事業者に到達したものとみなす」と定めているため、送信先と送信・受信の記録を保存します。

  4. 4

    一つの発注記録にまとめる

    基本契約書に共通条件、個別の発注書やメールに金額・納期を書く場合は、受注者が一連の記録から全事項を追えるように参照関係を明記します。公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条4項により、一定期間の業務委託に共通の事項をあらかじめ書面の交付等で示したときは、その期間内の個々の明示は「あらかじめ示されたところによる旨を明らかにすることをもって足りる」とされています。どの文書のどの条件を引いているかが特定できる書き方にします。

  5. 5

    未定事項の追加明示を当初の発注と結び付ける

    未定事項の内容が定まったときは、直ちに追加明示します。公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条5項は、追加明示の際に「当初の明示との関連性を確認することができるようにしなければならない」と定めているため、当初の発注番号・委託日・件名を追加明示に記載して結び付けます。フリーランス法3条2項の書面交付の求めに備えて、明示した内容と日付は取引ごとに保存しておきます。

専門家に相談したほうがよい場面

①受注者が特定受託事業者に当たるかの判定に迷う②再委託で元委託の支払期日が絡む③報酬の減額・受領拒否・やり直し要求など明示した条件との食い違いが生じた④解除・不更新の予告や理由の開示をめぐって対立している、のいずれかであれば、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の申出窓口や、厚生労働省の委託事業であるフリーランス・トラブル110番(弁護士に無料で相談できます)、または弁護士にご相談ください。当サイトは資格者を擁さず、書類の作成代行も個別事案の法的判断も行いません。

よくある質問

業務委託契約書があれば、別に明示書を作る必要はありませんか。
明示書という独立の書類は要件ではありません。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)3条1項の明示は名称を問わず、契約書・発注書・電子メールでも、公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項の事項がそろっていれば足ります。基本契約と個別発注に分かれる場合は、同規則1条4項により、共通事項をあらかじめ示した上で、個別の発注ではあらかじめ示されたところによる旨を明らかにすれば足ります。
報酬額が発注時に決まらない場合はどうしますか。
公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条3項は、具体的な金額の明示をすることが困難なやむを得ない事情がある場合には「報酬の具体的な金額を定めることとなる算定方法の明示をすることをもって足りる」と定めています。時間単価×実働時間のように、計算すれば金額が一つに定まる算定方法を書きます。報酬以外の事項が未定のときは、同規則1条1項12号により、内容が定められない理由と、内容を定めることとなる予定期日を記載し、内容が定まった後直ちに追加明示します。
メールで明示した後、紙の書面を求められたらどうしますか。
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)3条2項は、電磁的方法により明示した場合において「特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく」交付しなければならないと定めています。例外は、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合に限られ、受注者からの電磁的方法による提供の求めに応じて明示をした場合や、既に書面の交付をしている場合などが定められています(公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則3条2項)。
どのくらい続く取引だと、解除や不更新に30日前の予告が必要ですか。
予告義務を負うのは「特定業務委託事業者」、すなわち業務委託事業者(特定受託事業者に業務委託をする事業者)のうち、従業員を使用する個人、または二以上の役員があり若しくは従業員を使用する法人です(フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)2条5項・6項)。同法16条1項の予告義務の対象は「継続的業務委託」で、同法13条1項は、特定業務委託事業者がその行う業務委託のうち政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該期間以上継続して行うこととなるものを含む)を継続的業務委託とし、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令3条は「法第十三条第一項の政令で定める期間は、六月とする。」と定めています。特定業務委託事業者が6か月以上行う業務委託を解除し、または期間満了後に更新しないときは、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合を除き、少なくとも30日前までの予告が必要です。
支払期日を書かずに発注した場合はどうなりますか。
発注側が特定業務委託事業者に当たる場合、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)4条2項により、支払期日を定めなかったときは給付を受領した日(役務提供の委託では役務の提供を受けた日)が、同条1項の規定に違反して支払期日を定めたときは受領した日から起算して60日を経過する日が、それぞれ支払期日と定められたものとみなされます。書かなければ支払が猶予されるのではなく、受領日払いの扱いになる構造です。明示漏れを防ぐ意味でも、支払期日は発注時に確定しておきます。

出典

最終確認日: 2026-08-12

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