検収書・受領書
検収完了通知書、物品受領書、受領証、検収報告書 とも呼ばれます。
検収書は、発注者が納品された物品や成果物を検査し、契約の内容に適合していることを確認した事実と時期を記録する書面である。受領書は物品・書類を受け取った事実のみを証し、検査結果の適合性までは証明しない。商法526条1項は商人間の売買で買主に遅滞ない検査義務を課し、同条2項は不適合を発見したら直ちに通知しなければ追完請求等ができないと定める。両者を混同すると、この通知義務の履行や下請取引の支払期日の起算をめぐる紛争につながりやすい。
最終確認日:
どんなときに必要か
商人間の売買・請負・業務委託などで納品物や成果物を受け取った際に、受領の事実と検収完了の時期を記録し、後日の契約不適合クレームや支払遅延をめぐる紛争を防ぐために作成する。製造委託等の下請取引では、中小受託取引適正化法3条1項が支払期日を給付を受領した日から起算すると定めるため、受領日と検収日を分けて記録しておく必要性が高い。
書面にする必要はあるか
検収書・受領書そのものは、法令上作成・交付が義務付けられた書面ではない。商法526条の検査・通知義務は書面性を要求せず、口頭の通知でも履行できる。民法486条1項は「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」と定め、弁済の目的物を金銭に限っていない。物品の引渡しも債務の弁済(民法473条)であるため、納入者側は引渡しと引換えに受領書の交付を求めることができる。民法486条2項は、受取証書の交付に代えてその内容を記録した電磁的記録の提供を請求できるとしつつ、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときはこの限りでないとする。ただし中小受託取引適正化法7条は、委託事業者に給付・給付の受領・代金の支払等を記載し又は記録した書類又は電磁的記録の作成と保存を義務付け、同法14条3号は違反に五十万円以下の罰金を定める。検収書・受領書は、この記録義務を満たしつつ受領日・検査日・判定結果を残す証拠目的の書面と位置付けるべきである。
必ず入れる事項
受領日(納品日)の記載
中小受託取引適正化法3条1項は、製造委託等代金の支払期日を、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日の期間内に定めなければならないとする。検収完了日ではなく客観的な受領日を残すことが、支払期日の算定と同法7条の記録保存義務の基礎になる。
検査(検収)実施日・検収完了日の記載
商法526条1項は、商人間の売買で買主が目的物を受領したときは「遅滞なく、その物を検査しなければならない」と定める。いつ検査を実施し完了したかを記録しておくことが、同条2項の通知を適時に発した事実を裏付ける資料になる。
検査対象物の品目・数量・仕様の特定
民法566条は種類又は品質に関する不適合について通知期間を制限し、商法526条2項は種類・品質・数量の不適合を対象とする。何をどの仕様と照らして検査したかを特定しておかなければ、適合性を後日判断する基礎資料にならない。
適合・不適合の判定結果と不適合の具体的内容
商法526条2項は、商人間の売買において、検査により契約の内容への不適合を発見したときは直ちに売主へ通知しなければ、履行の追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除ができないと定める。判定結果と不適合の内容を書面に残すことが、通知を発した事実の証拠になる。
不適合を通知した日時・宛先・方法の記録欄
商法526条2項の通知は直ちに発することが要件であり、通知の有無と時期が争点になりやすい。検収書に通知の日時・宛先・手段(電子メール・書面等)を残しておけば、同項の要件を満たしたことを後日立証しやすくなる。
検収担当者の氏名・押印または署名
検収書は法定の書面ではなく証拠目的の文書であり、誰がいつ検査し判定したかの記載がなければ、後日の紛争で検査の実施自体を否認されるおそれがある。中小受託取引適正化法7条に基づく令和七年公正取引委員会規則第十号1条1項3号は、検査をした場合に「その検査を完了した日、その検査の結果及びその検査に合格しなかった給付の取扱い」を明確に記載し又は記録することを求めており、検収担当者の氏名・押印又は署名は、この判定を行った主体を裏付ける実務上の記載である(同規則は担当者の識別自体を記載事項としてはいない)。
発注書面・契約内容との対比欄
中小受託取引適正化法4条1項は、委託事業者に給付の内容・代金の額・支払期日等を書面又は電磁的方法で直ちに明示する義務を課す。検収書に発注内容との対比欄を置けば、明示された内容どおりの給付かを同法5条の遵守事項に照らして確認しやすくなる。
相手方(納入者)の受領確認欄
受領書として用いる場合、相手方が交付を受けた事実を確認する欄があれば受渡し自体の争いを防げる。民法567条1項は、目的物(売買の目的として特定したものに限る。)を引き渡した時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由で滅失・損傷した危険を買主に移すため、引渡し時期の記録は危険の分岐点になる。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
中小受託取引適正化法3条1項は、製造委託等代金の支払期日を「検査をするかどうかを問わず」給付を受領した日から起算して六十日の期間内に定めなければならないとする。検収完了日を起算点とする条項を置き、受領日から六十日を超えて支払う運用になると、同条2項により受領日から起算して六十日を経過した日の前日が支払期日と定められたものとみなされ、検収完了起算の合意は覆される。
商法526条1項は買主に遅滞ない検査義務を課し、同条2項は検査により契約の内容への不適合を発見したときは直ちに売主へ通知しなければ、履行の追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除ができないとする。検収を形だけで済ませ、又は通知を遅らせると、実際に不適合があっても買主側がこれらの権利を失う結果になりうる。
検収完了をもって一切の契約不適合責任を免れる旨を検収書に記載しても、商法526条3項は目的物が契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合に同条2項を適用しないと定め、民法566条ただし書も「売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったとき」は一年の通知制限を適用しないとする。悪意・重過失の売主には、免除の記載が及ばない場面がある。
検収基準を満たさないことを理由に受領そのものを拒む運用は、中小受託取引適正化法5条1項1号が禁じる、責めに帰すべき理由がないのに「中小受託事業者の給付の受領を拒むこと」に当たりうる。責めに帰すべき理由がないのに受領後に物を引き取らせれば同項4号の返品、責めに帰すべき理由がないのに受領後にやり直させれば同条2項3号に触れうるため、検収はいったん受領したうえで判定する建て付けにする必要がある。ただし同条1項柱書は「役務提供委託又は特定運送委託をした場合にあつては、第一号及び第四号に掲げる行為を除く」と定め、これらの委託類型では1号・4号の適用がない(同条2項柱書が除くのは2項1号のみで、2項3号のやり直し規制はこれらの委託類型にも及ぶ)。
中小受託取引適正化法7条は、委託事業者に給付の受領や代金の支払等を記載し又は記録した書類又は電磁的記録の作成・保存を義務付ける。実際の受領日と異なる日付の検収書を作るなど虚偽の記録を残した場合、同法14条3号は、書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の記録を作成したときとして五十万円以下の罰金を定めている。
中小受託取引適正化法3条1項は支払期日を受領日から六十日の期間内、かつ「できる限り短い期間内」に定めるよう求める。検収完了まで支払わない条項を置いたうえで検収作業を意図的に長期化させる運用は、この要請に反し、受領日起算という同項の趣旨を潜脱するおそれがある。検収の期限を定めずに放置すると、支払遅延の主張を招きやすい。
検査を実施していないのに検収完了と表示した書面を作ると、商法526条1項の検査を行った事実の立証に窮し、同条2項の通知を適時に発したかどうかも疑われて、契約不適合の主張自体が不利になりかねない。受領書は受け取った事実を証するにとどまり検査結果までは証明しないため、表題と実際の記載内容を一致させる必要がある。
作成の流れ
- 1
受領の事実と受領日を記録する
物品や成果物を受け取った時点で、受領日と受領した数量を受領書又は検収書に記載する。中小受託取引適正化法3条1項は支払期日を委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算すると定めており、検収の実施の有無にかかわらずこの受領日が起点になる。同法7条の記録保存義務の対象でもある。
- 2
遅滞なく検査を実施する
商法526条1項により、商人間の売買では買主は目的物を受領したら遅滞なく検査しなければならない。検査の実施日・検査方法・検査結果を具体的に記録し、いつ・誰が・何を確認したかを客観的に残しておくことが、同条2項の通知を適時に発したことの裏付けになる。
- 3
契約内容との適合性を判定する
受け取った物品・成果物が、発注書面や契約書に記載された品目・数量・仕様どおりかを検査結果と照合して判定する。商法526条2項は商人間の売買における種類・品質・数量の不適合を、民法566条は売買における種類又は品質の不適合を、民法637条1項は請負の仕事の目的物の種類又は品質の不適合を対象としており、いずれの観点で適合と判断したかを検収書に書き分けておく。
- 4
不適合があれば直ちに通知する
検査により契約の内容への不適合を発見した場合は、商法526条2項により直ちに売主へその旨を通知しなければ、履行の追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除ができなくなる。通知の日時・宛先・方法を記録し、電子メールで通知したときは送信記録も併せて保存する。
- 5
検収書を作成し記録として保存する
検収担当者の氏名・受領日・検査日・判定結果を記載した検収書を作成し、発注書面との対比とあわせて保存する。中小受託取引適正化法7条は委託事業者に書類又は電磁的記録の作成・保存を義務付けており、電子データで授受した場合は電子帳簿保存法2条5号の電子取引にも当たり得る。
専門家に相談したほうがよい場面
検収基準の設計、検収の遅延と支払期日の関係、契約不適合責任を制限する条項の有効性、中小受託取引適正化法の適用可否(資本金の額のほか、常時使用する従業員数三百人・百人という同法2条8項5号・6号の基準を含む)の判定は、個別の契約内容と取引実態に即した法的評価を要するため弁護士に、電子帳簿保存法上の保存要件は税理士に、印紙税の課否・税額は所轄税務署(国税庁)にご相談ください。当社は士業資格者を擁しておらず、検収書・受領書その他の書類について作成の受託や代理での作成は行いません。実際の受領・検査の事実と異なる内容の書面も作成しません。本ガイドは、利用者ご自身による編集・確認・運用を前提とした一般的な情報提供です。
よくある質問
- 検収書と受領書はどう違いますか。
- 受領書は物品や書類を受け取った事実のみを証する書面です。検収書は、受け取った物品・成果物を検査し、契約の内容に適合しているかを判定した結果まで記録する書面で、商法526条1項の検査義務を履行したことを裏付ける資料になります。両者は証明する事実が異なるため、実際に検査をしていないのに検収書という表題を用いると、同条2項の通知を適時に発したかどうかの立証で不利になるおそれがあります。
- 検収完了日を支払期日の起算点にできますか。
- 中小受託取引適正化法の適用がある取引では、同法3条1項が支払期日を委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日の期間内に定めることを求め、検査をするかどうかを問わないとしています。検収完了日を起算点とする条項を置いても、受領日から六十日を超える運用になれば、同条2項により受領日から起算して六十日を経過した日の前日が支払期日とみなされます。適用の有無は資本金の額や従業員数の区分によるため、個別の取引形態に応じた確認が必要です。
- 検収後に不具合が見つかった場合、もう請求できませんか。
- 商人間の売買では、商法526条2項が、直ちに発見することができない種類又は品質の不適合について、買主が六箇月以内に発見したときも直ちに通知しなければならないとしています。商人間でない売買では民法566条により、買主が不適合を知った時から一年以内に通知すれば足ります。ただし売主が引渡しの時に不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、同条ただし書によりこの期間制限は適用されません。なお、商法526条は条文上「商人間の売買」を対象とする規定であり、請負の仕事の目的物には適用されません。請負では、民法636条本文にいう種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物について民法637条1項が適用され、注文者がその不適合を知った時から一年以内に請負人へ通知しないときは、履行の追完の請求・報酬の減額の請求・損害賠償の請求・契約の解除ができません。民法637条2項は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人がその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは適用しないとしています。
- 検収書に押印や署名は必須ですか。
- 検収書は法令上作成が義務付けられた書面ではなく、検査の実施と判定結果を証拠として残すための文書です。押印や署名それ自体は法律上の要件ではありません。もっとも、誰がいつ検査し判定したかを明確にしておかなければ、後日の紛争で検査の実施自体を否認されるおそれがあるため、実務では検収担当者の氏名と署名又は押印を残す運用が広く用いられています。電子的に授受する場合は、送信記録や承認ログを残す方法も考えられます。
- 検収書や受領書をPDFやメールでやり取りした場合、保存はどうなりますか。
- 検収書や受領書を注文書・見積書などと同様にPDFや電子メールで授受した場合、電子帳簿保存法2条5号の「電子取引」に当たり得ます。同号は、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項の授受を電磁的方式により行う取引をいうと定義しています。同法7条は、所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者が電子取引を行った場合に電磁的記録の保存を義務付け、具体的な保存方法は財務省令に委任しています。税務上の取扱いは税理士にご確認ください。
出典
- e-Gov法令検索 商法(第526条・買主による目的物の検査及び通知)
- e-Gov法令検索 民法(第473条・第486条、第566条・第567条、第636条・第637条)
- e-Gov法令検索 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第3条・第5条・第7条・第14条)
- e-Gov法令検索 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(令和七年公正取引委員会規則第十号・第1条)
- 公正取引委員会 取適法(中小受託取引適正化法)
- 国税庁 電子帳簿保存法関係(法令解釈通達・一問一答)
最終確認日: 2026-08-27
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