注文書(発注書)・注文請書の書き方と契約成立・印紙税の注意点
発注書、注文請書、注文書兼請書、発注請書、注文確認書 とも呼ばれます。
注文書(発注書)は取引の申込み、注文請書はこれに対する承諾で、両者がそろって契約が成立します(民法522条1項)。契約の成立に書面は要らず(同条2項)、注文書・注文請書は本来、取引条件を証拠として残す実務慣行です。ただし資本金・従業員数の区分で中小受託取引適正化法(旧下請法)が適用される製造委託等では、発注側が出す注文書が同法4条1項の明示書面を兼ねる法定の書面になります(明示義務は委託事業者に課されるため、受注側が作る注文請書はこれに当たりません)。商法509条のみなし承諾と印紙税の要否も、実務上の分かれ目です。
最終確認日:
どんなときに必要か
継続的な仕入れ・外注などのBtoB取引で、個別の発注ごとに注文書を送り、相手方が注文請書で引き受ける場面で使います。基本契約書を結んだ取引で個別契約の成立時期を明確にしたいとき、商人間の売買で商法509条のみなし承諾を避けたいとき、資本金3億円超や常時使用する従業員300人超といった区分で中小受託取引適正化法の対象となる製造委託等を発注するときに特に重要です。
書面にする必要はあるか
一般の売買・請負では法定の書面要件はなく、注文書・注文請書は証拠目的の実務慣行です。民法522条2項は「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と定めています。例外は一つではありません。中小受託取引適正化法4条1項は委託事業者に、給付の内容・製造委託等代金の額・支払期日及び支払方法その他の事項を「直ちに」「書面又は電磁的方法」により明示するよう義務付け、違反には同法14条1号により50万円以下の罰金が定められています。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)3条1項も、発注側の資本金・従業員数を問わず、相手方が特定受託事業者(従業員を使用しない個人など)であれば同様の明示義務を課します。建設工事の請負は中小受託取引適正化法2条4項の括弧書きで役務提供委託から除かれますが、代わりに建設業法19条1項が工事内容・請負代金の額など同項各号の事項を「書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」と定めており(同条3項の電磁的方法には相手方の承諾が必要)、注文書・注文請書だけで済ませられる取引ではありません。
必ず入れる事項
当事者の名称・住所(発注者・受注者の法人格)
契約は「契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示」(民法522条1項)への承諾で成立するため、申込者と承諾者を特定できなければ、誰と誰の間で意思表示が合致したのかが争いになります。グループ会社間の発注では、法人格が違えば債務者も別人です。
給付の内容(品目・仕様・数量)
内容が特定されない申込みは、相手方が承諾しても契約内容が定まりません。中小受託取引適正化法4条1項も「中小受託事業者の給付の内容」を明示事項の筆頭に挙げており、型番・仕様書の版・数量まで具体的に書く必要があります。
代金の額(単価・数量・消費税の扱い)
代金額は契約の核心で、定まらなければ承諾があっても内容が確定しません。中小受託取引適正化法4条1項は「製造委託等代金の額」を明示事項とし、同法5条1項5号は通常支払われる対価に比し著しく低い額を不当に定める買いたたきを禁じています。
納期・引渡し(役務提供)の時期と場所
履行遅滞の起算点になります。中小受託取引適正化法3条1項は支払期日を、委託事業者が給付を受領した日(役務提供委託・特定運送委託では、中小受託事業者から役務の提供を受けた日)から起算して「六十日の期間内」かつ「できる限り短い期間内」で定めるよう求めており、引渡時期の特定が金銭債務の期限にも直結します。
支払期日・支払方法
中小受託取引適正化法3条2項は、支払期日を定めなかったときは受領日(役務提供委託・特定運送委託では役務の提供を受けた日)が、60日を超えて定めたときは受領日から起算して60日を経過した日の前日が支払期日と「定められたものとみなす」と規定します。合意したつもりの期日が自動的に引き直されます。
検収・受領の方法と受領日の確定
受領日(役務提供委託・特定運送委託では役務の提供を受けた日)は中小受託取引適正化法3条1項が定める60日カウントの起点であり、同法6条1項の遅延利息も「給付を受領した日から起算して六十日を経過した日」から発生します。商人間の売買では商法526条1項の検査義務の起点にもなります。
注文書の内容をそのまま引き受ける旨の承諾文言(注文書番号・日付の引用)
承諾者が申込みに条件を付し変更を加えて承諾すると、民法528条により申込みの拒絶と新たな申込みをしたものとみなされます。注文請書を返しただけでは契約が成立せず、発注側の再承諾がないまま作業が進むおそれがあります。
申込みの有効期間(承諾期間)
民法523条1項は承諾期間を定めた申込みを撤回できないものとし、同条2項は期間内に承諾の通知を受けなかったときは申込みが効力を失うと定めます。期間を定めないと民法525条1項により相当な期間は撤回できず、価格変動リスクを抱え込みます。
中小受託取引適正化法4条の明示事項一式(該当する場合)
中小受託取引適正化法4条1項は、給付の内容・代金の額・支払期日及び支払方法その他の事項を「直ちに」明示するよう義務付けます。先送りできるのは内容が定められないことにつき「正当な理由」がある事項に限られ、怠れば同法14条1号の罰則対象です。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
民法528条は「承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす」と定めます。単価や納期を一箇所でも書き換えた注文請書は承諾ではなく新たな申込みであり、発注側が改めて承諾しない限り契約は成立しないまま作業だけが進み、後になって発注の事実自体を争われる余地を残します。
商法509条1項は「商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない」と定め、同条2項は「商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす」とします。社内検討中のつもりの沈黙が、受注確定に転じます。
商人間の売買では商法526条1項が買主に受領後「遅滞なく」の検査義務を課し、同条2項は、不適合を発見したのに「直ちに」通知を発しなければ「履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除」ができないと定めます。直ちに発見できない種類・品質の不適合も「六箇月以内」の発見・通知が必要です(売主が悪意なら同条3項で適用外)。検収期限と通知方法を定めないと権利自体が失われます。
中小受託取引適正化法4条1項は、給付の内容・製造委託等代金の額・支払期日及び支払方法その他の事項を「直ちに」明示するよう義務付け、先送りできるのは内容が定められないことにつき「正当な理由」がある事項に限られます。明示を怠ると同法14条1号により違反行為をした代表者・使用人等が50万円以下の罰金に処せられ、同法16条の両罰規定により法人自身にも各本条の刑が科されます。同法5条違反があれば同法10条の勧告の対象にもなります。
中小受託取引適正化法3条1項は支払期日を、受領日(役務提供委託・特定運送委託では役務の提供を受けた日)から起算して「六十日の期間内」かつ「できる限り短い期間内」で定めるよう求め、同法3条2項は、これに違反して定めたときは受領日から起算して60日を経過した日の前日が支払期日と「定められたものとみなす」とします。さらに同法6条1項の遅延利息は支払期日の翌日ではなく「給付を受領した日から起算して六十日を経過した日」から起算されます。
中小受託取引適正化法4条2項は、電磁的方法で明示した場合に中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、公正取引委員会規則で定める場合を除き「遅滞なく」交付しなければならないと定めます。旧下請法が電磁的方法に下請事業者の承諾を求めていた構造は改められ、受託側の書面交付請求権に置き換わっているため、承諾を得たから足りるという運用は誤りで、同法14条2号の罰則対象です。
印紙税法別表第一の通則5は、第一号・第二号等の「契約書」に、「念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書」であって「当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているもの」を含めます。請負契約の成立を証する注文請書は2号文書となり得て、作成者に納税義務があり(同法3条1項)、貼付を怠ると同法20条1項により本来の税額とその2倍相当額の合計、実質3倍の過怠税を徴収されます。
作成の流れ
- 1
取引の性質と基本契約の有無を確認する
個別取引が売買か請負か、単発か継続的か、基本契約書を既に締結しているかを確認します。基本契約に個別契約の成立方法(注文書到達後一定期間内に異議がなければ承諾とみなす等)の定めがあればそれが優先します。民法527条は「申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する」と定めており、基本契約や業界慣行がこの受け皿になります。
- 2
中小受託取引適正化法の適用有無を資本金と従業員数の両方で判定する
資本金基準は、製造委託等が3億円超対3億円以下・1000万円超3億円以下対1000万円以下、情報成果物作成委託と役務提供委託が5000万円超対5000万円以下・1000万円超5000万円以下対1000万円以下です(中小受託取引適正化法2条8項1号から4号)。ただし同項1号の括弧書きにより、政令(平成13年政令第5号)が定める情報成果物=プログラムと、役務=運送・物品の倉庫における保管・情報処理は、同項3号の括弧書き(4号にも及びます)で5000万円の区分から明文で除かれ、1号・2号の3億円・1000万円の区分で判定します。たとえば資本金4億円の会社が資本金1億円の会社に情報処理を委託する取引は、5000万円の区分では対象外に見えて、実際には同項1号の委託事業者に当たります。加えて同項5号・6号は、常時使用する従業員の数が300人超(製造委託等)・100人超(それ以外の情報成果物作成委託と役務提供委託)の法人たる事業者も委託事業者としており、資本金だけで対象外と判定することはできません。
- 3
注文書(申込み)を作成し、記載事項を確定する
当事者、給付の内容・仕様・数量、代金の額、納期と引渡場所、支払期日・支払方法、検収方法、申込みの有効期間を記載します。中小受託取引に該当する場合は、記載事項を中小受託取引適正化法4条1項の列挙事項および公正取引委員会規則と突き合わせ、製造委託等をしたら直ちに書面又は電磁的方法で明示できる形に整えます。
- 4
注文請書(承諾)を作成・返送する
対応する注文書の番号と日付を引用し、その内容をそのまま引き受ける旨を明記します。単価・納期・支払条件を書き換えると民法528条により承諾ではなく新たな申込みとみなされるため、条件を変えたいときは注文請書に書き込まず、変更後の条件について改めて相手方の承諾を得ます。商人間で平常取引がある場合、この返送は商法509条1項の諾否通知も兼ねます。
- 5
印紙税の要否を判定し、必要なら貼付・消印する
注文請書だけでなく、注文書の記載内容も印紙税法別表第一の課税物件に当たるかを判定します。同表の通則5は「契約書」を「名称のいかんを問わず」契約の成立等を証すべき文書とし、「念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書」で当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含みます。基本契約に注文書の到達だけで個別契約が成立する定めがあり別途注文請書を作成しない場合は、注文書のほうが請負契約の成立を証する2号文書に当たり得ます(別途注文請書を作成することが定められていれば、課税文書となるのは注文請書だとされています)。課税文書の作成者は同法8条1項により作成の時までに相当印紙を貼り付け、同条2項により彩紋にかけて判明に消さなければなりません。税額の自己判断は避け、記載内容を示して所轄税務署や国税庁の相談窓口で確認してください。
- 6
授受した書面・電磁的記録を保存する
注文書・注文請書をPDFやメールで授受した場合、電子帳簿保存法2条5号の「電子取引」に当たり得ます。同法7条は「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない」と定め、保存方法の具体は財務省令に委ねられています。中小受託取引に該当する場合は、中小受託取引適正化法7条の書類等の作成・保存義務も併せて履行します。
専門家に相談したほうがよい場面
当社は弁護士・税理士・行政書士等の士業資格者を擁さず、注文書・注文請書の作成受託や代理、取引先との交渉の代行は行いません。本ガイドは利用者ご自身による作成・締結を前提とした一般的な制度解説です。個別の取引が中小受託取引適正化法の対象に当たるかの判断や、条項の効力の評価は弁護士に、印紙税の課否・税額は所轄税務署(国税庁)に、消費税の税額判定や電子帳簿保存法上の保存方法は税理士にご相談ください。買いたたき・減額など同法5条違反や、独占禁止法上の優越的地位の濫用が疑われる取引は、公正取引委員会・中小企業庁への相談や申告も、事業者本人が行える選択肢です。
よくある質問
- 注文書だけ送って、相手から返事がなければ契約は成立しませんか。
- 民法522条1項により、契約は申込みに対する承諾があって成立するため、原則として注文書だけでは成立しません。ただし商法509条1項は「商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない」と定め、同条2項は通知を怠った商人は申込みを承諾したものとみなすとします。相手が商人か、平常取引をする者か、その営業の部類に属する申込みかで結論が変わり得ます。なお商法510条は、申込みを拒絶した場合でも申込みとともに受け取った物品を申込者の費用で保管する義務を定めています(同条ただし書により、物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この義務を負いません)。
- 注文請書に収入印紙は必ず必要ですか。
- 一律には決まりません。課税されるのは印紙税法別表第一に掲げられた課税文書だけで、請負に関する契約書は2号文書です。同表の通則5は「契約書」に「念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書」で当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含めるため、注文請書も記載内容次第で課税文書になり得ます。物品の売買にとどまる内容か請負を含むかで判定が分かれ、個別の税額判定は税理士業務にあたるため、記載内容を示して所轄税務署や国税庁の相談窓口に確認してください。
- 基本契約書がある取引で、個別の注文はいつ契約が成立したことになりますか。
- 基本契約に個別契約の成立方法の定め(注文書到達後一定期間内に異議がなければ承諾したものとみなす条項など)があれば、それに従います。民法527条は「申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する」と定めており、基本契約や業界の慣行がこの受け皿になります。定めがなければ、承諾である注文請書が到達した時点で成立時期を判断することになります。なお承諾期間を定めた注文書は、民法523条2項によりその期間内に承諾の通知を受けなければ効力を失います。
- 自社は下請法(現在の中小受託取引適正化法)の対象になりますか。
- 旧称の下請代金支払遅延等防止法は、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(中小受託取引適正化法)に改められ、親事業者は委託事業者、下請代金は製造委託等代金と呼びます。資本金の区分(製造委託等は3億円超と1000万円超、情報成果物作成委託・役務提供委託は5000万円超と1000万円超)に加え、同法2条8項1号の括弧書きにより、政令で定める情報成果物・役務(プログラム、運送、物品の倉庫における保管、情報処理)に係る情報成果物作成委託・役務提供委託は、同項3号の括弧書き(4号にも及びます)で5000万円の区分から明文で除かれ、同項1号・2号の3億円超・1000万円超の区分で判定します。さらに同項5号・6号により、常時使用する従業員の数が300人を超える法人たる事業者が300人以下の個人・法人へ製造委託等をする場合、100人を超える法人たる事業者が100人以下の個人・法人へ情報成果物作成委託・役務提供委託をする場合も委託事業者に当たります(従業員数基準で委託事業者になるのは法人に限られます)。実務でいう3条書面は、現行法では同法4条1項の明示書面です。
- 注文請書を出さずに黙って作業に着手してもよいですか。
- 商人間で平常取引をしている相手からの申込みであれば、商法509条1項により遅滞なく諾否の通知を発する義務があり、怠れば同条2項で承諾したものとみなされます。着手という事実が民法527条の「承諾の意思表示と認めるべき事実」に当たる場合もありますが、いずれも条件面の認識違いを残します。また発注側から見ると、中小受託取引適正化法4条1項の明示は製造委託等をしたら直ちに行う必要があり、請書の有無とは関係なく義務が生じます。着手前に書面かメールで引受けの意思と条件を確定させるのが安全です。
出典
- 民法(e-Gov法令検索)
- 商法(e-Gov法令検索)
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(e-Gov法令検索)
- 建設業法(e-Gov法令検索)
- 中小受託取引適正化法(取適法)関係|公正取引委員会
- No.7102 請負に関する契約書|国税庁タックスアンサー
- 電子帳簿保存法関係|国税庁
最終確認日: 2026-08-27
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