納品書

納品書兼受領書、物品受領書兼納品書、送り状、納品明細書 とも呼ばれます。

納品書は、売主・受託者が発注者へ物品や成果物を引き渡した事実と、その引渡日・品目・数量を明らかにする書類である。契約の成立要件ではなく、引渡しの事実を裏づける証拠書類だが、商法526条の検査・通知義務の起算点、民法567条の危険の移転、中小受託取引適正化法3条の支払期日はいずれも受領・引渡しの時を基準とするため、記載の精度がそのまま権利関係に効く。消費税法57条の4第1項は適格請求書となりうる書類に納品書を挙げており、電子で授受すれば電子帳簿保存法上の電子取引にも当たる。

最終確認日:

どんなときに必要か

物品の売買や業務委託で、発注者へ商品や成果物を引き渡す都度、引渡しの事実・日時・数量を書面化する場面で用いる。商人間売買で商法526条の検査期間や民法567条の危険の移転の基準日を明確にしたいとき、委託事業者として中小受託取引適正化法7条の書類作成・保存義務に対応するとき、納品書を適格請求書として交付するとき、PDFやメールで授受した記録を電子帳簿保存法に沿って保存するときにも、作成と保存が必要になる。

書面にする必要はあるか

納品書そのものは、民法・商法上、作成や交付が義務づけられた法定書面ではなく、引渡しの事実を示す証拠目的の書類である。ただし書面性が法的意味を持つ場面が三つある。消費税法57条の4第1項は適格請求書を「次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類」と定義し、適格請求書発行事業者に、課税資産の譲渡等を受ける他の事業者から求められたときの交付義務と、同条6項の写し等の保存義務を課す。中小受託取引適正化法7条は、委託事業者に給付の受領等を記載した書類等の作成・保存を義務づける。電子帳簿保存法2条5号は「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」の取引情報を電磁的方式で授受する取引を電子取引と定義し、同法7条が「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者」に電磁的記録の保存を義務づける。

必ず入れる事項

  • 納品日・受領日

    商法526条1項の検査義務は買主が目的物を受領した時から生じ、民法567条1項の危険の移転も売主が目的物を引き渡した時を基準とする。中小受託取引適正化法3条2項は、支払期日を定めなかったときは受領した日を支払期日とみなす。受領日の記載を欠くと、これら三つの起算点がいずれも証明できなくなる。

  • 品目・仕様・数量(「一式」で済ませない)

    民法562条1項は「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことを履行の追完請求の要件とする。納品書が「一式」としか書いていないと、何を基準に不適合と判断したのかを示せず、商法526条2項の通知でも不適合の内容を特定できない。

  • 受領者の署名または受領印

    誰がいつ現物を受け取ったかという引渡しの事実そのものを裏づける記載である。これを欠くと引渡し自体を否認されたときに反証できず、商法526条1項の検査期間も、中小受託取引適正化法3条1項の六十日の支払期日も起算点が定まらない。受領権限のある担当者かどうかも確認する。

  • 発注番号・契約番号等の参照

    どの注文・契約に基づく納品かを特定する記載である。これがないと複数取引が混在した場合に検収と代金請求の対象を特定できず、民法563条1項が代金減額の前提として求める「相当の期間を定めて履行の追完の催告」も、対象を欠いたまま行うことになる。

  • 適用税率・税率の異なるごとに区分した合計額

    消費税法57条の4第1項4号は、税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額と適用税率の記載を求める。納品書を適格請求書とする場合や、請求書と組み合わせて記載事項を満たす運用では、この記載を欠くと要件を満たさない。

  • 登録番号(適格請求書として交付する場合)

    消費税法57条の4第1項1号は、適格請求書発行事業者の氏名又は名称および登録番号の記載を求める。納品書を適格請求書として交付するのに登録番号がないと、受領側が仕入税額控除のために保存する書類として機能しない。

  • 検収の期限・方法の取決めの明示

    商法526条1項は買主に「遅滞なく」の検査を、同条2項は不適合を発見したときの「直ちに」の通知を求めるが、いずれも期間の長さは条文上定まっていない。検収期限と方法を書面で定めておくと、期限徒過による請求権喪失の範囲を双方が把握できる。

  • 電子で授受する場合の保存方法の確認

    電子帳簿保存法2条5号の電子取引に当たる納品書は、同法7条により電磁的記録のまま保存しなければならない。保存方法の具体は「財務省令で定めるところにより」委任されており、法律本体に検索要件が書かれているわけではないため、規則の定めを確認する必要がある。

無効・効力が否定されやすい条項

古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。

  • 納品日や受領印がなく、品目と数量だけが並ぶ納品書は、いつ誰が引渡しを受けたのかを証明できない。商法526条1項の検査義務は買主が目的物を受領した時から生じ、民法567条1項の危険の移転は売主が目的物を「引き渡した」時を基準とする。この基準日が特定できないと、検査期間が経過したのか、滅失・損傷の危険がどちらに移転していたのかを後から立証できず、納品書を提示しても証拠としての価値がほとんど残らない。

  • 納品書に受領印があれば常に危険が買主へ移ると読むのは誤りである。民法567条1項は対象を「売買の目的として特定したものに限る」と括弧書きで限定し、移転するのも「当事者双方の責めに帰することができない事由」による滅失・損傷の危険にとどまる。不特定物の売買で特定が生じていない段階や、売主側の帰責事由による損傷の場面にまで納品書を援用すると、条文の限定を外した主張になる。

  • 品目や仕様を「一式」とだけ書く納品書は、契約適合性を判定する基準として機能しない。民法562条1項は「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことを追完請求の要件とし、商法526条2項は検査で不適合を発見したとき「直ちに」通知しなければ、履行の追完・代金減額・損害賠償・解除のいずれも主張できないと定める。ただし同条3項は、不適合につき「売主が悪意であった場合には、適用しない」として、この失権効そのものを外している(民法566条ただし書・637条2項も、売主または請負人が引渡しの時に不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときを、同様に一年の通知期間の適用から外す)。何が不適合かを示せない記載は、通知を発しても内容を欠くものとして扱われかねない。

  • 商法526条1項が定めるのは「商人間の売買」における検査であり(通知義務は同条2項)、請負や業務委託の成果物納品にそのまま及ぶわけではない。請負では民法637条1項が、同法636条本文の「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物」について、注文者が不適合を知った時から一年以内に通知しないと追完請求・報酬減額・損害賠償・解除ができないと定め、非商人間の売買では民法566条が「種類又は品質」の不適合について同じく一年の通知期間を置く(両条の見出しはいずれも「目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限」である)。数量の不足はこの一年の通知期間の対象外で、民法166条1項の消滅時効による。商法526条2項も前段が「種類、品質又は数量」、後段が「種類又は品質」と書き分けられているため、取引類型と不適合の種別を取り違えて期間を当てはめると、権利を失う時点そのものを見誤る。

  • 電子データで授受した納品書を紙に出力して保管すれば足りると考え、電磁的記録を廃棄する例がある。電子帳簿保存法2条5号は「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」の取引情報を電磁的方式で授受する取引を電子取引と定義し、同法7条は所得税・法人税に係る保存義務者に電磁的記録の保存を義務づける。出力書面は電磁的記録の保存に代わるものではなく、保存の方法自体は「財務省令で定めるところにより」判断される。

  • 納品書と請求書に記載事項を分けて保存し、両者をあわせて適格請求書等保存方式の記載事項を満たす運用では、片方だけを更新すると全体として要件を欠く。消費税法57条の4第1項は適格請求書となる書類として「請求書、納品書その他これらに類する書類」を挙げ、同条6項は交付した書類の写しまたは提供した電磁的記録の保存を求める。納品書側を適格請求書として交付しながら写しを残していない取りこぼしも起きやすい。

  • 委託事業者が中小受託事業者へ製造委託等をした場合、支払期日は給付を受領した日から起算して「六十日の期間内」かつ「できる限り短い期間内」で定めなければならない(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律=中小受託取引適正化法3条1項)。遅延利息の起算点も支払期日の翌日ではなく、受領した日から六十日を経過した日である(同法6条1項)。納品書の受領日があいまいだと双方の起算点が動く。適用は資本金区分だけでなく従業員数の区分でも判定される。

作成の流れ

  1. 1

    発注内容と現物の突合

    契約書・注文書や見積書の品目・仕様・数量・納期と、実際に引き渡す物品や成果物が一致しているかを納品前に突き合わせる。相違があれば納品書を作成する前に発注者側と調整する。納品書は後日の検査・通知や代金請求の基準になるため、現物と記載がずれたまま交付すると、そのずれ自体が不適合の主張材料になる。

  2. 2

    記載事項の整備

    納品日、品目・仕様・数量、発注番号や契約番号、納品先を記載する。納品書を適格請求書として交付する場合は、消費税法57条の4第1項各号が求める登録番号、税率の異なるごとに区分して合計した金額、適用税率、消費税額等、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称まで記載する。請求書と分けて記載事項を満たす運用なら、両書類の対応関係も確認する。

  3. 3

    引渡しと受領印の取得

    現物または成果物を引き渡した際に、受領権限のある者から署名または受領印と受領日を得る。委託事業者として中小受託取引適正化法の適用を受ける取引では、給付の受領等について記載した書類等の作成・保存が同法7条により義務づけられているため、受領印付きの控えを保存体制の一部として扱う。控えは検査期間や危険の移転をめぐる争いに備えて保管する。

  4. 4

    検査の実施と不適合発見時の通知

    商人間の売買では、買主は受領後「遅滞なく」検査し、種類・品質・数量の不適合を発見したときは「直ちに」通知しなければ、履行の追完・代金減額・損害賠償・解除を主張できない(商法526条1項・2項)。ただし同条3項により、不適合につき売主が悪意であった場合にはこの失権効は適用されない。直ちに発見できない種類・品質の不適合も、「六箇月以内」に発見して通知する必要がある。請負の成果物なら、種類・品質の不適合について民法637条1項の一年の通知期間で管理する(数量の不足はこの期間制限の対象ではない)。

  5. 5

    電子で授受した場合の保存措置

    PDFやメール等で授受した納品書は電子帳簿保存法2条5号の電子取引に当たるため、同法7条により電磁的記録のまま保存する。保存の具体的な方法は「財務省令で定めるところにより」定まるので、検索性の確保や改ざん防止の措置を規則の定めに沿って設計する。紙に出力しただけで電磁的記録を廃棄しない運用にする。

専門家に相談したほうがよい場面

納品書は証拠書類であり、その記載だけで契約不適合の有無や代金請求の当否が決まるわけではない。数量・仕様をめぐる契約不適合の主張、検査・通知期間の徒過の評価、代金減額や損害賠償の可否といった個別事案の法的判断は弁護士へ、適格請求書等保存方式や電子帳簿保存法の保存要件の当てはめは税理士へ、中小受託取引適正化法の適用の有無や申告は公正取引委員会・中小企業庁の窓口へ確認するとよい。当社は士業資格者を擁さず、書類作成の受託・代理は行わない。実際には引き渡していない物品を納品済みと記載するなど、事実と異なる書類は作成しない。利用者自身が内容を確認し、編集・提出・締結することを前提とした支援ツールとして本ガイドを提供している。

よくある質問

納品書に押印は必須ですか。
納品書について押印を義務づける法令上の規定はない。受領印や署名は、誰がいつ現物を受け取ったかという引渡しの事実を裏づける証拠として意味を持つにとどまる。もっとも商法526条1項の検査義務も民法567条1項の危険の移転も受領・引渡しの時を基準とするため、受領日と受領者を特定できる記載を残す実務上の意義は大きい。押印がないことをもって引渡しがなかったことになるわけではないが、争いになったときの立証の負担は大きく変わる。
納品書だけで所有権や危険の移転を証明できますか。
民法567条1項は目的物を「引き渡した」時を危険の移転の基準としており、納品書の引渡日と受領印はその基準時を裏づける証拠になる。ただし対象は括弧書きで「売買の目的として特定したものに限る」と限定され、移転するのも「当事者双方の責めに帰することができない事由」による滅失・損傷の危険に限られる。所有権の移転時期は契約の定めと当事者の合意で決まるため、納品書だけで一律に定まるものではなく、契約書の所有権移転条項とあわせて確認する。
納品書をメールでPDF送付しただけでも保存義務は生じますか。
電子帳簿保存法2条5号は、「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」に通常記載される取引情報の授受を電磁的方式により行う取引を電子取引と定義しており、納品書はこれらに準ずる書類に当たる。PDFをメールで送付・受領すれば電子取引に該当し、同法7条により、「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者」は電磁的記録を保存しなければならない。保存の具体的方法は「財務省令で定めるところにより」定まる。
納品書と受領書は同じものですか。
一般には区別して用いられる。納品書は売主・受託者が引き渡した物品や成果物の内容を示して発注者に交付する書類で、受領書は発注者側が受け取った事実を確認して相手方に返す書類である。納品書に受領欄を設けて受領書を兼ねる運用も広く行われている。なお金銭の弁済については、民法486条1項が弁済をする者に受取証書の交付請求権を認め、同条2項はその交付に代えて内容を記録した電磁的記録の提供を請求できるとする(受領する者に不相当な負担を課するときを除く)。物品の受領書はこれとは別の書類である。
納品書をそのまま適格請求書として使えますか。
消費税法57条の4第1項は、適格請求書を「請求書、納品書その他これらに類する書類」と定義しており、同項各号の記載事項を満たせば納品書を適格請求書として交付できる。交付義務は、課税資産の譲渡等を受ける他の事業者から交付を求められたときに生じ、事業の性質上交付が困難なものとして政令で定める場合は除かれる。納品書を適格請求書として交付したときは、同条6項により、その写しまたは提供した電磁的記録を保存しなければならない。

出典

最終確認日: 2026-08-24

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