金銭消費貸借契約書

金銭借用証書、借用書、金消契約書、借入契約書、金銭貸借契約書 とも呼ばれます。

金銭消費貸借契約書は、お金の貸し借りについて、元本・返済期限・利息・遅延損害金などの条件を書き残す契約書です。民法587条の消費貸借はお金を実際に受け取ることで効力が生じますが、書面で作った場合は587条の2第1項により、引き渡す約束をした段階で効力が生じます。利息や遅延損害金には利息制限法の上限があり、契約金額に応じた収入印紙も必要になります(契約金額1万円未満は非課税です)。

金銭消費貸借契約書の要点。一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律判断ではありません。
書面の要否法定の書面要件はありませんが、書面にすると引き渡す約束の時点で効力が生じます(民法587条の2第1項)。
利息の上限元本10万円未満は年2割、10万円以上100万円未満は年1割8分、100万円以上は年1割5分(利息制限法1条)。
遅延損害金利息制限法4条1項により1条に規定する率の1.46倍を超える部分は無効。営業的金銭消費貸借では7条1項により年2割超が無効です。
利息の特約民法589条1項により、特約がなければ貸主は利息を請求できません。
収入印紙消費貸借に関する契約書は印紙税法別表第一の第1号文書の3にあたり、契約金額1万円未満は非課税です。

最終確認日: 一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律判断ではありません。

どんなときに必要か

個人間の貸借、会社と役員の貸付け・借入れ、取引先への運転資金の融通などで作成します。親族間の資金援助では、贈与でなく貸付けであることを示す資料になります。売掛金を分割払いに切り替える場合は、民法588条の準消費貸借として同形式を使います。会社が取締役に貸し付ける場合は会社法356条1項2号の利益相反取引に当たり、同項により株主総会、取締役会設置会社では365条1項により取締役会で、重要な事実を開示し承認を受ける必要があるとされます。

書面にする必要はあるか

法定の書面要件はありませんが、書面かどうかで成立の仕組みが変わります。民法522条2項は、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立に書面の作成その他の方式は要しないと定めます。587条は金銭の受取りで効力が生じ、2020年4月1日施行の改正で新設された587条の2第1項により、書面でする消費貸借は引渡しを約した時点で効力が生じます。2項は借主が受取りまで解除でき、貸主は解除による損害の賠償を請求できるとし、3項は受取り前に一方が破産手続開始の決定を受ければ効力を失います。4項は電磁的記録も書面とみなします。

必ず入れる事項

金銭消費貸借契約書は、元本、交付、返済、利息、遅延損害金、期限の利益、保証、印紙の8点で組み立てます。利息制限法1条の上限が元本の額で3段階に分かれるため、元本が定まらないと上限利率も印紙税の記載金額も決まりません。

  • 元本の額(貸し付ける金額)

    利息制限法1条は、元本が10万円未満・10万円以上100万円未満・100万円以上で上限利率を分けています。元本が定まらないと上限利率も定まらず、印紙税の記載金額も決まりません。

  • 金銭の交付日と交付方法

    民法587条は金銭を受け取ることで効力が生じると定めています。書面で契約した場合でも実際に渡した事実は返還を求める前提になるため、振込など記録の残る方法を書いておくと後の立証が容易になります。

  • 返還の時期と返済方法(分割なら各回の額と期日)

    民法591条1項は、返還の時期を定めなかったときは貸主が相当の期間を定めて催告できると定めています。期限を書かないと、いつから遅れているのかがはっきりしません。同条2項は借主は定めの有無にかかわらずいつでも返還できるとし、3項は期限前の返還で貸主が損害を受けたときは賠償を請求できるとしています。

  • 利息を付けるかどうかと、その利率

    民法589条1項は「貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない」と定めています。書き落とすと無利息の貸付けとして扱われます(商人間には商法513条1項の例外があります)。

  • 返済が遅れたときの遅延損害金

    民法419条1項は、定めがなければ遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によるとし、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によるとしています。法定利率は民法404条で3年ごとに変動する仕組みです。

  • 期限の利益を失う場合の定め

    民法137条が定めるのは、破産手続開始の決定・担保の滅失等・担保を供しないことの3つだけです。分割払いを1回滞納したら残額を一括請求するといった扱いは、契約書に書かなければ生じません。

  • 保証人を立てる場合の保証条項

    民法446条2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と定めています(3項により電磁的記録も書面とみなされます)。事業のために負担した貸金等債務の保証では、465条の6第1項により公正証書での保証意思の表示も必要です(465条の6第3項・465条の9の適用除外があります)。

  • 契約金額に応じた収入印紙の貼付欄

    印紙税法8条1項は、9条から12条までの特例を受ける場合を除き、課税文書の作成者は作成の時までに相当印紙を貼り付けて納付しなければならないと定めています。消費貸借に関する契約書は別表第一の第1号文書の3に当たり、契約金額1万円未満は非課税です。

無効・効力が否定されやすい条項

無効になりやすいのは利率まわりです。利息制限法1条の上限を超える利息と、同法4条1項により1条に規定する率の1.46倍を超える遅延損害金は、超過部分の効力が認められません。債権者が業として行う営業的金銭消費貸借では、同法7条1項により年2割を超える部分が無効です。出資法5条の刑事罰の水準とは別の線であることに注意が要ります。

  • 利息制限法1条の上限を超える利率を定めた条項。同条は、元本10万円未満は年2割、10万円以上100万円未満は年1割8分、100万円以上は年1割5分を超えるときは「その超過部分について、無効とする」と定めています。当事者が合意していても、超過部分の効力は認められません。

  • 「出資法の上限内だから大丈夫」という前提で作られた雛形。出資法5条1項の刑事罰は年109.5パーセント(2月29日を含む1年については年109.8パーセント)を超える割合の利息の契約が対象で、業として金銭の貸付けを行う場合は5条2項で年20パーセント超が対象です。これは刑事の線であり、民事上の効力を定める利息制限法1条の上限とは水準が別です。

  • 利息の定めを書いていない契約書。民法589条1項により、特約がなければ貸主は利息を請求できません。商人間の金銭消費貸借には商法513条1項の例外がありますが、商事法定利率を定めていた旧商法514条は現在「削除」されているため、商事法定利率を根拠に利率を書くことはできません。

  • 遅延損害金を高く設定した条項。利息制限法4条1項は、賠償額の予定が1条に規定する率の1.46倍を超えるときは「その超過部分について、無効とする」と定め、2項で違約金も賠償額の予定とみなします。債権者が業として行う営業的金銭消費貸借では、7条1項により年2割を超える部分が無効です。

  • 「期限の利益を失う」とだけ書いた条項。民法137条が定める喪失事由は破産手続開始の決定・担保の滅失等・担保を供する義務の不履行の3つに限られるため、どの事由で失うのか、通知や請求なしに当然に失うのか、請求してはじめて失うのかを書き分けていないと、残額を一括請求する場面で機能しないことがあります。

  • 連帯保証人の欄はあるのに、保証人本人の署名も押印もない契約書。民法446条2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と定めています。事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約は、465条の6第1項により、締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証意思を表示していなければ、その効力を生じません(保証人が法人=465条の6第3項、主たる債務者が法人である場合のその取締役等=465条の9第1号は適用除外)。

作成の流れ

流れは、金額と返済条件の決定、利息と遅延損害金の上限確認、期限の利益喪失と保証の整理、契約書の作成と署名押印、収入印紙の貼付、金銭の交付と記録の6段階です。民法587条は金銭を受け取ることで効力が生じると定めているため、交付の記録まで残して完了します。

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    貸す金額・交付方法・返済条件を決める

    元本の額、いつどのように渡すか、いつまでにどう返すかを先に固めます。分割払いにするなら各回の金額と支払期日、振込先まで決めておきます。民法591条1項は、返還の時期を定めなかったときは相当の期間を定めて催告することができると定めています。借主は同条2項によりいつでも期限前に返還できますが、それで貸主が損害を受けたときは3項により賠償を請求できるとされています。

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    利息と遅延損害金が上限内かを確認する

    利息制限法1条の上限は元本の額で3段階に分かれます。同法3条は、礼金・割引金・手数料・調査料など名義を問わず債権者が受ける元本以外の金銭を利息とみなします(契約の締結及び債務の弁済の費用は除きます)。遅延損害金は4条1項により1条に規定する率の1.46倍を超える部分が無効となり、業として行う営業的金銭消費貸借では7条1項により年2割が上限です。

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    期限の利益喪失と保証の要否を整理する

    残額を一括請求するには、期限の利益を失う事由を契約書に書きます(民法137条が定めるのは3つの場合だけです)。保証人を立てるなら446条2項により保証契約は書面でしなければ効力を生じず、事業のために負担した貸金等債務の保証では465条の6第1項の公正証書も必要です。同条3項は保証人が法人である場合を、465条の9は主たる債務者が法人であるときの取締役等(1号)、議決権の過半数を有する者等(2号)、主たる債務者(法人を除く)と共同して事業を行う者やその事業に現に従事している配偶者(3号)を適用除外としています。

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    契約書を作成し、双方が署名押印する

    貸主と借主がそれぞれ保管できるよう通常2通作成し、双方が署名押印します。書面にすると民法587条の2第1項の「書面でする消費貸借」となり、引き渡す約束の時点で効力が生じます。保証人を立てるなら保証人本人にも署名押印してもらいます。なお電磁的記録で契約する場合の印紙税の取扱いは本ガイドでは扱っていませんので、所轄の税務署にご確認ください。

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    契約金額に応じた収入印紙を貼る

    消費貸借に関する契約書は印紙税法別表第一の第1号文書の3に当たり、税率は1通につき、10万円以下200円、10万円超50万円以下400円、50万円超100万円以下1,000円、100万円超500万円以下2,000円、500万円超1,000万円以下1万円、1,000万円超5,000万円以下2万円、5,000万円超1億円以下6万円、1億円超5億円以下10万円、5億円超10億円以下20万円、10億円超50億円以下40万円、50億円超60万円、契約金額の記載のないものは200円です。2通ならそれぞれに貼って消印します。

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    実際に金銭を交付し、記録を残す

    契約書を交わしたら、約束した方法で金銭を渡します。民法587条は受け取ることで効力が生じると定めており、書面による契約であっても交付の事実は返還を求める前提になります。振込明細や受領書を残しておくと、後から渡した渡していないという争いになりにくくなります。返済のたびの記録も同じように残します。

専門家に相談したほうがよい場面

返済が滞る、支払を争われる——書面より手続選択の問題です。ご自身の債権をご自身の名義で請求することは他人の法律事務ではなく弁護士法72条の対象外ですが、報酬を得る目的で一般の法律事件を「業とする」ことは弁護士・弁護士法人でない者にはできません(同条ただし書の別段の定めを除く)。その例が認定司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務で、裁判所法33条1項1号の140万円以下の事件を司法書士法3条2項の要件を満たす司法書士が扱えます。事業のための借入れに個人保証を付ける場合は民法465条の6の公正証書が要ることがあり(465条の9は法人の取締役等を適用除外)、抵当権設定などとあわせ契約前に弁護士・司法書士・公証役場へ。親族間の無利息の税務は税務署・税理士へ。

よくある質問

借用書(金銭借用証書)と金銭消費貸借契約書は違うものですか。
印紙税の扱いは同じで、国税庁の一覧表でも第1号文書の「消費貸借に関する契約書」の例として「金銭借用証書、金銭消費貸借契約書など」が並べて挙げられています。違うのは形式です。借用書は借主だけが作成して差し入れる形が多く、貸す側の約束は書かれません。民法587条の2第1項の「書面でする消費貸借」として貸主の引渡しの約束も残したい場合は、双方が署名する契約書の形が使われます。
収入印紙を貼らないと契約は無効になりますか。
印紙税法20条1項は「当該納付しなかつた印紙税の額とその二倍に相当する金額との合計額に相当する過怠税を徴収する」と定め、2項は、調査により過怠税の決定があるべきことを予知せずに納付していない旨の申出をしたときは納付しなかった印紙税の額と10パーセント相当額との合計額とし、3項は、印紙を貼っても消さなかったときは消されていない印紙の額面金額に相当する過怠税を徴収するとしています。いずれも契約の効力については定めがなく、民法522条2項も、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しないとしています。ただし納付義務は残るため、貼付と消印は必要です。
利息を書き忘れました。あとから請求できますか。
民法589条1項は「貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない」と定めています。特約があるときでも、2項により請求できるのは借主が金銭を受け取った日以後の利息です。商人どうしの金銭消費貸借については商法513条1項が貸主は法定利息を請求することができると定めていますが、商事法定利率を定めていた旧商法514条は現在「削除」されています。
もともとある売掛金を分割払いに切り替える場合も、この契約書ですか。
民法588条は「金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす」と定めています。これを準消費貸借といいます。既存の債務を消費貸借に切り替える設計をするならこの条文が根拠になり、実務では債務承認弁済契約書の形をとることもあります。どちらの形式を使うかは元の債務の内容によって変わります。

出典

最終確認日: 2026-08-07

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