反社会的勢力の排除に関する誓約書

反社排除誓約書、暴排条項確認書、反社会的勢力でないことの表明・確約書、暴排誓約書、反社会的勢力排除に関する誓約書 とも呼ばれます。

取引の相手方が暴力団等の反社会的勢力に該当しないこと、反社会的勢力と関係を持たないこと、不当な要求を行わないことを表明・確約する書面です。平成19年6月19日に犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして策定された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が、契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入と併せてこの書面が広く用いられる背景になっています。全国一律にこの書面の作成を義務づける法律はなく、政府指針・業界の監督指針・自治体の暴力団排除条例・契約条件に沿って内容を設計します。

最終確認日:

どんなときに必要か

新規取引の開始、基本契約の締結・更新、融資、不動産取引、建設工事の下請、入札参加などの場面で、相手方の属性についての表明を記録し、契約書側の暴力団排除条項と対にして使われます。契約書本体に表明・確約条項を置く方式でも同じ機能を果たせるため、既存契約に暴排条項がない場合の補完としてもよく用いられます。誓約書の取得は確認資料の一つであり、相手方の審査や継続的な確認を置き換えるものではありません。

書面にする必要はあるか

全国一律にこの誓約書の作成・取得を義務づける法律はありません。民法522条2項は「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と定めており、書面は、表明・確約の内容と違反時の解除等の措置を証拠化するために作るものです。他方、例えば東京都暴力団排除条例18条2項は、事業者が契約を書面により締結する場合に、相手方が暴力団関係者と判明したときは催告することなく解除できることなどの特約を契約書等に定める努力義務を置いています。義務の有無と内容は事業地・業種ごとに異なるため、適用される条例と監督指針を個別に確認します。

必ず入れる事項

  • 反社会的勢力の定義(対象となる者の範囲)

    暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条2号は、暴力団を「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」と定義します。政府指針は暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等の属性にも着目しており、どこまでを対象に含めるかを定義条項で特定しないと、解除条項の適用範囲も曖昧になります。

  • 表明・確約の基準時と対象者

    現在の該当性だけか、過去の関係(例として過去5年間)まで表明させるか、法人だけでなく役員や実質的に経営を支配する者まで対象にするかを特定します。基準時と対象者が書かれていないと、違反の有無を判定する時点と範囲が定まらず、解除の可否の判断に直結します。

  • 不当な要求行為等を行わない確約

    政府指針「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」は、暴力的な要求行為や法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要としています。脅迫的な言動や暴力、風説の流布・偽計・威力による信用毀損・業務妨害など、禁止する行為を列挙して具体化します。

  • 調査への協力と判明時の通知義務

    表明内容に疑義が生じた場合に合理的な範囲で資料の提出や報告に協力すること、表明に反する事実が判明したときは直ちに通知することを定めます。これがないと、疑義の段階で相手方の協力を求める契約上の根拠がなく、判断材料を集められません。収集する情報は目的に必要な範囲にとどめます。

  • 違反時に催告なく解除できる旨の条項

    民法541条の解除は相当の期間を定めた催告が原則で、民法542条1項が催告なしの解除を認めるのは同項各号に列挙された場合に限られます。反社会的勢力への該当はこの列挙に含まれないため、催告することなく解除できる旨を契約条項(約定解除権)として明記しないと、無催告での解除の根拠を欠くことになります。

  • 解除に伴う損害賠償・違約金と免責の定め

    民法420条3項は「違約金は、賠償額の予定と推定する」と定めるため、違約金条項を置くときは実損害の賠償との関係を明確にします。あわせて、解除により相手方に損害が生じても賠償責任を負わない旨の免責条項を置くのが一般的で、これがないと解除した側が逆に損害賠償を主張される余地を残します。

  • 元契約との関係(どの契約に効果が及ぶか)

    誓約書は単独では既存の基本契約・個別契約の解除権と自動的には接続しません。どの契約についての表明なのか、違反時にどの契約を解除できるのか、個別契約や関連契約まで及ぶのかを、元契約の暴力団排除条項と矛盾しない形で特定します。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 「相手方が反社会的勢力と判明すれば契約は当然に無効になる」と説明する雛形。契約が公序良俗に反して無効となるかは個別の評価であり、実務の枠組みは解除による契約関係の解消です。民法540条1項は「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする」と定めており、解除条項を整備した上で解除の意思表示を相手方に到達させる手続が必要です。

  • 誓約書さえあれば民法542条によりいつでも無催告解除できるという説明。民法542条1項の柱書きは「次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる」であり、無催告解除が認められるのは同項各号に列挙された場合に限られます。反社会的勢力への該当はこの列挙にないため、無催告解除は契約条項として定めておく必要があり、その上で条項と具体的事実の当てはめの評価を要します。

  • 「違約金条項を置けば実損害と別に常に全額請求できる」という記載。民法420条3項は「違約金は、賠償額の予定と推定する」と定めており、推定が覆らない限り違約金は損害賠償額の予定として扱われ、実損害の賠償と当然に併存するものではありません。実損害を別途請求する趣旨なら、違約金が違約罰である旨や、実損害が違約金の額を超える場合の扱いを明記するかどうかを検討します。

  • 全国の暴力団排除条例が同じ条番号・同じ義務を定めているかのような説明。暴力団排除条例は各都道府県が個別に制定しており、条番号も義務の内容も一律ではありません。例えば東京都暴力団排除条例18条2項が定めるのは、相手方が暴力団関係者と判明した場合に催告することなく解除できる旨などの特約を契約書等に定める努力義務であり、誓約書という書面の取得を一律に義務づける規定ではありません。事業地と取引類型に適用される現行の条例を確認します。

  • 対象を「暴力団員」だけに限る雛形。暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号の暴力団員の定義は「暴力団の構成員」であるため、この語だけでは元構成員や暴力団関係企業、総会屋などが対象から漏れます。政府指針が属性要件として挙げるのは暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等であり、定義条項でどこまで含めるかを明示します。

  • 誓約書を取得すれば相手方の確認は完了するという運用。政府指針の解説は、反社会的勢力であると完全に判明した段階のみならず、疑いが生じた段階でも関係遮断を図ることが大切としており、誓約書は確認資料の一つにすぎません。リスクに応じた公知情報の確認、取引開始後の継続的な確認、契約更新時の再確認と記録の保存を別に行い、疑義が生じたときに対応できる体制を整えます。

作成の流れ

  1. 1

    適用される指針・条例・監督指針を確認する

    平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せの「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」は、組織としての対応、外部専門機関との連携、取引を含めた一切の関係遮断、有事における民事と刑事の法的対応、裏取引や資金提供の禁止の5つを基本原則としています。これに加えて、事業地の暴力団排除条例(各都道府県が制定)と、金融・不動産・建設など業界ごとの監督指針やモデル条項を確認し、求められる措置を整理します。

  2. 2

    定義と表明・確約の範囲を設計する

    暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条の定義を核に、政府指針が挙げる暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等をどこまで含めるかを決めます。あわせて、表明の基準時(現在のみか過去も含むか)、対象者(法人の役員や実質的に経営を支配する者まで含むか)、確約させる行為(不当な要求行為・脅迫的な言動・業務妨害等)を特定します。

  3. 3

    元契約の解除・損害賠償条項と整合させる

    基本契約側の暴力団排除条項と誓約書の定義・効果がずれていると、どちらが適用されるかをめぐって争いになります。違反時に催告なく解除できる旨、解除により相手方に生じた損害を賠償しない旨を、元契約の解除条項・損害賠償条項と矛盾しない形でそろえます。違約金条項を置く場合も、民法420条2項が「賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない」と定めているため、違約金と解除・履行請求の関係を書き分けられます。

  4. 4

    取得・保管と確認の記録を残す

    誓約書の提出日と提出者、確認した公知情報や資料、社内の承認経路を記録し、契約書・誓約書とともに保存します。相手方の属性確認のために収集する個人情報は、目的に必要な範囲にとどめます。誓約書の様式は、作成日・当事者の表示・記名押印または署名を備え、法人の場合は商号と代表者名まで特定します。

  5. 5

    疑義が生じたときの手順を決めておく

    表明に反する事実がうかがわれたときに、追加の確認、取引の一時停止、解除の判断を、誰がどの順序で行うかを社内手順にしておきます。相談先には、警察、都道府県暴力追放運動推進センター(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律32条の3に基づき公安委員会が指定)、弁護士があります。解除は相手方への意思表示によって行うため、通知の方法と到達の記録の残し方もあらかじめ決めておきます。

専門家に相談したほうがよい場面

特定の相手方が反社会的勢力に該当するかどうかの調査・判断、該当を理由とする取引停止や解除通知、違約金・損害賠償の請求は、いずれも個別事案の法的評価を伴います。対応を誤ると逆に損害賠償を主張されたり、交渉の過程で不当な要求を受けたりする危険があるため、自社だけで判断せず、警察、都道府県暴力追放運動推進センター、弁護士に相談してください。当サイトは資格者を擁さず、作成代行も個別事案の法的判断も行いません。本ページは条文と公的指針の枠組みを説明するものです。

よくある質問

この誓約書の提出は法律で義務づけられていますか。
全国一律にこの名称の書面を義務づける法律はありません。民法522条2項の方式自由の原則により、契約の成立に書面などの方式は要求されないのが出発点です。ただし、各都道府県の暴力団排除条例には、東京都暴力団排除条例18条2項のように暴排特約を契約書等に定めることについて事業者の努力義務を定めるものがあり、金融・不動産・建設などでは業界の監督指針やモデル条項が実務上の標準になっています。取引先から提出を求められること自体は、こうした背景に基づく通常の実務です。
相手方が反社会的勢力と分かったら、誓約書がなくてもすぐ解除できますか。
法定解除の枠組みだけでは難しい場面があります。民法541条は「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」と催告を原則とし(ただし書により、期間を経過した時の不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できません)、民法542条1項の無催告解除は同項各号に列挙された場合に限られます。反社会的勢力への該当それ自体は債務の不履行とは別の事情であるため、違反時に催告なく解除できる旨の条項をあらかじめ置いておくことに意味があります。実際に解除通知を出す前に、事実関係の評価を含めて弁護士に相談してください。
相手方が誓約書の提出を拒んだら、反社会的勢力と考えてよいですか。
提出の拒否だけで相手方の属性を断定することはできません。政府指針の解説は、あらかじめ反社会的勢力でないことの申告を求める条項について、相手方が明確な回答をしない場合には契約自由の原則に基づき契約を締結しないことができると整理しており、締結前であれば取引を見送るという対応が可能です。提出を取引開始・継続の条件とするかどうかを社内基準で決め、疑義があるときは警察や都道府県暴力追放運動推進センターなどの公的な相談先に確認します。
違約金条項は入れたほうがよいですか。
民法420条1項は「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる」と定めており、違約金条項自体は置くことができます。ただし民法420条3項により違約金は賠償額の予定と推定されるため、実損害の賠償と併せて請求する趣旨なのか、違約金だけで清算する趣旨なのかを条項上明確にしないと、かえって請求の範囲を狭める読み方をされる余地があります。元契約に既に損害賠償条項がある場合は、重複や矛盾がないかも確認します。
相手方が暴力団関係者かどうかは、どうやって確認するのですか。
登記情報や報道などの公知情報の確認、業界団体の照会制度の利用、取引経緯の点検が出発点になります。政府指針は、反社会的勢力による被害を防止するための基本原則の一つに外部専門機関との連携を挙げており、警察、暴力追放運動推進センター、弁護士等がその例とされています。特定の相手方が反社会的勢力に該当するかどうかを自社の調査だけで断定することは避け、疑義が生じた段階でこれらの機関に相談してください。

出典

最終確認日: 2026-08-12

同じ分類のガイド(取引・契約

本ページは一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律判断ではありません。ソロイは書類作成の受託を行うものではなく、記載内容の正確性について 保証するものでもありません。実際の作成・運用にあたっては、出典の原文をご確認いただくか、 弁護士など有資格の専門家にご相談ください。