著作物利用許諾契約書(ライセンス)の解読ガイド
ライセンス契約書、利用許諾契約書、著作権ライセンス契約書 とも呼ばれます。
著作物利用許諾契約書は、著作権そのものを移す契約ではなく、著作権法63条1項に基づき、特定の著作物の利用を媒体・地域・期間・用途・改変の可否で区切って認める契約です。63条2項は、許諾を得た者が利用できる範囲を許諾に係る利用方法及び条件の範囲内に限るため、範囲の書き方がそのまま権利の輪郭になります。譲渡型と混同すると、61条2項の27条・28条特掲や著作者人格権の扱いまで設計がずれます。
最終確認日:
どんなときに必要か
写真、文章、イラスト、動画、音源、ソフトウェア、デザインを権利者から借りて、広告、商品、Webサイト、アプリ、出版物などに使う場面で必要になります。独占利用、二次利用、改変、再許諾、契約終了後の掲載継続を予定する場合、口頭の合意だけでは範囲の争いが残ります。制作委託と利用許諾を同じ書面で扱うときは、権利の帰属と利用範囲を分けて書く必要があります。
書面にする必要はあるか
著作権法63条1項は「著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。」と定めるだけで、法定の書面要件はありません(証拠目的)。63条2項は利用できる範囲を「その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において」と限定するため、範囲を書面に残さないと、許諾の範囲を利用者側が示せません。制作委託を伴う場合、相手方がフリーランス法2条1項の特定受託事業者(「個人であって、従業員を使用しないもの」又は「法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」。役員は理事・取締役・執行役・業務を執行する社員・監事・監査役等)に当たるなら、フリーランス法3条1項により給付の内容・報酬の額・支払期日等を直ちに書面又は電磁的方法で明示する義務が別に生じます。
必ず入れる事項
対象著作物の特定
どの写真、原稿、デザイン、プログラムが対象かが不明だと、許諾された利用と無断利用を分ける基準が失われます。著作権法63条2項は許諾に係る利用方法及び条件の範囲内でのみ利用できると定めるため、対象物の特定が範囲判断の出発点になります。
利用方法及び条件の範囲(媒体・地域・期間・用途)
Web掲載、印刷、屋外広告、配信、販売物への組込みを分けて書かないと、想定外の利用まで含むか争いになります。著作権法63条2項が「その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において」と限定する以上、範囲外の利用は許諾に基づかない利用として扱われます。
独占的許諾か非独占的許諾かの別
独占か非独占かを書かないと、権利者が第三者にも同じ著作物を使わせられるかが定まりません。著作権法61条1項の譲渡と違い、許諾では著作権が権利者に残るため、利用者の排他的な地位は契約条項でしか作れません。
改変・翻案の可否と範囲
トリミング、色調補正、要約、翻訳、動画編集を予定するなら明記が必要です。著作権法27条は「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と定め、翻案は許諾範囲に入れなければ及びません。
著作者人格権の不行使の範囲
著作権法59条は「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。」と定めます。譲渡条項では処理できないため、公表権18条、氏名表示権19条、同一性保持権20条について、どの場面で行使しないかを特定して書きます。
再許諾・委託先利用・利用権の承継
著作権法63条3項は、利用権は「著作権者の承諾を得ない限り、譲渡することができない。」と定めるため、利用権の承継には著作権者の承諾が要ります。再許諾と委託先利用は譲渡ではなく63条2項の利用方法及び条件の問題なので、広告代理店、制作会社、グループ会社、配信基盤に使わせる予定があるなら、その旨を明文で置きます。
クレジット表示の方法
著作権法19条は氏名表示権を定めます。表示の要否、名義、媒体ごとの表示方法を決めていないと、掲載のたびに個別の合意が要ります。表示を省く運用を予定するなら、不行使の合意の範囲として書き分けます。
対価・支払条件と契約終了後の取扱い
ロイヤリティか固定報酬か、売上連動か無償かを書かないと、利用範囲や継続利用の対価で争いになります。終了後の掲載停止、印刷済み在庫、配信済み広告の扱いは、著作権法63条2項の範囲を時間軸で区切る問題です。
著作隣接権(実演・レコード)の処理
音源や映像では、楽曲や脚本の著作権とは別に著作隣接権が働きます。著作権法91条1項は「実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。」、96条は「レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する。」と定め、送信可能化は92条の2第1項と96条の2が別に定めます。103条は63条をこれらの利用の許諾に準用するため、著作権者の許諾書だけでは実演家と原盤権利者の許諾は揃いません。
許諾権限についての表明・保証
素材に第三者の写真やフォントが混ざっていると、許諾者が許諾できる範囲を超えます。著作権法65条2項は共有著作権の行使に共有者全員の合意を求めるため、共同制作物では誰が許諾できるかの確認が要ります。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
『利用許諾』の表題なのに本文で著作権を全部譲渡すると書くと、譲渡型と許諾型が混在します。著作権法61条2項は「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」と定めるため、特掲を欠く譲渡条項では、翻案権と二次的著作物の利用に関する権利が譲渡人に留保されたと推定されます。推定であって、みなす規定ではありません。
『著作者人格権も譲渡する』という条項は、著作権法59条が「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。」と定めるため、譲渡としての効力を生じません。人格権を処理するには、公表権18条、氏名表示権19条、同一性保持権20条について、対象・場面・期間を特定した不行使の合意が必要です。『一切行使しない』とだけ置く例は、範囲が広すぎるとして効力を争われることがあります。
改変自由とだけ書くと、著作権法20条1項の「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」との関係が残ります。20条2項4号の例外は「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に限られ、広告都合のトリミングが当然に入る規定ではありません。許す改変を種類ごとに列挙します。
放送や配信の許諾を得れば録音・録画までできると読むのは誤りです。著作権法63条4項は「著作物の放送又は有線放送についての第一項の許諾は、契約に別段の定めがない限り、当該著作物の録音又は録画の許諾を含まないものとする。」と定めます。アーカイブ配信、見逃し配信、素材としての再利用を予定するなら、録音・録画と二次利用の可否を契約で明示します。
代理店や制作会社に使わせることを当然の前提にする条項は危険です。著作権法63条2項は「その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において」利用できると定めるため、第三者に使わせる旨を書いていなければ、再許諾も委託先利用も許諾範囲に入りません。グループ会社への展開や外部の配信基盤の利用があるなら、利用方法及び条件として明記します。著作権法63条3項は、利用権は「著作権者の承諾を得ない限り、譲渡することができない。」と定めるため、事業譲渡や会社分割でライセンスを承継させる予定があるなら、承継の可否を別に書きます。
共同制作物では、著作権法65条2項が「共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。」と定めるため、一部の共有者だけからの許諾では範囲が揺らぎます。外注制作物についても、15条1項は「その法人等の業務に従事する者」が職務上作成することを要件とするため(プログラムの著作物は15条1項の括弧書きで除かれ15条2項が定めますが、15条2項も「その法人等の業務に従事する者」であることを要します)、外注先は原則としてこれに当たらず、発注者に著作権が当然に発生するわけではありません。
『許諾者が著作権を第三者に譲渡したときは本契約は当然に終了する』という条項は、利用者に不利に働きます。著作権法63条の2は「利用権は、当該利用権に係る著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。」と定め、令和2年改正で当然対抗の仕組みが置かれました。終了条項を置くと、この保護を契約で自ら外すことになります。
作成の流れ
- 1
権利者と対象著作物を確定する
作品名、ファイル、納品物、版、素材一覧を特定し、許諾者がその範囲の権利を持つかを確認します。共同制作物では著作権法65条2項が共有者全員の合意を求め、外注制作物では15条1項の職務著作(プログラムの著作物は15条2項)が原則として働かないため、権利の出所を締結前に押さえます。
- 2
譲渡か許諾かを先に固定する
権利を移すのか、使うことだけを認めるのかを最初に決めます。著作権法63条1項が許諾の根拠を置き、61条2項は譲渡契約で27条又は28条の権利を特掲しない場合の留保推定を置きます。どちらの型を選ぶかで、書くべき条項がまるごと変わります。
- 3
利用方法及び条件を書き切る
媒体、地域、期間、用途、部数や表示回数、独占性、クレジット表示を列挙します。著作権法63条2項は許諾に係る利用方法及び条件の範囲内でのみ利用できると定めるため、書き落とした利用は許諾外として扱われる余地が残ります。放送・有線放送では、著作権法63条4項が別段の定めがない限り録音・録画の許諾を含まないとする初期値を置いているので確認します。放送同時配信等については63条5項が別に推定規定を置いています。
- 4
改変と著作者人格権を処理する
翻訳、編集、トリミング、色変更、レイアウト変更、生成AIへの入力、派生物の作成について、可否と範囲を列挙します。著作者人格権は著作権法59条により譲渡できないため、18条、19条、20条に関する不行使の合意として、対象と場面を特定して書きます。
- 5
第三者利用と終了後の残存を決める
代理店、制作会社、販売店、配信基盤への展開は、著作権法63条3項が利用権の譲渡に著作権者の承諾を求めることを踏まえ、再許諾と委託先利用を明文にします。終了時のWeb掲載停止、印刷済み在庫の販売、配信済み広告やSNS投稿の削除も決めます。
専門家に相談したほうがよい場面
独占許諾、海外展開、映像化や商品化、再許諾とライセンスの承継、共同制作、権利者不明、侵害警告への対応は、条項設計と個別事案の判断が必要になるため、弁護士へ相談してください。契約書の作成代理や交渉代理は弁護士法72条に関わります。当社は士業資格者を擁さず、契約書作成の受託・代理、交渉代理、個別紛争の判断は行いません。本ガイドは、利用者ご自身が編集し、締結することを前提とした支援ツールとして、条項の一般的な意味を説明するものです。ロイヤリティの源泉徴収や消費税の扱いは税理士へ相談してください。
よくある質問
- 著作物利用許諾契約書は必ず書面で作る必要がありますか。
- 著作権法63条1項は「著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。」と定めるだけで、書面を成立要件にしていません。法定の書面要件はない(証拠目的)と整理できます。もっとも63条2項は利用できる範囲を許諾に係る利用方法及び条件の範囲内に限るため、書面がないと利用者が範囲を示せません。制作委託を伴い、相手方がフリーランス法2条1項の特定受託事業者(従業員を使用しない個人、又は一の代表者以外に他の役員がなく従業員も使用しない法人)なら、フリーランス法3条1項の明示義務が別に生じます。
- 著作権譲渡契約書とは何が違いますか。
- 譲渡は権利そのものを移す型で、著作権法61条1項は「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。」と定めます。さらに61条2項により、27条又は28条に規定する権利を譲渡の目的として特掲しないと、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます。利用許諾は63条1項に基づき、権利を移さずに一定範囲の利用だけを認める型です。独占許諾でも著作権は権利者に残ります。
- 許諾を受けた後に著作権が第三者へ譲渡されたら使えなくなりますか。
- 著作権法63条の2は「利用権は、当該利用権に係る著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。」と定めます。登録などの手続を経なくても、著作権を取得した者に対して利用権を主張できる仕組みです。ただし対抗できるのは許諾された範囲に限られます。契約書に『著作権が譲渡されたら本契約は終了する』といった条項があれば、その条項の効力が別に争点になります。
- 改変を許すなら何を書けばよいですか。
- 翻訳、トリミング、色調補正、要約、編集、動画化、テンプレート化など、許す改変を具体的に列挙します。著作権法27条の翻案権が及ぶ利用は、許諾範囲に入れなければ及びません。20条1項は著作者の意に反する変更、切除その他の改変を受けない権利を定め、20条2項4号の例外は「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に限られます。改変可の一語では足りません。
- 外注で作ってもらった作品は発注者が自由に使えますか。
- 外注だから当然に発注者のものになるとは限りません。著作権法15条1項は「その法人等の業務に従事する者」が職務上作成することを要件とするため、外注先は原則として当たりません。プログラムの著作物は15条1項の括弧書きで除かれ15条2項が定めますが、15条2項も「その法人等の業務に従事する者」であることを要します。契約で譲渡を受けるか、利用許諾の範囲を定める必要があります。譲渡を受けるなら61条2項の特掲を、許諾にとどめるなら63条2項の利用方法及び条件を、それぞれ書き切ります。
出典
最終確認日: 2026-08-27
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