駐車場使用契約書
月極駐車場契約書、駐車場賃貸借契約書、駐車場利用契約書、車庫使用契約書、保管場所賃貸借契約書 とも呼ばれます。
駐車場使用契約書は、月極駐車場など、自動車を止めるための区画を貸す・借りる条件を書面にしたものです。民法601条の賃貸借にあたるのが通常で、賃料・契約期間・区画の特定・解約の条件などを定めます。アパートなどの部屋を借りる契約と違い、借地借家法の更新や正当事由の保護は原則として及びません。その分、契約書の記載が出発点になります。ただし貸主が事業者で借主が消費者の場合は消費者契約法による無効の枠がかかりますので、条項を一つずつ読み解くことが自分を守ることにつながります。
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どんなときに必要か
月極駐車場を貸すとき・借りるときに取り交わします。マンションの附属駐車場を居住者に貸す場合、空き地を近隣の方に貸す場合、社用車の車庫を借りる場合などが典型です。もう一つの大きな場面が、車庫証明(自動車保管場所証明書)の取得です。警察庁の案内では、他人の土地又は建物を保管場所として使用する場合の添付書類として、駐車場賃貸借契約書の写しを添付できるとされています。
書面にする必要はあるか
法定の書面要件はなく、証拠目的の書面です。民法522条2項は「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と定めており、駐車場の契約を口頭で結んでも成立します。ただし車庫証明を取る場面では、契約書の写しが保管場所の権原を疎明する書面として使われるため、実務上は書面を作っておく意味が大きくなります。
必ず入れる事項
貸主・借主の表示と駐車区画の特定
どの区画をだれに貸したのかが特定できないと、二重貸しや明渡しの場面で使用できる範囲を主張できません。車庫証明で提出する所在図・配置図の記載とも対応させる必要があります。
使用する自動車の登録番号と車種
保管場所の証明は自動車ごとに行われます。対象となる車両を明記しておくと、車を入れ替えたときにどの書面を作り直すのかがはっきりし、区画の又貸しの防止にもつながります。
賃料の額・支払期日・支払方法
期日を定めなくても、民法614条が「賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない」(収穫の季節があるものにつきただし書あり)と補充するため、区画がどちらにあたるかで月末払いにも年末払いにも振れます。想定どおりの月払いにするには明記が必要です。
契約期間と更新の取扱い
期間を書かないと民法617条1項が働き、各当事者はいつでも解約の申入れができ、同項1号により土地の賃貸借は解約の申入れの日から1年を経過して終了します。想定より長く拘束されるおそれがあります。
中途解約の予告期間と方法
民法617条1項は当事者の合意で異なる定めを置くことができる規定とされています。「1か月前までに書面で通知する」などと決めておかないと、やめたいのに賃料の支払が続くという主張を招きます。
保管責任を負うかどうかの明示
区画を使わせるだけなのか、車を預かって保管するのかで、盗難やいたずらが起きたときの責任の考え方が変わります。書いていないと、事故のときに双方の前提が食い違います。
修繕・維持管理の費用分担
民法606条1項は賃貸人に使用及び収益に必要な修繕をする義務を課しています。舗装・照明・ゲート・除雪などの分担を書き分けないと、壊れたときの費用負担で揉めます。
敷金(保証金)の額と返還条件
民法622条の2第1項は、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき、借主の債務額を控除した残額を返還しなければならないと定めています。名目や充当の順序を書くと精算が明確になります。
無効・効力が否定されやすい条項
古い雛形をそのまま使うと、次の点でつまずくことがあります。
「当社は一切の責任を負いません」型の全部免責条項。消費者契約法は事業者(法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人。2条2項)と消費者(同条1項)との契約に適用されます(同条3項)。同法8条1項1号は事業者の債務不履行による、3号は債務の履行に際してされた不法行為による損害賠償責任の全部を免除する条項を「無効とする」と定めています。貸主も借主も事業として契約するのでない個人どうしなら及びません。
「当社に重大な過失があっても賠償は月額賃料を限度とする」型の上限条項。貸主が事業者で借主が消費者の場合、消費者契約法8条1項2号・4号は、事業者・その代表者・その使用する者の故意又は重大な過失による責任の一部を免除する条項を無効としています。さらに同条3項は、軽い過失による一部免除であっても、重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない条項は無効と定めています。
借地借家法の保護が当然に及ぶと思い込むこと。同法1条は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権と、建物の賃貸借について特別の定めをする法律です。屋外の区画を駐車のために使わせる契約は通常どちらでもなく、26条の法定更新・28条の正当事由は及ばないとされています。更新・解約の条件は契約書の記載が基準となり、「更新には正当事由を要する」との合意も、法律上の保護ではなく契約上の約束です。ただし建物内の区画などは評価が変わりえます。
契約期間も解約の予告期間も書いていない雛形。民法617条1項は、期間を定めなかったときは各当事者がいつでも解約の申入れをすることができるとし、解約の申入れの日から各号に定める期間の経過によって終了するとしたうえ、同項1号は土地の賃貸借について一年と定めています。予告期間を決めていないと、やめたい時期と賃料の打ち切り時点をめぐって主張が食い違います。
遅延損害金を年30パーセントなどと定める条項。貸主が事業者で借主が消費者の場合、消費者契約法9条1項2号は、支払期日までに支払わないときの損害賠償額の予定・違約金について、日数に応じ年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超える部分を無効と定めています。同項1号は、解除に伴う違約金のうち「平均的な損害の額」を超える部分を無効としています。
車庫証明を取るためだけに、実際には使わせない区画で契約書を作ること。自動車の保管場所の確保等に関する法律17条2項1号は、自動車の保管場所に関する虚偽の書面を提出して同法4条1項の処分を受けたときは20万円以下の罰金に処すると定めています。契約書の体裁が整っていても、実体を伴わない書面の提出はこの罰則の対象になりえます。
作成の流れ
- 1
区画を貸すだけか、保管まで引き受けるかを決める
まず、区画を使わせるだけの契約なのか、車を預かって保管する契約なのかを決めます。区画を貸すだけなら民法601条の賃貸借として、賃料と引換えに使用及び収益をさせる関係になります。保管まで引き受けるなら、盗難や損傷が起きたときの責任の考え方が変わります。この前提が決まらないと、免責条項も保険の手当ても組み立てられません。
- 2
区画と対象車両を特定する
所在地、区画番号、区画の寸法、対象となる自動車の登録番号を書き出します。車庫証明を取る予定があるなら、自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則1条2項3号が、申請に係る場所とその周囲の建物・空地・道路を表示した配置図に、場所の平面の寸法と道路の幅員を明記すると定めています。契約書の記載と図面が食い違わないようにそろえておきます。
- 3
期間・賃料・解約の条件を詰める
契約期間、賃料の額と支払期日、更新の有無、中途解約の予告期間を決めます。期間を定めないと、民法617条1項1号により土地の賃貸借は解約の申入れの日から1年を経過して終了することになります。この規定は当事者の合意で異なる定めを置くことができる規定とされていますので、「1か月前までに書面で通知する」といった予告期間を明示しておくと、退去の時期と賃料の打ち切り時点がはっきりします。
- 4
責任と費用分担を条項で書き分ける
車両の盗難やいたずら、区画内での接触事故、舗装・照明・ゲートの修繕、除雪や清掃について、誰が何を負担するのかを分けて書きます。民法606条1項は、賃貸人が賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負い、ただし賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときはこの限りでないと定めています。これと違う分担にするなら、その旨を具体的に書く必要があります。
- 5
借主が個人なら消費者契約法の観点で読み直す
貸主が事業者で、借主が個人(事業として又は事業のために契約するのでない場合)なら、消費者契約法が適用されます。全部免責(8条1項1号・3号)、故意・重過失の一部免責(同項2号・4号)、適用範囲を明らかにしていない一部免責(8条3項)、過大な違約金や遅延損害金(9条1項)、一方的に不利な条項(10条)という観点で、雛形の条項を一つずつ読み直します。
- 6
署名・押印して各自1通ずつ保管する
記名押印のうえ、貸主・借主が各1通ずつ保管します。車庫証明を取る場合、警察庁の案内では、他人の土地又は建物を保管場所として使用するときの添付書類として駐車場賃貸借契約書の写しを添付できるとされていますので、写しを取りやすい形にしておくと手続がスムーズです。申請手数料は各都道府県の手数料条例により異なるため、申請先の警察署に確認します。
専門家に相談したほうがよい場面
駐車場では、区画内で車が盗まれた・傷つけられた、契約が終わったのに車が残されている、賃料の滞納が続いている、といった場面で判断を誤ると損害が広がります。特に、残置車両の撤去や滞納者への請求をご自身で進めようとする段階、免責条項や違約金条項の効力を相手方から争われている段階では、署名や実行の前に弁護士にご相談ください。当サイトは資格者を擁しておらず、契約書の作成代行や個別事案の法律判断は行いません。
よくある質問
- 駐車場の契約にも借地借家法は適用されますか。
- 借地借家法1条は、この法律が建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権と、建物の賃貸借について特別の定めをするものと規定しています。屋外の区画を自動車を止めるために使わせる契約は、通常はそのどちらにも当たらないため、26条の法定更新や28条の正当事由といった保護は及ばないとされています。ただし建物内の区画など、建物の賃貸借と評価されうる形態もあり、一律には決まりません。個別の判断は弁護士にご確認ください。
- 契約書がないと車庫証明は取れませんか。
- 警察庁の案内では、他人の土地又は建物を保管場所として使用する場合の添付書類として、駐車場賃貸借契約書の写し、その写しがない場合は駐車場の料金の領収書等、保管場所使用承諾証明書などのいずれかを添付するとされています。契約書は必須ではありませんが、権原を示す最も直接的な書面です。なお「保管場所使用承諾証明書」は警察庁が標準書式を示している書面で、法令の本文では「使用する権原を有することを疎明する書面」と定められています(自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則1条2項1号)。
- 契約期間を書かないとどうなりますか。
- 民法617条1項は、当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは各当事者がいつでも解約の申入れをすることができるとし、同項1号で土地の賃貸借は解約の申入れの日から1年を経過することによって終了すると定めています。これは当事者の合意で異なる定めを置くことができる規定とされていますので、実務では「1か月前までに書面で通知する」といった予告期間を定めるのが通例です。書いていないと、やめる時期と賃料の打ち切り時点をめぐって食い違いが起きます。
- 借主が賃料を滞納したら、車を勝手に移動できますか。
- 契約書に「無断で移動・処分できる」と書いてあっても、そのとおり実行できるとは限りません。貸主が事業者で借主が消費者の場合、消費者契約法10条は、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比べて消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって、民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とすると定めています。実際に滞納や車両の残置が起きたときの対応は事案ごとの判断になりますので、動く前に弁護士にご相談ください。
出典
- e-Gov法令検索「民法」(522条2項・601条・606条1項・614条・617条1項・622条の2)
- e-Gov法令検索「借地借家法」(1条・26条・28条)
- e-Gov法令検索「消費者契約法」(2条・8条・9条・10条)
- e-Gov法令検索「自動車の保管場所の確保等に関する法律」(4条・17条)
- e-Gov法令検索「自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則」(1条)
- 警察庁「自動車の保管場所証明申請」
- 消費者庁「消費者契約法」
最終確認日: 2026-08-07
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