督促状・催告書

督促状、催告書、支払催告書、最終通告書 とも呼ばれます。

督促状・催告書は、支払期日を過ぎた代金や貸金などについて、債権者が債務者に支払を求める旨を伝える書面です。両者に法律上の定義の違いはなく、実務で先に送る穏当なものを督促状、最終的なものを催告書と呼び分けているだけです。民法上はいずれも「催告」に当たり、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しません(民法150条1項)。時効が振り出しに戻るわけではないこと、簡易裁判所の裁判所書記官が発する「支払督促」(民事訴訟法382条・383条1項、民法147条1項2号)とは別の書面であることが、最大の注意点です。

督促状・催告書の要点。一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律判断ではありません。
書面の要否法定の書面要件はなく、証拠目的の書面です(民法522条2項)。
時効への効果催告があった時から6か月を経過するまで、時効は完成しません(民法150条1項)。
更新ではない時効が新たに進行を始めるのは、完成前の権利の承認(民法152条1項)や確定判決等(同法147条2項)です。完成後の承認は別の問題です。
再度の催告猶予されている間にした再度の催告に、完成猶予の効力はありません(民法150条2項)。
支払督促との違い支払督促は裁判所書記官が発する手続で(民事訴訟法382条)、督促状・催告書とは別のものです。

最終確認日: 一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律判断ではありません。

どんなときに必要か

支払期日を過ぎても入金がないとき、電話やメールに応答がないとき、消滅時効の完成が近づいているときに使われます。債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法166条1項)。期限が迫っている場合、催告を到達させておけば6か月の猶予が生まれ、その間に裁判上の請求などの手続を準備できます(民法150条1項・147条1項)。

書面にする必要はあるか

法定の書面要件はなく、証拠目的の書面です。民法は契約について「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と定めており(522条2項)、催告の方式を定めた規定も置いていません。もっとも、時効の完成猶予を主張するには、通知が相手方に到達したこと(民法97条1項)と、いつ何を伝えたかを立証する必要があります。そのため実務では、内容証明郵便と配達証明を組み合わせて記録を残す方法がとられています。

必ず入れる事項

督促状・催告書は、どの債権についていくらの支払を、いつまでに求めるのかを特定する書面です。完成猶予の6か月は催告があった時から数え(民法150条1項)、通知は相手方に到達した時から効力を生じるため(民法97条1項)、到達を記録できる送り方まで含めて組み立てます。

  • 債権者・債務者の氏名・住所と作成日

    誰から誰への通知かを特定できなければ、催告としての効力を主張しにくくなります。作成日は、いつ催告をしたかを示す資料になります。もっとも完成猶予の6か月は「催告があった時」から数え(民法150条1項)、通知は相手方に到達した時から効力を生じるとされていますので(民法97条1項)、期限管理は到達日を基準に行います。

  • 債権の特定(契約日・取引内容・当初の金額)

    どの債権についての催告かが特定できなければ、その債権について時効の完成猶予を主張しにくくなります。契約日・取引内容・請求書番号など、他の債権と区別できる情報を書きます。

  • 未払残高の内訳(元本・遅延損害金)

    元本と遅延損害金を分けないと、いくら払えば完済かが伝わりません。金銭債務の損害賠償額は遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によりますが、約定利率がこれを超えるときは約定利率によります(民法419条1項)。

  • 支払期限と支払方法(振込先)

    債務の履行について確定期限があるときはその期限の到来した時から(民法412条1項)、期限を定めなかったときは履行の請求を受けた時から遅滞の責任が生じます(同条3項)。もとの支払期日と、本状で新たに定める支払期限・入金先を書き分けておきます。

  • 期限までに支払がない場合の対応方針

    裁判上の請求や支払督促といった次の手続(民法147条1項1号・2号)を検討している事実を伝えます。予定のない手続を告げたり、威圧的な表現を用いたりしないことが前提です。

  • 送付方法の記録(内容証明・配達証明)

    内容証明は文書の内容を証明する取扱いで(郵便法48条1項)、配達し又は交付した事実の証明は配達証明という別の取扱いです(同法47条)。片方だけでは、内容と到達の双方を示すことができません。

  • 行き違いの場合のお詫びの一文

    発送と入金が行き違うことは珍しくありません。すでにお支払済みの場合は本状を破棄いただきたい旨を添えておくと、事実と異なる督促をしたという指摘を受けにくくなります。

無効・効力が否定されやすい条項

最も多い誤りは、催告で時効が更新される(振り出しに戻る)という説明です。民法150条1項の効果は完成猶予にとどまり、同条2項により猶予期間中の再度の催告に効力はありません。到達を記録しない送り方、威迫的な文言、差押えができると読める記述も避ける部分です。

  • 「催告すれば時効が更新される(振り出しに戻る)」と説明している雛形。民法150条1項は「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」と定めるだけで、効果は完成猶予にとどまります。時効が新たに進行を始めるのは、時効の完成前に権利の承認があったとき(152条1項)や、確定判決等によって権利が確定したとき(147条2項)です。

  • 催告を繰り返せば猶予を延長できるとしている運用。民法150条2項は「催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない」と定めています。6か月以内に、裁判上の請求・支払督促・和解や調停・倒産手続への参加(147条1項各号)や、仮差押え・仮処分(149条)といった措置を執らなければ、催告による猶予の効果は失われます。

  • 普通郵便やメールだけで送り、控えも記録も残さない運用。内容証明の取扱いは文書の内容を証明するものにとどまり(郵便法48条1項)、配達し又は交付した事実の証明は配達証明という別の取扱いです(同法47条)。到達を立証できないと、意思表示の効力が生じた時(民法97条1項)を示せず、完成猶予の主張が難しくなります。

  • 威迫的な文言や、勤務先・家族への連絡をほのめかす文言。貸金業法21条1項は、貸金業を営む者とその委託を受けた者に対し、取立てに当たって「人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」をしてはならないと定めています。一般の債権者に直接適用される規定ではありませんが、同項各号は勤務先への電話や第三者への借入事実の告知を列挙しており、記載は事実と請求の範囲にとどめるのが無難です。

  • 「内容証明を送れば差押えができる」と読める記述。督促状・催告書は支払を求める通知にすぎず、差押えの効力はありません。強制執行は、確定判決・仮執行の宣言を付した支払督促・執行証書などの債務名義により行うとされ(民事執行法22条各号)、督促状・催告書はそのいずれにも当たりません。支払督促は、金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、債権者の申立てにより裁判所書記官が発する手続とされます(民事訴訟法382条)。

作成の流れ

流れは、債権の内容と時効の状況の確認、書面の組み立て、送付方法の選択、到達後6か月の期限管理、相手の反応に応じた次の判断の5段階です。6か月以内に裁判上の請求や支払督促などを執らなければ、催告による猶予の効果は失われます(民法147条1項各号)。

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    債権の内容と時効の状況を確認する

    どの契約に基づくいくらの債権かを、契約書・請求書・入金記録で確認します。債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法166条1項)。施行日(2020年4月1日)前に生じた債権の消滅時効の期間についてはなお従前の例によるとされ(民法の一部を改正する法律附則10条4項)、同条1項の括弧書き(「以下同じ」)により、施行日以後に生じた債権でも、その原因である法律行為が施行日前にされたものはこれに含まれます。

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    書面の内容を組み立てる

    当事者、債権の特定、未払残高の内訳、支払期限と振込先、期限を過ぎた場合の対応方針を、事実に沿って記載します。確定期限のある債務は期限の到来した時から(民法412条1項)、期限を定めなかった債務は履行の請求を受けた時から遅滞の責任が生じるため(同条3項)、もとの支払期日といつ請求したかの双方が分かる形にしておきます。行き違いの場合のお詫びの一文を添えておくと、すでに支払済みの相手との無用なトラブルを避けやすくなります。

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    送付方法を選ぶ

    内容証明の取扱いでは、その郵便物の内容である文書の内容が証明されます(郵便法48条1項)。郵便認証司が同法58条1号の認証をしたときは、その規定に従って記載した日付が確定日付になります(民法施行法5条1項6号)。他方、配達し又は交付した事実の証明は配達証明という別の取扱いです(郵便法47条)。内容と到達の双方を記録として残したい場合は、両方を利用するのが一般的です。

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    到達後6か月の期限を管理する

    催告の時から6か月を経過するまで時効は完成せず(民法150条1項)、再度の催告で猶予は延びません(同条2項)。6か月以内に、裁判上の請求、支払督促、民事訴訟法275条1項の和解または民事調停法・家事事件手続法による調停、破産・再生・更生手続への参加のいずれかを執るのが基本です(民法147条1項各号)。仮差押え・仮処分にも、その事由の終了時から6か月の完成猶予の効力があります(民法149条)。催告による猶予期間中にした「協議を行う旨の合意」に完成猶予の効力はなく(民法151条3項)、合意書だけでは期限は延びません。

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    相手の反応に応じて次の進め方を決める

    相手が支払義務を認めた場合、時効の完成前であれば、権利の承認があったときは時効はその時から新たにその進行を始めます(民法152条1項)。時効期間が経過した後にされた承認の効果は別の問題として扱われるため、当サイトでは断定しません。分割払いを取り決めるなら、債務承認弁済契約書のような書面の検討対象になります。逆に金額や債権の存否そのものを争われた場合は、紛争が顕在化した段階です。ここから先は書面の表現ではなく、どの手続を選ぶかという問題になります。

専門家に相談したほうがよい場面

債務の存否や金額を争われた、相手に弁護士が就いた、破産・再生の検討を告げられた、時効の満了が目前で6か月では足りない——書面より手続選択の問題です。受け取った側も、長く支払っていない債務について支払や分割を申し出ると権利の承認(民法152条1項)にあたりうるため、応答前に弁護士へご相談ください。報酬を得て他人の債権の交渉や代理を業とすることは、弁護士又は弁護士法人でない者にはできません(弁護士法72条。ただし、同法又は他の法律に別段の定めがある場合を除きます)。相談先は弁護士のほか、裁判所法33条1項1号の額(140万円)以下の事件では司法書士法3条2項の要件を満たす認定司法書士も選択肢です。

よくある質問

督促状と催告書はどう違いますか。
民法にはどちらの語も定義されておらず、法的な効果に違いはありません。実務上、期日を過ぎた直後に送る穏当な通知を督促状、支払がないまま一定期間が過ぎた後の最終的な通知を催告書と呼び分けていることが多いだけです。いずれも民法150条にいう「催告」に当たり、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しません。名称よりも、誰のどの債権について、いくらを、いつまでに支払うよう求めているかが特定できているかどうかが重要とされています。
催告書を送れば時効は止まりますか。
「完成しない」状態が6か月続くだけで、時効が振り出しに戻るわけではありません。民法150条1項は「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」と定めています。この6か月の間に、裁判上の請求や支払督促など民法147条1項各号の措置や、仮差押え・仮処分(149条)を執らなければ、催告による猶予の効果は失われます。また、猶予されている間に再度催告をしても、民法150条2項により重ねて猶予される効力はありません。時効が新たに進行を始めるのは、権利の承認があったとき(152条1項)などです。
内容証明郵便で送らなければいけませんか。
内容証明で送ることを義務付ける規定はありません。ただし内容証明の取扱いでは、その郵便物の内容である文書の内容が証明され(郵便法48条1項)、郵便認証司が同法58条1号の認証をしたときはその日付が確定日付になります(民法施行法5条1項6号)。一方、配達し又は交付した事実の証明は配達証明という別の取扱いです(郵便法47条)。意思表示は相手方に到達した時からその効力を生ずるため(民法97条1項)、内容と到達の両方を記録に残せる組み合わせが選ばれています。
回収を第三者に代行してもらうことはできますか。
弁護士法72条は弁護士又は弁護士法人でない者が報酬を得る目的で一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることを禁じます(同法又は他の法律に別段の定めがある場合を除く)。違反は2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(77条3号)。認定司法書士は、裁判所法33条1項1号の額(140万円)以下の事件で、簡裁の手続の代理(司法書士法3条1項6号。ただし書で再審・強制執行に関する事項〈ホの少額訴訟債権執行を除く〉は不可、上訴の提起も自ら代理人として関与する事件の判決等に係るものを除き不可)と、簡裁の訴訟手続の対象となる民事紛争の裁判外の和解の代理(同項7号)を行えます。

出典

最終確認日: 2026-08-07

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